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「クラブに知られずに進めると決意した」トーマス・パーティー、アーセナル電撃移籍の舞台裏。

週末に入ると、フセム・アワールが残留を宣言し、グエンドゥジを獲りたがっているといわれていたマルセイユもトーンダウン。トーマス・パーティーは土曜日のビジャレアル戦でフル出場と通常運転で、移籍の兆候はありませんでした。レヴァークーゼン行きが噂されていたコラシナツにも続報はなし。日曜日に行われたプレミアリーグ4節のシェフィールド・ユナイテッド戦が終わるまでは、アーセナルはデッドラインデーを静かに過ごそうとしているのかもしれないと思っていました。

その日の夜から「BBC」の「Transfer deadline day LIVE」が、残り24時間を切ったトランスファーマーケットの動向を追いかけ始めました。早い時間から、「アーセナルが、トーマス・パーティーを獲得するかもしれない」という噂が飛び交っています。ジェイドン・サンチョの名前が前後にあるタイムラインは、ネタがないからゴシップを楽しもうという雰囲気が漂っていたのですが、締め切りまでのカウントダウンの数字が減るにつれ、「獲得に近づいている」「ほぼ確実」という声が増えてきました。

17時を過ぎ、グエンドゥジがヘルタ・ベルリンにローン移籍決定。「BBC」の記者やジャーナリストは、カバーニとトーマス・パーティーに集中しています。そして23時、締め切りを告げるバナーが掲載された直後に、2つの「DONE DEAL」を告げる速報が舞い込んできました。トーマス・パーティーはアーセナルに完全移籍、ルーカス・トレイラはアトレティコ・マドリードにローン移籍。この時は、2つの話がリンクしているかのように伝えられており、「アトレティコ・マドリードはディールに一切関与していない」というレポートが配信されたのは、しばらく経ってからでした。

Arsenal pay Thomas Partey’s buyout clause at LaLiga headquarters」。アトレティコ・マドリードの公式発表は異例でした。「月曜日の23時28分、ラ・リーガはアトレティコ・デ・マドリードに対して、スポーツ・アソシエーション・ヘッドクオーターを訪れたアーセナルの代理人がトーマス・パーティーの契約解除金を支払ったと通告しました。選手は、2023年6月30日まで結んでいた契約を一方的に解消したことになります」。セントラルMFとともに9年を過ごしたクラブと、2日前のゲームで中盤の底を任せたシメオネ監督は、アーセナルでも本人でもなく、ラ・リーガから戦力を失ったことを聞かされたようです。「ようこそ、トレイラ」と書かれた巨大なバナーをトップページに掲げたクラブの事務的な報告の行間から、怒りと悔しさが滲み出ているように感じられました。

Why Thomas Partey’s move from Atletico Madrid got messy(トーマス・パーティーのアトレティコ・マドリードからの移籍は、なぜとっ散らかってしまったのか)」。スペインサッカーに精通するジャーナリストのギレム・バラクさんが、今回の電撃移籍の舞台裏について「BBC」に寄稿しています。記事によると、アンカーを出したくなかったアトレティコ・マドリードが交渉のテーブルを嫌ったため、アーセナルはルーカス・トレイラのローン移籍に絞って話し合いを続けていたそうです。

一方で、スペインのクラブとガーナ代表の関係には亀裂が入っていたとのこと。チームで最もサラリーが安かった選手は、扱い方がひどいと立腹しており、パンデミックの前に提示された年俸162万ポンド(約2億2000万円)から315万ポンド(約4億3000万円)への増額オファーを蹴っています。アーセナルはそれを知っていました。だから諦めずに、本人と交渉を続けたのです。ジャーナリストは、「出ていってもオマージュは続かないとアドバイスされたパーティーは、すべてをクラブに知られずに進めると決意し、メディカルチェックの手配も自分で行った」と伝えています。

アトレティコ・マドリードが激怒した相手は、ウルグアイ代表を貸し出してくれたプレミアリーグのクラブではなく、何もいわずに去っていった生え抜きの選手のほうです。ディエゴ・シメオネも無念でしょう。さまざまなアドバイスを送り続け、ラ・リーガで屈指のセントラルMFに育て上げた主力が「クラブに留まるつもり」といっていたのは、謀反のような移籍を悟らせないためだったと知ったのですから。

かくしてトーマス・パーティーは、次のゲームをプレミアリーグで迎えることになりました。選手のなかには感謝と憎しみが、クラブにはしっかり見送りたかったという思いと背を向けられたことに対する怒りが共存しているのでしょう。どちらが正しいとも、こうすればよかったともいえません。今、ここに残せるのは、濃密な時間が終わりを告げ、それぞれの新たなステージが始まったという事実だけです。


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“「クラブに知られずに進めると決意した」トーマス・パーティー、アーセナル電撃移籍の舞台裏。” への3件のフィードバック

  1. グナです より:

    思えばオーバメヤンもエジルも、元のクラブとは険悪な関係になってからの移籍でした。
    特にオーバメヤンはドルトムントへの批判も積極的にしていましたし「トラブルメイカーにはアーセナルに来て欲しくないなぁ」と思っていたのも本音です。
    今ではそんな空気を全く感じさせない我らがキャプテンですが、クラブと選手のお互いが幸せを思っての移籍というのは簡単ではないんだなと再度確認するパーティーの移籍劇場でした。

  2. やまりく より:

    TwitterでAFCBellさんがずっとパーティはアーセナルに行くと言い張っておりましたが、アワールにシフトしてからはメディアからの報道もたち消えていたので完全になくなった話だと思っていました。
    最終日に決まったことを考えると個人合意は取れていたのですね。
    パーティの獲得はほぼ確実な状況を考えるとアワールとのW取りは本気で狙っていたのでしょうか?

    とにかくアーセナルらしからぬ立ち回りに驚きました。

  3. ガナザウルス より:

    salarysport.comによると昨季のパーティの年俸は250万ポンド。
    同じ生え抜きMFのコケが1370万ポンド、20歳のジョアン・フェリックスが800万ポンド。
    これではクラブにコミットメントを求められても難しいでしょう。
    この移籍劇に激怒していると言われるシメオネ監督は世界最高給の2000万ポンドです。

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