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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

【Chelsea×Saints】劣勢を采配でひっくり返した「世界一」モウリーニョ監督の慧眼

昨季のプレミアリーグでは、サウサンプトンの1勝1分けでした。今年の3月、ベニテス体制だったチェルシーは、ジェイ・ロドリゲスに先制され、リッキー・リー・ランバートには決勝FKを決められて2-1と敗戦。トッテナムに抜かれて4位に転落するという痛い足踏みを強いられています。それから約8ヵ月。オズバルドやロブレン、ワニヤマが加わってパワーアップしたサウサンプトンは、プレミアリーグ最少失点で上位に食い込んできました。一方、ミッドウィークのチャンピオンズリーグで、バーゼル相手にシュートを1本しか打てずに負けたチェルシー。滅法強い本拠地スタンフォード・ブリッジのゲームだとしても、足をすくわれてもおかしくありません。チェルシーサポーター以外の方は、もしかしたら…という期待を胸に秘めてこの試合を観ようとしていたのではないでしょうか。

その予感は、試合開始わずか13秒で、現実的なものとなりました。キックオフからのボールを、久しぶりにスタメンに入ったMFエッシェンが不用意なバックパス。ボールはふたりのCBとGKチェフの間にふわりと落ち、走り込んできたジェイ・ロドリゲスのシュートを誰も止められません。まさか、こんな時間にこんな形でセインツが先制するとは…。チェルシーにとっては、堅い守備を誇る相手だけに、高いハードルです。

まだまだ時間があるとばかりにアグレッシブに同点を狙いにいくチェルシーですが、縦へのくさびのパスはワニヤマ、シュナイデルランらがことごとくカット。後ろで組み立てようにも執拗なチェックを受け、いい形が作れません。サウサンプトンに正確で早いパスワークがあれば、20分までに追加点を失っていてもおかしくありませんでした。しかし、セインツのほうも、中盤の守備はよくても前線へのパスが雑で、なかなかチャンスを作れません。20分のオスカルのミドルのほかには、これといって得点の匂いのするシーンもないまま、前半は残り5分を切ろうとしています。

チェルシーが後半、逆転した攻撃の伏線は、前半40分からの2つのプレイにありました。40分、右からF.トーレスが縦に突破してマイナスに上げたクロスを、オスカルがヘディングシュート。44分、今度は左からのマタの浮き球をF.トーレスが頭で合わせます。GKボルツのビッグセーブがあり、点にはなりませんでしたが、中に入った選手はいずれもフリーでシュートを打っていました。

これらのプレイから、ショートパスや縦への突破には厳しいチェックを見せるセインツのDFラインも、サイドからのクロスにはしばしばマークを外す脆さがあることが、モウリーニョ監督の頭に確実にインプットされたでしょう。42分にオスカルが負傷退場し、早い時間にランパードを使わざるをえない状況だったにも関わらず、後半頭からエッシェンを外し、デンバ・バ投入です。この交代は、先制点の元凶となり、自陣で無理なドリブルをしてシミュレーションを取られるなど失態続きだったエッシェンを外したかったのではなく、サイドからのクロスに反応できる前線の頭数を1枚増やすという狙いでしょう。私は、負けているゲームの空気を采配で変えてひっくり返すということにおいては、モウリーニョ監督が世界一なんじゃないかと思います。この日も、後半が始まって10分もしないうちに、稀代の名将の作戦がピタリと当たります。

後半が始まると、チェルシーは徹底的なサイド攻撃。前半には見られなかった、後方からのロングフィードがサイドを走る選手に入るようになります。54分、CKからイヴァノヴィッチのヘッドがポストを叩き、リバウンドに反応したのはガリー・ケイヒル。体当たりのような執念のヘディングシュートがゴールラインを割り、ついに同点です。そして62分には、あっさり逆転!CKのクリアをランパードが拾い、左に張っていたマタに渡すと、マタはニアサイドでフリーになっていたジョン・テリーにきれいに合わせ、ヘディングでの一撃は美しい弾道で右のサイドネットに吸い込まれます。いやいや、モウリーニョ采配、お見事!FWの枚数を増やし、セットプレイにはDFが3人ゴール前に飛び込み、全員が得点に絡むという怒涛の攻撃で、今季のプレミアリーグで1度も逆転されたことがなかったセインツを崩しました。

逆転に気落ちしたセインツには、もはや追いつく気力も体力もありません。チェルシーのプレッシャーに体力を使わされた中盤は運動量が落ち、デヤン・ロブレンは足をつって悶絶します。ダメ押しの3点めは90分、デンバ・バの今季プレミアリーグ初ゴール。まるでサッカーの神様が「あなたが正しかった」とモウリーニョ監督を祝福するかのように、後半から入った選手が結果を出します。終わってみれば、チェルシー、3-1。昨季の借りをきっちり返し、リヴァプールをかわして2位浮上。アーセナルに独走を許さないために、どうしても必要だった貴重な勝ち点3を手に入れました。

今週は、2試合戦わないといけないタイトなプレミアリーグ。チェルシーは水曜日、土曜日ともアウェイでサンダーランド、ストークと戦います。この日、ランパードを50分使うという誤算があり、オスカルがケガで今週は出場できないかもしれませんが、ウィリアン、シュールレ、デブライネ、ミケルらが控えており、下位クラブにジャイアント・キリングを許すことはないでしょう。一方、セインツは、水曜日のアストン・ヴィラ戦の後は、マンチェスター・シティ、ニューカッスル、トッテナムというハードな3連戦。「今季はチャンピオンズリーグ出場権を狙う」と大見得をきっていたポチェッティーノ監督ですが、これが勝算あっての発言だったのか、ただの強気なキャラなのかを問われる2週間になりそうです。ああ、もう明日の深夜には試合ですね。プレミアリーグファンは、12月は眠れません。

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“【Chelsea×Saints】劣勢を采配でひっくり返した「世界一」モウリーニョ監督の慧眼” への2件のフィードバック

  1. チェルシー より:

    最初のミスを含めてもスピーディーで面白い試合でしたね(^^)

    バーゼル戦の采配は疑問でしたがさすがモウリーニョです
    ピッチの外の監督があれだけピッチ内に目に見える形で影響を及ぼすってのはすごいことですよね

    マタのキックの精度も高くてやっぱいい選手だなと改めて実感しました

    ガナーズもてこづった守備陣相手に3得点なら余裕で合格点ですね(^^)

  2. makoto より:

    チェルシーさん>
    モウリーニョ采配も絶品でしたが、選手たちにも「何としても点を獲る」という気概があふれていました。気迫が伝わるという意味では、イヴァノヴィッチとデンバ・バは素晴らしかったです。マタは、守備の貢献もいつもより高かったですね。ピンポイントのクロスは相変わらずさすがです。

    エジル、マタ、ヘスス・ナバス、ダヴィド・シルヴァのような「悪くても一発で局面を変えるパスが出せる」存在が、マンチェスター・ユナイテッドにはいないんですよね…。

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