ニャブリ、デパイ、サラー…「売らなきゃよかった」選手たちを見ていて思うこと。
なぜ突然、こんな話を始めたかといえば、オランダ代表のロナルド・クーマン監督がチームのエースについて語った記事を目にしたからです。「彼はトッププレーヤー。マンチェスター・ユナイテッドにいた頃は、少し若すぎたかもしれない」。公式戦53試合7ゴールというもの足りない数字しか残せず、斬新すぎるファッションばかりが話題になったウインガーを1年半で放出すると聞いたときには、やむなしとしか思いませんでした。ところが、オリンピック・リヨンでの最初の8試合で5発決めたと知ると、とたんに落ち着かなくなります。
2017-18シーズンにリーグアン36試合19ゴールという出色のスタッツを叩き出したデパイは、母国の代表チームでも真価を発揮するようになりました。リヨンに在籍した2年10ヵ月で、公式戦130試合50ゴール42アシスト。オランダ代表でも、直近11試合で8ゴール10アシストです。ニャブリのブレイクにほぞを噛むグーナーを到底笑えず、今はインテルでセリエA12試合9ゴールのルカクを見て複雑な思いをかみしめています。何とかならなかったのでしょうか、スールシャール監督…。
そういえば、モー・サラーがプレミアリーグ36試合32発と大爆発した2017-18シーズンには、チェルシー時代に彼を手離したジョゼ・モウリーニョ監督を揶揄する記事が続出しました。アザール、オスカル、ラミレス、ウィリアン、ジエゴ・コスタ、ロイク・レミー、ドログバを擁してポール・トゥ・ウィンのプレミアリーグ優勝を果たしたチームで、実績がない選手に「試合に出してくれ」といわれても、簡単に呑めるものではありません。「獲得はしたが、放出はしていない。クラブが決めたこと」「われわれは、彼の希望に沿えなかっただけ」という名将のコメントは、偽らざる本音でしょう。ウェストロンドンにいた頃、22歳だった快足ウインガーは、モウリーニョとの早すぎた出会いと別れを経て、最高のタイミングでクロップと邂逅したのだと思います。
「将来性を見込んで獲得した若手が結果を出せない」「ユースでは素晴らしかった選手が伸び悩んでいる」…売るか、残すか、ローンに出すか。若手を多く抱えるクラブの共通の悩みです。マンチェスター・ユナイテッドやチェルシーのように、短期間で監督を代えるクラブほど、中長期的な育成や手離すか否かのジャッジが難しくなり、売って後悔するリスクが高まります。
ユースからの抜擢や若手獲得が目立つようになった最近のプレミアリーグを観ていると、心の中で念じている自分に気づくことがあります。マンチェスター・シティは、レロイ・サネを出すな。アーセナルは、ルーカス・トレイラやブカヨ・サカを出すな。マンチェスター・ユナイテッドは、マルシアルとグリーンウッドを出すな。チェルシーは、何としてもハドソン=オドイを引き留めろ…。残すのが正解とはいえないのですが、彼らを放出したクラブのサポーターが、数年後にモヤモヤした気分を引きずるような気がしてならないのです。
マン・シティからアストン・ヴィラに移籍したドゥグラス・ルイスは、ワールドクラスといわれるまでに成長を遂げるでしょうか。リヴァプールからボーンマスにレンタルされたハリー・ウィルソンは、次の夏に呼び戻すべきでしょうか。売るか、残すか、ローンに出すか。あるいは買い取りオプションという保険を付けるか。選手も監督もクラブも悩む「stay or go」のタイミングと決断。結果論で成功・失敗を語ることはできても、当事者たちを批判することはできません。ニャブリの華々しい活躍に肩を落とすグーナーのなかには、こんなことをいう人々もいるかもしれません。「アレクシス・サンチェスは、やっぱりあのタイミングで売るべきだったのだ」。(セルジュ・ニャブリ 写真著作者/Steffen Prößdorf)
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彼らが売られた数年前に比べて移籍市場の金額は大幅に上がり、上手くクラブをやりくりするには若手の発掘・育成がこれまで以上に重要になりますからね。
これからのプレミアリーグは、どのチームもそう簡単に有望な若手を売却するとは思えないです。