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ウィルシャー、ボーンマスでがんばれ!…イングランド代表の若手MFたちの将来がちょっぴり心配。

ジャック・ウィルシャーのボーンマス移籍は、現地のファンや評論家にとって衝撃的だったようです。声が大きいのは、「なぜボーンマスなんだ!?」「なぜヴェンゲルは許したんだ!?」の2つでしょうか。前者の代表は、もはやプレミアリーグ全体の御意見番と化したポール・スコールズさん。ウィルシャーほどの選手なら、プレミアリーグの上位クラブに留まるか、もしくは海外のビッグクラブに挑戦するべきというのがマン・ユナイテッドOBの主張です。

「私は、彼がローマのようなビッグクラブへ行く姿を見たかった。国外での経験は、彼にとってもイングランド代表にとっても大きいと思う。ボーンマスだからといって、いつも出場できるとは限らない。ボーンマスでも、アーセナルでも、マンチェスター・ユナイテッドでもローマでも、どこでもしっかりやらなければ試合には出られない。彼の足首がどうなのかはわからないが、苦しんでいるのは知っている。問題なければ、彼は疑いなくトッププレーヤーだ。そういう選手はイングランドのトップ3、トップ4のクラブでプレイしなければならない。自分の居場所をあまりに低く置いたことが心配だ」(ポール・スコールズ)

そして、ヴェンゲル監督を批判しているのは、クリス・サットンさんやポール・マーソンさんです。彼らはウィルシャーに対する評価が高く、アーセナルは使えばいいじゃないかといっています。プレミアリーグの順位予想や勝敗予想を私よりも外すマーソンさんは、ウィルシャーが好きである以上にアンチヴェンゲルなのかもしれません。「レスターやスパーズがプレミアリーグを制覇したら、彼を解任すべき」「アレクシス・サンチェスのワントップは無理だ」と、事あるごとにアーセナルの指揮官に噛みついています。

「ボーンマスにしてみれば素晴らしい補強だけど、アーセナルの決定はジョークだね。彼は残るべきだった。アーセナルでポジションを得られる選手だ」(クリス・サットン)
「1~2ヵ月なら理解できるが、シーズンローンには非常に驚いた。彼はアーセナルに違いをもたらすことができる。針の穴に糸を通すようなパスで、何かを起こしてくれる」(ポール・マーソン)

みなさんのおっしゃることはわかるのですが、それらはあくまでも、「ジャック・ウィルシャーが元気だったら」のお話だと思います。アーセナルの10番は、2015-16シーズンのプレミアリーグで3試合にしか出ていないことを忘れてはいけません。ローマからのオファーを断ってボーンマスを選んだのは、本人にとって何よりも大事だったのが「レギュラー選手としてフルシーズン働くこと」だったからでしょう。根っからのグーナーであるウィルシャーは、ローマで勝負できるぐらいならグラニト・ジャカと勝負するほうを選んだはずです。

「トップクラブで戦うべし」と主張するスコールズさんには、下位にいくとレベルが落ちるのではないかという懸念があるのだと思われます。しかし、優秀な選手はどこにいっても素晴らしいプレイができることは、ユーヴェで失敗した後フラムで復活し、マンチェスター・ユナイテッドでチャンピオンズリーグ制覇に貢献したファン・デル・サールや、レスターで別世界のプレイを見せてチームを残留に導いたカンビアッソが証明しています。切実な思いをもってボーンマスを選んだウィルシャーは、プレミアリーグで最も小さいクラブでトップフォームを取り戻してくれるはずと信じましょう。

むしろ気になるのは、「ウィルシャーがいいときの自分を思い出してアーセナルに戻ってきた後、どこで活躍するのか」です。エジルのポジションか、メッシやダヴィド・シルヴァがよくやるようにサイドから中に入ってくるのか、ジャカやコクランとコンビを組むのか。抜群のサッカーセンスをリスペクトしつつも、「どこをとっても85点」という印象があり、スケールアップした彼の未来の姿が見えません。これは、イングランド代表の若手と中堅のMFに共通する傾向で、「トップ下かセントラルMFか、あるいはアンカーか」わからない選手として、ヘンダーソンやロス・バークリーにも同じ感覚を抱きます。昨季までエヴァートンで指揮を執っていたロベルト・マルティネスベルギー代表監督は、ロス・バークリーをスケールの大きいセントラルMFとして育てたかったそうですが、ややもすると「トップ下としてはゴールに直接絡むプレイが少なく、セントラルMFでは展開力と守備が今ひとつ」という中途半端な選手になってしまう危険があるように思います。

昨季のプレミアリーグで、得点ランキングで最上位だったイングランド人MFは19位だったデル・アリで10ゴール。アシストランキングはエジル、エリクセン、タディッチ、パイェと上位を外国人が占めており、イングランド人トップはベテランMFミルナーが5位で11アシスト。次が10位のデル・アリの9アシストと、プレミアリーグ最優秀若手選手以外は上位に名前が出てきません。うーん…。ペップ・グアルディオラに、ウィルシャー、ロス・バークリー、ヘンダーソン、デル・アリ、ウォード=プラウズあたりを預けて、「これで中盤を作ってください」と頼んだら、誰をどこに置くのか、どの長所を尖らせようとするのか興味が湧きます。

スティ-ブン・ジェラードは前をまかせれば自らゴールを狙い、後ろに置けばロングフィードで前線を動かすスケールの大きいセントラルMFでした。フランク・ランパードは、ゴールでもアシストでもランキングの上位に顔を出す選手でした。そこに最も近いのはデル・アリですが、ジャック・ウィルシャーもまた、10代の終わりごろには同じように期待されていた選手です。彼らのなかからシャビは出るのか、エジルやランパードのような数字を残せるのか、全員ミルナーになるのか…。さまよえるイングランド人MFといっては大げさかもしれませんが、ジャック・ウィルシャーのボーンマス行きをきっかけに、尖りがみえない若い選手たちに不安を感じたわけであります。今夜、スロバキアVSイングランドを観たら、余計にモヤモヤするかもしれません。がんばれ、特にロス・バークリー!…あ、いなかったんでしたっけ、今回は。

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“ウィルシャー、ボーンマスでがんばれ!…イングランド代表の若手MFたちの将来がちょっぴり心配。” への6件のフィードバック

  1. 凹んで より:

    スコールズやマーソンは、ウィルシャーを過大評価しすぎです。ウィルシャーはこうした世間の高い評価と、自身のアーセナルへの愛情から、甘えがあったと思われます。ここらで外にでるのは、彼にとってはプラスにはたらくと個人的に思っています。海外クラブうんぬんはローマとの交渉の結果であり、ウィルシャーのために安くてもそっちを選択すべき…という主張は勝手なもんだと思います。まあ、スコールズがウィルシャーに期待してるのはこれまでの言動でよく分かるので、ボーンマスでいいところを見せつけて、選択が正しかったことを証明してほしいです。

  2. より:

    ヘンダーソンはセントラルでしょう
    スアレスがいたシーズンにそれを証明している
    今のポジションは勿体無いと思う

  3. プレミアリーグ大好き! より:

    ウィルシャーはイングランド人同士の補正がかかってますね。
    ここ数年全く成長してないのに、なぜか評価は高いですし。
    怪我しない体作りのために努力するのはプロとして当然でありながら、夜遊びやタバコはやめないし、ファンの人気が高いのは意味不明です。

  4. nyonsuke より:

    特に最前線で見ている人たちがウィルシャーを高く評価しています。
    一方で素人は彼は過大評価だと、プロと素人で彼の評価がまったく違いますね笑、一流にしか見えない魅了が彼にはあるんでしょう。

    彼らの活躍に期待しています。

    —–
    更新お疲れ様です。

    ウィルシャーはなんにせよ怪我が多いイメージですね。
    うちのスタリッジと同様でコンスタントに試合出れることができれば一流の選手だと思います。
    結局は怪我との付き合い方も含めて評価されてしまう世界なのでボーンマスで強く成長できればと期待します。

    またヘンドはクロップサッカーでどのような役割を担えるか思案中といったところでしょうか。
    中盤底のベストはジャンであることは間違いなく、そして今季はララーナをCMFで起用するみたいです。
    クロップの狙いとしてはCMFは高い運動量でボックス内にどんどん進入し決定的な仕事を求めているみたいなのでどうしてもララーナとワイナルドゥムがベストなのでしょう。
    ジェラードは仰るとおり、ボックス内では決定的な仕事をして、下がり気味のときはロングフィードで試合が作れる選手でした。
    しかし、晩年に中盤底を任された時にはミスも多くジェラードのポジションはそこではないと最初は批判されました。
    ヘンドもこのような時期かもしれないし、現在のレッズの布陣もまだまだ試行錯誤中ですので、今季は新しいスタイルのヘンダーソンが生まれればレッズの勝ち星も増え代表でも貢献できると思います。
    レッズではミルナーも左SBを任されチャレンジ中ですので、このような起用がジェラードのように功を奏すことを期待しています。
    (バークリーはほどほどに・・・、ダービーが恐すぎます 笑)

  5. そね より:

    スコールズもアンリも最近解説者にまわった名選手は批判が多すぎるように思います。
    若手が伸び悩むアーセナルの中で、(おそらく)自らローンを選んだジャックの心意気をもっと買ってほしいといちグーナーとして思います。
    天才と若い頃から期待されてきた選手ですので挫折も必要かと。同じく伸びやむウォルコットやギブスと違う道を自ら選んだ彼を応援したいと思います。
    エジルに10番をあげるくらい挫折を極めてアーセナルの伝説になってほしいと思います。
    がんばれジャック!!

  6. makoto より:

    凹んでさん>
    出場機会と代表復帰が狙いなら、ローマはないんじゃないかな、と思いました。ボーンマスはおもしろいと思います。

    あ さん>
    もったいない感はありますね。2013-14はよかったですよね。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    アーセナル愛がすごいから、でしょうね。

    おはむさん>
    若い頃の彼を近くで見ていた人たちの評価が高そうですね。「一緒にプレイしてみたらすごかった」という印象がなかなか消えないのはわかります。日本選手でいえば、磯貝、財前、石塚にそういう評価がありました(古いですが)。

    nyonsukeさん>
    ヘンダーソンは、もっと前でプレイできたほうが活きるのではないかと思います。底に置くならエムレ・ジャンですね。クロップ采配がどう着地するのか、興味深いです。

    そねさん>
    そうですね。日本でも「喝」とおっしゃる方がいますが、ポジティブな目線も併せ持ってコメントしてもらえるといいですね。

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