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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

15歳下のクロスに飛び込んだラストプレー。ウェイン・ルーニー、最後のウェンブリー。

ガレス・サウスゲート監督が就任してから、それまでよりもイングランド代表の試合を観るのが楽しくなりました。ビッグネームや過去の代表実績に囚われず、プレミアリーグで頭角を現した選手を大胆に登用するからです。15日にウェンブリーで行われたアメリカとのフレンドリーマッチのスタメンは、プレミアリーグジャンキーのテンションが上がりまくる大抜擢だらけでした。ワールドカップロシア大会でエースGKの座を盤石にしたエヴァートンのピックフォードは、先週末のチェルシー戦でビッグセーブを連発してドローに持ち込む立役者となっています。右SBは、リヴァプールでレギュラーに定着したトレント・アレクサンダー=アーノルド。左には、今季プレミアリーグで252本のスプリントというぶっちぎりのNo.1を記録しているレスターのベン・チルウェルが選ばれています。

CBコンビは、エヴァートンで復活したマイケル・キーンと、今季プレミアリーグで2ゴールを決めているブライトンのルイス・ダンク。セットピースを重視しているサウスゲート監督は、マグワイア不在の際に機能するCBかどうかを試すのでしょう。中盤には、ベテランのファビアン・デルフとエースのデル・アリに加えて、スパーズで好プレーを続けているハリー・ウィンクスを起用。前線がまた斬新で、ドルトムントの18歳ジェイドン・サンチョ、ロシアでゴールを決めたリンガード、ボーンマスでプレミアリーグ12戦6発と絶好調のカラム・ウィルソンの3トップです。

そしてこの試合には、もうひとつイベントが用意されていました。「スカイスポーツ」のカメラが試合前に追いかけていたのは、10番を背負ったウェイン・ルーニー。エヴァートンからMLSのDCユナイテッドに移籍し、20試合12ゴール7アシストという大活躍で最下位チームをプレーオフ進出に導いた天才ストライカーは、リーグの年間ベストイレブンに選ばれています。ワールドカップ前に代表引退を発表したイングランドのレジェンドにとって、ウェンブリーでアメリカと戦うゲームは、最後の勇姿を披露するのにうってつけのステージでした。

5分のCKをヘッドで叩いたデル・アリは、クロスバーに当たったボールを見て頭を抱えています。8分、プレミアリーグファンにはおなじみのGKグザンのミスフィードをデル・アリがカットし、右からニアに入れると、カラム・ウィルソンが狙い過ぎたボレーは左にアウト。10分に縦パスを受けてグザンと交錯したかに見えたカラム・ウィルソンは、ダイブと見做されPKはもらえません。アメリカ代表でひとり気を吐くクリスティアン・プリシッチは、24分にラインの裏に飛び出しピックフォードと1対1になりますが、コースを消されてシュートを足に当ててしまいます。

イングランドの先制は、直後の25分でした。敵陣で奪ったデル・アリが、チルウェルとのパス交換で左サイドを上がると、ニアにいたリンガードにパス。ワールドカップでの一撃を思い出させる右足で巻いたシュートがグザンの指先を抜け、ファーサイドのネットに吸い込まれました。ピッチ脇でアップしていたルーニーは、笑顔で後輩たちの成果を称えています。1-0となった2分後、イングランドの追加点が生まれました。デルフのパスを中央で受けたデル・アリが縦パスをカットされ、こぼれたボールをコントロールしようとしたカラム・ウィルソンもつぶされますが、これを拾ったサンチョがボックス右に転がすと、走り込んだアーノルドがサイドネットに突き刺さる完璧なフィニッシュ。18歳と20歳でもぎ取ったゴールに、否応なくテンションが上がります。

37分、デルフのミスタッチを咎めたアメリカのショートカウンターは、グリーンのシュートをピックフォードが手堅くセーブ。前半を2-0で終えた守護神は、セインツのマッカーシーに後を託します。58分、いよいよ今日の主役の登場です。古巣マンチェスター・ユナイテッドのリンガードに代わり、ルーニーがピッチへ。71分に途中出場のロフタス=チークがカウンターを仕掛けると、左でパスを受けたサンチョが中央の10番へ。切り返しから放った左足シュートは、GKの正面に飛んでしまいました。74分、自陣からラインの裏に通したルーニーのロングフィードは秀逸でしたが、左から打ったロフタス=チークのフィニッシュはDFがブロック。77分、エリック・ダイアーが左に展開すると、チルウェル交代後に左に出ていたデルフがニアに完璧なクロスを入れ、カラム・ウィルソンが巧みなボレーをニアポストの内側に押し込みました。

91分、ヘンダーソンのパスをボックスで受けた10番が、切り返しを入れて右足を振り抜くと、グザンが右に倒れてセーブ。ルーニーが、これほど穏やかな笑顔をピッチで見せたことはありませんでした。93分に15歳下のサンチョのクロスに体を投げ出したのが、最後のチャンス。ゴールこそなかったものの、随所にワールドクラスのテクニックを披露したイングランド代表キャプテンは、ピッチにいたすべての選手に声をかけ、ハイタッチや抱擁をかわし、サポーターの声援に手を振りながら聖地のピッチを後にしました。

「ウェイン・ルーニーとのプレイは本当に素晴らしかった。夢が叶った。試合前のドレッシングルームで、ウェインに”緊張している”というと、失うものはないといってくれた」(ドルトムントMFジェイドン・サンチョ)
「ルーニーのキャリアを振り返るのは、エキサイティングなことだ。わが国のベストプレーヤーのひとりであり、彼とピッチを分かち合えていい気分だよ。地元の若者の代表として(=As a local ladなので、もっとカジュアルですが)、リヴァプールの人たちに見せられたのもよかったね」(リヴァプールSBトレント・アレクサンダー=アーノルド)
「ウェインは、ホテルで私たちに語りかけ、デビューする若者たちにシャツを渡していた。ぜひ参加したかった偉大なゲームだった」(サウサンプトンGKアレックス・マッカーシー)

もう1度、観られてよかった。ありがとう。ウェイン・ルーニー!

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“15歳下のクロスに飛び込んだラストプレー。ウェイン・ルーニー、最後のウェンブリー。” への1件のコメント

  1. エミリー より:

    まだアーセナルのGKがシーマンの頃に、子供みたいなルーニーに無敗記録をストップさせられたのを鮮明に覚えています。
    おさない感じを残してはいるけど、妙に堂々としていて、感覚を研ぎ澄ましながらピッチに立つ眼差しは、こりゃスターになるなって感じでした。
    その後、ユナイテッドに入ってからも、アーセナルはお得意様にされて、結構ルーニーにはやられましたからね(笑)
    いつも恐い選手でライバルでしたが、本当にいい選手です。
    そのルーニーがキャリアの終盤なんて、信じられないですね。
    私も老けるわけです(泣)
    ユナイテッドがバルセロナにCLの決勝で負けた試合で、後半心が折れたユナイテッドの選手達が萎縮するなか、ひとりボールを奪おうとアタックし続けるルーニーを見たとき、ああ、やっぱり最高の選手だなと思ったのを、記憶しています。
    上手い強い以外もたくさん持っている、凄い選手ですよ。
    ルーニーを手本に、若い選手も成長してほしいですね。

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