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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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アザール、マネ、ウォルコット…今季のプレミアリーグは「中に入るウイング」に要注意!

週末の「デイリー・メール」が、チェルシーのエデン・アザールがいわゆる10番、トップ下でプレイしたがっていると報じました。鋭いドリブルだけでなく、ここという的確なタイミングで出すラストパスや正確なシュートもあるベルギー代表MFは、自由がほしいと語っておりましたが、本音は守備の負担を軽くしてほしいと思っているのかもしれません。4-2-3-1、あるいは4-1-4-1のアウトサイドは、相手のサイドアタッカーとSBのポジションを見ながら上下動を繰り返すことが求められます。コンテ監督が、プレミアリーグで長らくスタンダードだったこの戦い方を踏襲するのであれば、アザールは監督と話し合ったほうがいいかもしれません。しかし、イタリア人指揮官がレスター戦の3-4-3を基本とするなら、何もいわずに左ウイングを自分の定位置としてがんばったほうがいいでしょう。新しいフォーメーションにはトップ下というポジションがないのですが、理由はそればかりではありません。「トップ下よりもプレッシャーが少ないポジションから、自由に中に入っていける」からです。

コンテ監督の3-4-3は、左から攻められればマルコス・アロンソ、右からならヴィクター・モーゼスが最終ラインに吸収されて4枚となり、両サイドが引けば5-4-1になる布陣です。すぐ後ろにマルコス・アロンソがいて、マティッチが左から上がってくると2枚が後ろをカバーしてくれるシステムは、4-2-3-1よりもアザールの守備の負担は軽くなることが多い形です。週末のレスター戦では、10番が前線に出て3-1-4-2になることも多く、中央で常にアンカーにつつかれるトップ下よりも、サイドからうまく中に入ったほうが前を向いてボールをもらえる機会が増える可能性は高いでしょう。

コンテ監督の選択は、アザールにしてみれば守備の負担が減って自由度が上がり、中に斬り込めば10番になれる形なのです。これが実現できるのは、マティッチが上がっても広範囲のスペースをカバーしてくれるカンテのおかげでもあると思います。プレミアリーグ8試合で既に3ゴールを挙げているアザールの復活は、コンテ監督のメンタルマネジメントと戦術変更によるところが大きいのではないでしょうか。

プレミアリーグの上位クラブを見渡してみると、「中に入ってくるウイングあるいはサイドMF」が攻撃面で重要な役割を果たしているチームが目立ちます。4-3-3で戦うリヴァプールのコウチーニョとサディオ・マネは、縦への突破はナサニエル・クラインとミルナーにまかせて、ぐいぐい中へ斬り込んできます。ドリブル突破と裏に抜ける動きが多いセカンドストライカータイプのマネに対して、コウチーニョは十八番のミドルシュートやラストパスなど「偽10番」とでもいうようなプレイが持ち味。彼らがサイドを空けると、SBやインサイドMFがケアしてくれます。

クロップ監督は、ボールを奪われた直後のチェックと縦パスへのケアを素早く行うようにしているため、不用意な横パスを獲られたりしない限りは、あからさまなカウンターを喰らうことはありません。サイドの選手が自信をもって持ち場を離れられるのは、「とにかく走って速く守り速く攻める」チームだからでしょう。昨夜のマンチェスター・ユナイテッドは、後半になるとマネとフィルミーノに中に入られまくったのですが、サイドの薄さを突くカウンターを一度も成功させられませんでした。

アーセナルのウォルコットは、アレクシス・サンチェスを最前線とするゼロトップに近い布陣のなかで、最終ラインの裏に抜け出す動きが光っています。アレクシス・サンチェスはボールをもらうためにサイドに流れたり下がってきたりすることが多く、前線に張るタイプではありません。アレクシスが持ち場を留守にして、カソルラやエジルが前を向いてボールを持ったときがウォルコットの出番です。右から斜めに走りゴール前に飛び込むか、あるいはアレクシスと入れ替わって中央でラストパスを狙うか。チェルシー戦の2点めは、今季プレミアリーグにおけるこのチームを象徴するゴールでした。カソルラ、エジル、イオビとつながり、スルーパスで右から抜け出したベジェリンのグラウンダーを中で決めたのは「CFウォルコット」。名前が出てこなかった7番は、エジルに近寄ってボールをねだりにいっており、ゴールの瞬間は「後ろからきたけど間に合いませんでした」とでもいいたげに、イオビと並んでフィニッシュを見届けていました。サイドアタッカーのウォルコットは、いつの間にかプレミアリーグ5ゴールでチームのトップスコアラーです。

アーセナルの布陣を数字で表現すると、どうなるのでしょうか。4-2-4?アレクシスとウォルコットの2トップ?トップの相棒はエジル?4-2まではいいのですが、その後がうまく描けません。彼らの姿は、アンリ、ベルカンプ、リュングベリのインヴィンシブルズとオーバーラップします。出遅れたジルーとフィット途上のルーカス・ぺレスが、ストライカーがいないこのチームに溶け込むのは簡単ではなさそうです。

そしてトッテナムでは、ソン・フンミンです。彼のゴールパターンは、ワンツーやポストプレーでサイドから中に入って決めるか、左45度からの正確なシュート。赤いユニフォームのマネとコウチーニョを足して2で割り、漂白剤を入れればスパーズで4ゴールを決めているトップスコアラーの出来上がりです。マン・シティのノリートとスターリングはボックス脇から中央にグラウンダーを供給する志向が強く、いかにもウイングというプレイが多いのですが、チームがカウンターモードになったときのスターリングはアグエロと2トップを組んでいるかのごとく、前線に飛び出してゴールを決めています。

3-4-3、4-3-3、ゼロトップ…4-2-3-1が多かったプレミアリーグも、大陸から名将が集まってきて多彩な戦い方が観られるようになりました。ラシュフォードとマルシアルがサイドに張り付いている時間が長く、シュートが少ないモウリーニョ監督の4-2-3-1が古く見えるぐらいです。ストライカーや10番のように中央でゴールを決めるウインガーたちの活躍に、今後も注目してまいりたいと思います。

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“アザール、マネ、ウォルコット…今季のプレミアリーグは「中に入るウイング」に要注意!” への2件のフィードバック

  1. おはむ より:

    申し訳ないのですが、今日の試合を見てモウリーニョは過去の人になってしまったんだって確信していまいました。 にして、今季のプレミアリーグはどこの試合をみても面白いですね。 10年前のセリエAみたいですね

  2. ヤンガナ大好き! より:

    確かにこの中へ切り込むが去年、専売特許だったマフレズに代わり、アザール、マネ、ソン、ウォルコットがリーグ前半の攻撃で躍動していますね!アザールを除いては皆、ムラッけがあったりリーグやポジションへのフィットに苦しんでいたメンバーというところが面白いです!アザールも昨年は随分迷いながらプレーしていた感じでしたし。

    ガナーズのウォルコット、必要戦力としての評価で土俵際まで追い込まれ、センターファードの夢を捨て去ったことが、迷いのないプレーに直結しているように思います。彼のクレバーさがよい意味で発揮されつつあると思っています。ただし、怪我の多い選手なのでシーズントータルで活躍して、本当の評価がなされるとは思いますが。

    自分はベンゲルさんのゼロトップフォーメーション、意図してやってはまってきたのなら凄い!って思ってしまいますね。よく考えてみると、今のガナーズ攻撃陣を戦略的な新監督が任せられたら、恐らく同じフォーメーションを取ると思います。こんなことを考えていたら、ベンゲルさんの後任は、ドイツ代表監督、レーブさんが面白いなあと思ってしまいました。

    このフォーメーションにガナーズ遺伝子の申し子、イオビを入れ続けていることに意味があると思いますし、ウィルシャーには残念ながら今のフォーメーションではスターターが難しいと判断したことも解る気がします。また、エジルにはもっとシュートを打って欲しいといい続けてきた監督の意図はこのサッカーがしたかったのかと益々感じてしまいました。後はドン引き相手にプランBのワントップフォーメーションが出せる柔軟性があれば素晴らしいと思っています。

    それにしても今期はリーグ内にスリーバックあり、多彩で且つ試合中に目まぐるしく変えるフォーメーションありで、本当に見応えありますね。強豪同士の対戦がまっている年末のマッチアップ、見逃せませんね!

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