【MAN.UTD×Norwich】 シュート3、ゴール3。ポジションが生んだ香川のハットトリック
1点めは46分、ファン・ペルシのトラップのこぼれを、右からニアの「ここしかない」コースへ右足アウトサイド。2点めは76分、カウンターからルーニーが突破し、お膳立てしてくれた落としをGKやDFの動きの逆を突いて右隅に”コロコロシュート”。3点めはルーニーの横パスからDFの間をワンタッチで抜け出し、GKの飛び出しををクロスのチップキックでかわしてゴール。プレミアリーグではアジア人初となるハットトリックは、いずれも知的でテクニカルなゴール。ようやく、本領発揮。黄色いユニフォームでゴールを量産していた昨年までの背中がオーバーラップしてきました。
この日のマンチェスター・ユナイテッドは「レアル・マドリード戦の予行演習」とばかりに、サイドからの速攻よりも中央でのダイレクトパスの交換で相手DFを崩すことに注力していました。しかし、前半の30分まではチームも香川も最悪の出来。最初のシュートを放つのに25分かかり、そのキャリックの左足は弱々しくGKの懐へ。執拗に中央にこだわるがために、相手の守備も真ん中に寄り、ペナルティエリアの中央は大渋滞。香川はゴールに背を向けた状態でしかボールをもらえず、振り向けけないままダイレクトに出し手に返すのみ。まったく攻めてこない相手に対して何もできず、ただ時間を浪費し、前半はこのまま終わるものと思われました。こんな状況だったからこそ、前半追加タイムの香川の先制ゴールは非常に大きな一発でした。1-0になったことで、相手は前がかりになり、裏が空いてカウンターが効き始め、ファン・ペルシをウェルベックに代える余裕ができ、香川が真ん中でプレイし…とドミノ倒しのように状況が激変。3-0とした直後の90分、香川祭りの締めの挨拶は「全部俺がお膳立てしたことを忘れるなよ」といわんばかりのルーニーのミドル。終わってみれば4-0、快勝です!
特筆すべきは、香川は左サイドMFで60分、プレイをしたにも関わらず好プレイはすべて真ん中だったこと。香川の左サイド起用は、「左から攻めてね」という意味ではなく、「守るときは左をよろしくね」という意味なのでしょう。バレンシアやスモーリングが右で持つと中へ。ルーニーやエヴラが左サイドをカバーすれば中へ。流動的なポジションチェンジで、ボールを受けやすい場所を探し、中央どころか右サイドにまで顔を出します。香川の90分は「3回有無をいわせないシュートを打つためのポジション探し」です。相手の位置を確かめ、細かくポジションと自分の体制を変え、全体が右に動けば逆に流れ…労力を厭わず、小さなことをバカにせず、ひたむきに同じ作業を繰り返すことで手に入れた3回のチャンス。これらをすべてものにしたこの試合で残された「シュート3、ゴール3」というレコードは彼の勲章といっていいでしょう。
ルーニーやファン・ペルシが香川をより使うようになったこと(ウェルベックは今まで以上にシカトモードでしたが)や、前線でボールを失ったとき、奪われた選手が厳しくチェックにいくことで守備のポジションに戻る時間ができることも、香川の自由なプレイをバックアップしてくれています。おもしろくなってきましたね。まずは水曜日、レアル・マドリーにこの勢いをぶつけて、シャビ・アロンソやケディラの裏を取れるか、です。激戦必至ですが、快勝を期待しましょう。
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