偏愛的プレミアリーグ見聞録

「これまでのキャリアのなかで、今ほど難しい時期を知らない。フランス代表にはフレッシュな空気がある。ここに来られて、みんなと会えたのはハッピーだ。クラブでは同じようにはいかない」「僕らはグループになる。魔法のようだね。みんながここに来られるのを喜んでおり、それが違いを生んでいる」

開幕戦で2アシストと幸先いいスタートを切った2019-20シーズンは、9月に痛めた足首がなかなか治らず、パンデミックによる中断の前まででプレミアリーグ22試合をロスト。6月の再開後に1ゴール2アシストと、かろうじて勝ち点ゲットに貢献した証を残したポール・ポグバにとって、今季は勝負の年です。ラシュフォード、マルシアル、グリーンウッドの3トップを前方に捉え、ブルーノ・フェルナンデス、マティッチと中盤で連携を取る布陣は、最後のプレミアリーグ9試合で6勝3分と手応え充分。ポルトガルからやってきたプレーメイカーとのホットラインが機能すれば、首位を窺えるポジションで戦えるはずでした。

プレミアリーグ開幕節のクリスタル・パレス戦は、1-3でまさかのホーム敗戦スタート。コロナウイルスに感染し、1週間前にトレーニングに復帰したばかりで何もできなかったポグバは、62分にドニー・ファン・デ・ベークに後を譲りました。今季初のフル出場となったトッテナム戦も、周囲を活かすプレイが見られず1-6で惨敗。スールシャール監督は、ニューカッスル戦のスタメンからポグバを外すという荒療治を試み、アウェイゲームを1-4でものにしました。

パリ・サンジェルマンとのCL初戦もベンチスタートでしたが、87分にラシュフォードの決勝ゴールをアシスト。ようやく本領を発揮できる状態に戻ったかと思いきや、その後も途中出場が多く、公式戦47試合16ゴール11アシストというスタッツを残した2018-19シーズンとはほど遠いパフォーマンスを繰り返しています。プレミアリーグ7試合出場で、ゴールもアシストもビッグチャンスクリエイトもゼロ。シュートは4本、クロスは3本しかなく、スルーパスは1本もありません。

不振が続くポグバについて、マンチェスター・ユナイテッドのOBたちは、コンディション不良よりも集中力の欠如が気になるようです。「代理人からの圧力と、退団に関するノイズ。集中力を失い、コミットメントも欠如している」と指摘したのは、これまでのポグバについては批判的ではなかったと前置きしたガリー・ネビル。絶好調の時はワールドクラスと評するポール・インスも、「彼と一緒にプレイするなら、こういいたい。ピッチに立ってプレーに専念しろ。君がすべきパフォーマンスができるなら、レアル・マドリードに移籍する話でも何でもしゃべればいい。今の君はマンチェスター・ユナイテッドのレベルに達していない、とね」とコメントしています。

ユーヴェでは素晴らしかったのに、マンチェスターでは今ひとつという印象があるポグバですが、セリエAとプレミアリーグにおけるスタッツは酷似しています。ユーヴェではセリエA124試合28ゴール28アシスト、イエロー19枚にレッド1枚で出場時間は9931分。プレミアリーグでは118試合25ゴール27アシスト、出場時間は9416分で、カードの枚数はイタリア時代と全く同じです。

誰もがポテンシャルの高さを称賛し、天才と表現するのですが、「あの年はポグバのシーズンだった」といわれたことは1度もありません。一貫性のなさを課題とされているワールドクラスは、出遅れたシーズンが終わる前に最高の自分を取り戻すことができるでしょうか。首位レスターの背中が見えている今、エンジンがかかれば充分間に合います。（ポール・ポグバ　写真著作者/Светлана Бекетова）