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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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【Chelsea×Aston Villa】3-0完勝、スキなしチェルシー。彼らが負けない5つの理由

今週のプレミアリーグは、ロンドンとリヴァプールでダービーが行われ、翌週のチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグを控えて2試合を除くすべてのゲームが土曜日開催。ライブで観られるのはがんばっても3試合となれば、勝負の行方がわからないダービーを優先したくなります。よって、プレミアリーグ首位のチェルシーと、先週ホームでアーセナルに0-3で完敗したアストン・ヴィラという「結果がみえる試合」は後回しとなってしまったわけですが、この試合は、どちらが勝つかではなく「プレミアリーグ首位を走るチェルシーのどこにスキがあるのか」という視点で観てみようと思い立ちました。

開始7分、ウィリアンが右からフリーで侵入し、自ら打ったシュートのリバウンドを中にいたオスカルにダイレクトパス。オスカルがこれを難なく流し込んだ瞬間、半ば勝負は決まったようなものです。今のチェルシーに勝つためには、どんな形でもいいからスウォンジーのように先制するか、それが叶わなくてもレスターのように前半をイーブンで終えられなければ厳しいでしょう。リードを奪って、無理に攻めなくてもいい状態となったチェルシーの守備は堅牢です。ここからは、「チェルシーにスキはあるのか」「負けない理由はどこにあるのか」を深堀りする80分となりました。

■チェルシーが負けない理由・その1「前線からのチェックが厚く、速い」
アストン・ヴィラにボールを奪われた瞬間から、チェルシーのディフェンスが始まりますが、彼らのハイプレスはプレミアリーグナンバーワン。いちばん効いているのはオスカルの運動量です。モウリーニョ監督が認めているように、疲れがたまっているジエゴ・コスタがさほど走らないため、背番号8はセンターフォワードのようにアストン・ヴィラのビルドアップを執拗に追いかけ、プレイエリアを縛りにかかります。この段階で、少しでも詰まった素振りを見せようものなら、ウィリアンやアザールがさらにチェイスして、パスコースがひとつしかなくなるぐらいまで絞ります。マティッチやセスクはもちろん、時にはケーヒルやテリーがハーフライン付近でインターセプトするシーンがあるのは、前の選手が相手のプレイを限定させるので、パスコースが完全に読めるからにほかなりません。この試合のアストン・ヴィラは、30分過ぎまでほとんど何もさせてもらえませんでした。

33分、中盤の底から左右に効果的な長いパスを供給するマティッチが右のウィリアンにパスを出し、ウィリアンからのクロスをジエゴ・コスタがヘッドで狙うも追加点はならず。モウリーニョ監督は、アクシデントがあってもリードをキープできるよう、早期の2点めを要求しています。チェルシーが攻勢になると、少しずつアストン・ヴィラにもカウンターのチャンスが生まれてきます。

■チェルシーが負けない理由・その2「体を寄せ、決して滑らないカウンター対策」
35分過ぎから、イングランド代表MFデルフとアグボンラホルを中心に、アストン・ヴィラがカウンター気味にチャンスを創るシーンが目立ってきます。モウリーニョ監督のサッカーに感じるのは、「不用意なパス、不用意なディフェンスで失点をする可能性を極力小さくする」姿勢です。相手にボールを奪われてドリブルでカウンターを狙われると、チェルシー守備陣はいちばん近くにいる選手がとにかく体を寄せながらついていき、無理に足を出して獲ろうとせず、スライディングなどは決してかけず(セスクだけ、ときどきムキになって滑ってしまいますが)、ひたすらプレイを遅らせようとします。先週レスターに惨敗したマンチェスター・ユナイテッドやカウンターに弱いアーセナルがプレミアリーグ下位にときどきやられるのは、カウンターに持ち込まれそうになったときの守り方に戦術がなく、選手の個人力と判断力まかせになっているからだと思われます。

アストン・ヴィラの反撃は、デルフのドリブルからのミドルシュートという単発の攻撃に終わります。41分にはマティッチのサイドチェンジからウィリアン、オスカルとつないでシュート。前半終了間際にもウィリアンがミドルを放ち、チェルシー優位のままハーフタイム。点差は1点ですが、アストン・ヴィラに追いつく気配はありません。

■チェルシーが負けない理由・その3「数的優位にこだわった攻撃、サイドチェンジ」
46分にデルフがウィリアンをかわしてミドルシュートを放ち、後半がスタート。チェルシーは、相変わらずオスカルが先陣を切るプレスがよく、アストン・ヴィラに自由に攻撃をさせません。この守備を見ていると、モウリーニョ監督がマタを切った理由がよくわかります。「相手を追わない」「無理な態勢から一発でチェックにいく」など、マタにはモウリーニョさんがやってほしくないことが多いからです。

引き続き、2点めを獲りにいくチェルシー。彼らの攻撃で効果的なのは、イヴァノヴィッチやマティッチが繰り出す、手薄なエリアへのサイドチェンジのボールです。チェルシーの選手が数的優位をキープできるサイドから崩せば、仮にボールを失ってもそこに人数がいるので、すぐにプレスをかけてプレイを遅らせたり、ボールを奪いにいくことができます。彼らの攻撃が実ったのは58分。イヴァノヴィッチの長いパスを受けた左サイドには3人の選手がいました。アザールがウィリアンにつなぎ、ウィリアンがすぐ外にいたアスピリクエタに落とすと、フリーのアスピリクエタがニアに走り込んだジエゴ・コスタにピンポイントのクロス。ジエゴ・コスタは見事なコントロールで右のサイドネットに飛び込むヘディング・シュート。これで勝負はジ・エンド。チェルシーは、もう絶対に負けません。

62分のチェルシーは、今度は中央に人数をかけてアストン・ヴィラ守備陣を急襲します。攻撃の起点となることが多いイヴァノヴィッチからのパスをペナルティエリアのすぐ外にいたアザールがヒールで落とし、ジエゴ・コスタにつなぐと、背番号19からのパスがDFベーカーに当たってオスカルに渡り、GKと1対1。オスカルのシュートはGKの脇を抜くも、SBシソコが戻って必死にクリア。ゴールは奪えなかったものの、ここと見ると一気に3人が中央に殺到する数的優位の創り方は見事でした。

■チェルシーが負けない理由・その4「とにかくトップに当てさせない」
2-0とされて、反撃に出たいアストン・ヴィラですが、チェルシーのDFとマティッチ、セスクは、中盤と前線のパスコースを遮断し、アグボンラホルとヴァイマンにボールを出させません。業を煮やしたアストン・ヴィラのランバート監督が、まったくボールを出してもらえず空気となっていたヴァイマンとリチャードソンを、ベントとエンゾグビアに代えた気持ちはわかります。チェルシーは、トップにボールを当てさせないように守っているので、これをかいくぐろうとすると、相当な運動量と楔のパスの精度が求められます。来週のアーセナル戦では、ウェルベックとアレクシス・サンチェスはこの守備に相当やられるでしょう。

79分、それでも何とか攻撃しようと腐心していたアストン・ヴィラは、自分たちがやりたかったカウンターをチェルシーに喰らってダメ押しされます。ボールを奪ったチェルシーは、早いつなぎでセスクから左のジエゴ・コスタへ展開。切り返し、キックフェイントでセンデロスをはじめ、DF3人を完全に振り回したジエゴ・コスタのドリブルは、昨季プレミアリーグ得点王のルイス・スアレスを見ているようでした。シュートは何とかグザンがセーブするものの、弾いたボールがシソコに当たり、これをウィリアンが押し込んで3-0。先制、中押し、とどめと、この日のチェルシーは理想的な展開でした。

■チェルシーが負けない理由・その5「横パスを出さない」
試合を通じて感じたのは、最終ラインでのビルドアップ以外で、チェルシーの選手が真横にパスを出すシーンがほとんどなかったこと。彼らは、よっぽど安全じゃなければ、カウンターにつながりやすい危険な横パスという選択をしません。これは推測ですが、練習で横パスをさらわれたら、選手はモウリーニョ監督にこっぴどく叱られるのではないでしょうか。アーセナルがカウンターでやられるときによくある「最後方にいるMFの不用意なパスやドリブル」「無理めなスライディング」「危険な横パス」は、チェルシーには全くありませんでした。

結論、チェルシーにスキなし、です。来週のプレミアリーグで当たるアーセナルが、戦術的に工夫できることがあるとすれば、「アレクシス・サンチェスを左に置いて、マッチアップするイヴァノヴィッチを抑え込む」「ディアビにマンマークさせるぐらいの勢いでセスクを封じる」の2つでしょう。この2ヵ所をシャットアウトするだけで、チェルシーの攻撃の迫力は30%オフにはなるはずです。とにかく大事なのは先制点。チェルシーに、リスクを冒してでも攻めようと思わせなければ、マティッチ、テリー、ケーヒルで築く中央の厚い壁は壊れません。(ジエゴ・コスタ 写真著作者/Ultraslansi)

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“【Chelsea×Aston Villa】3-0完勝、スキなしチェルシー。彼らが負けない5つの理由” への2件のフィードバック

  1. パックン より:

    モウリーニョとしては今季一番の快勝だったんじゃないですかね。
    攻撃のクオリティを落とさずに昨季のような堅守も披露する事が出来ましたから。
    昨季の課題をクリアし今のところ隙がない状態なのでしばらくは走り続けるかもしれませんね。
    怖いのは主力の長期離脱ぐらいでしょうか。

  2. makoto より:

    パックンさん>
    おっしゃるとおりだと思います。いい試合でしたね。彼らを破るチームが思い浮かびません。何かが起こるとすれば、「ディ・マリアとファン・ペルシの、プラン無視のバカ当たり」ぐらいでしょう。

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