偏愛的プレミアリーグ見聞録

「グラニト・ジャカは愚かなことに、あらゆる教訓を忘れてトレント・アレクサンダー＝アーノルドとまったく必要のない一触即発の状態に陥った。これはリヴァプールの選手たちを激怒させ、同時にアンフィールドの観衆のごちそうとなる熱狂を解き放ってしまった」（「BBC」フィル・マクナルティ）

「ジャカがアレクサンダー＝アーノルドに体をぶつけ、挑発する必要はなかった。しかし彼はやらかしてしまい、リヴァプールの選手たちを怒らせた。決定的だったのは、ホームのファンが激昂したことだ」（「テレグラフ」ジェイソン・バート）

「何をばかげたことをしているんだ？ジャカ！」（「スカイスポーツ」ジェイミー・キャラガー）

現地の記者とジャーナリストが、ゲームの流れを変えるターニングポイントだったと指摘しているのは、40分のジャカとアーノルドのバトルです。右サイドでジャカにチャージしたのはコナテ。34番の転倒に笛は鳴らず、CBは後ろにいたアーノルドに預けました。

血相を変えて突進してきたジャカを見たアーノルドは、アリソンにバックパス。アフターで肘をぶつけられたSBにしてみれば、「俺はコナテじゃねーし！」とツッコミたいところです。後ろから突き飛ばされたジャカがSBに詰め寄ると、アリソンとジェズスがダッシュで現場に直行し、頭に血が上ったMFをなだめました。

プレミアリーグをよく知るライターや専門家は、1分にも満たない小競り合いが終わった直後に、異変に気づいたようです。「眠れるアンフィールドを覚醒させてしまった！」。モー・サラーのゴールは、当事者2人にイエローカードが出された40秒後でした。

キックオフからわずか8分、中央から抜け出したマルティネッリが左隅に決めて0-1、28分にはマルティネッリの絶品クロスをジェズスが頭で合わせて0-2。絶好調だったアーセナルは、アンフィールドに淀んだ空気が流れているうちに、3点めを決めるべきでした。

4年前、メッシがいたバルサに対する3点のビハインドをひっくり返したアンフィールドも、不振に陥った今のチームが同じギャップを抱えたらバンザイしていたでしょう。ハーフタイムの後、情熱的なサポーターたちに煽られまくったアウェイチームは、リードを守れず敗戦寸前に追い込まれました。

前日のサウサンプトンVSマンチェスター・シティは、当然のように1-4でアウェイチームが圧勝。カラバオカップでペップ相手に2-0で完勝しているプレミアリーグ最下位チームは、前半終了間際の失点でテンションを落としてしまいました。

デブライネが左から上げたクロスを頭で押し込んだのは、やっぱりハーランド。58分には、デブライネが左に出した美しいパスに走り込んだグリーリッシュが、GKにセーブされた後のこぼれ球をプッシュしました。3点めは68分、グリーリッシュの浮き球がゴール右に上がり、フリーのハーランドがオーバーヘッド。ドイツから来たモンスターは、初年度から30発の大台に乗せました。

セク・マーラのゴールで1-3となった後、締めのゴールは75分。フリアン・アルバレスとのワンツーで中央からボックスに侵入したデブライネが倒され、PKをもらいました。フリアン・アルバレスのキックはど真ん中。マン・シティが勝ち、ガナーズがドローに留まったため、両者のギャップは6ポイントに縮まりました。

1試合消化が少ない昨季プレミアリーグ王者が、ブライトンとの延期試合を制すれば、その差は3ポイント。エティハドのシックスポインターでライバルを撃破し、残り試合を全勝すれば、得失点差で3連覇を達成できそうです。ペップもアルテタも、直接対決以外のビッグ6はチェルシーとのホームゲームのみですが、首位チームはセント・ジェームズ・パークを残しています。

0-2から追いつかれてしまった原因をすべて、34番に押し付けるのは酷ですが、2点リードという状況でアンフィールドに着火する必要はありませんでした。天王山では、エティハドの空気を冷やすパフォーマンスを見せていただければと思います。トロフィーを獲得すれば、立役者のひとりと称えられる素晴らしいシーズンを過ごしているのですから。