【Aston Villa×Saints】クラインお見事!しかし遅かった…ドローに終わったセインツの強さと脆さ
大量に主力選手を放出しながら、クーマン監督のサッカーが早期に浸透し、プレミアリーグで2位に躍進。ここまで5失点は、2番めに少ないチェルシーの半分以下という鉄壁の守備。直近4試合は、すべてクリーンシート。点をやらないセインツは、それゆえに追いかけるゲームの経験が少なく、先制を許した3試合のうち、リヴァプールとトッテナムには競り負け。逆転勝利はシュナイデルランがスーパーだった3節のウエストハム戦のみです。この試合で、セインツは劣勢をひっくり返してプレミアリーグの優勝争いに残るのか。あっけなく敗れて、マンチェスター・シティの追撃を許すのか。後半が始まっても、マネのドリブルはことごとくアストン・ヴィラのDF陣がカット。苦し紛れのクロスは簡単にゴールラインを割ってしまい、シュートを打てる態勢に持ち込めません。次の1点の匂いがするのは、攻め上がるSBクラインの裏を突いたカウンターで、たびたびフォースターを慌てさせているホームチームのほうです。
66分、クロスのクリアの落下点にいたワニャマがボレー。後半が始まってから20分以上を費して、セインツはやっとまともなシュートが打てました。これを機に、プレミアリーグ2位にやっとエンジンがかかったようです。72分、右に流れたワニャマのスルーパスを受けてサイドをえぐったフォンテが、きわどいグラウンダーを通すも誰も触れず。直後のタディッチの右からのクロスは、GKグザンの前にいたペッレの頭を捉えるも、枠の上。75分、タディッチがドライブをかけて狙った強烈なFKはグザンがパンチ。こぼれ球を左に展開して、グラウンダーの落としをもらったアルデルヴァイレルトの強引なボレーはDFがブロック。焦るセインツは、77分にヴァイマンにカウンターを許し、かろうじてシュートミスに救われます。残り時間は、10分しかありません。
しかし、セインツはここから勝利への執念を見せました。82分、後半になって初めて、アウェイチームが左サイドを攻略します。縦パスを受けてDFに競り勝ったのは、ここまで効果的なオーバーラップを仕掛けられなかった左SBバートランド。中に入ったペッレらをおとりに使い、その後ろのスペースに転がした彼のラストパスは最高でした。中央に走り込んだのは、イングランド代表で売出し中のSBナサニエル・クライン。強烈なシュートがグザンの右手を越えてサイドネットに刺さり、1-1、同点です。
追加タイム3分を入れた、最後の10分はイーブン。追いつかれたアストン・ヴィラは巻き返しを図ろうとラインを上げ、今度はセインツがカウンターで対抗。中盤でのせめぎ合いが続き、時計は90分を回ります。右サイドに出て、祈るようなクロスを再三入れたタディッチの奮闘及ばず、ゲームはドローのままタイムアップ。セインツにとっては「痛い」という形容詞が適切でしょう。サポーターの声援に応える選手たちの表情は能面のようで、失った勝ち点を悔いる気持ちが伝わってきました。
かえすがえすも、29分の縦パス1本に判断を誤り、アグボンラホルに抜かれてしまったGKフォースターのミスが残念です。一度飛び出しを躊躇したGKは、DFがついていたにも関わらず、なぜ再び前に出てしまったのでしょうか。ペッレのポストプレイを徹底的に狙ったアストン・ヴィラの守備がよかったので、ドローという結果には驚きませんが、カウンター以外の攻撃に迫力が感じられなかったヴィラゆえ、前半を0-0でたためていれば、セインツ優勢で試合を進められていたでしょう。
セインツについて、気になったことがもうひとつあります。スティーブン・デービス、ジェイ・ロドリゲス、ウォード=プラウズを欠いた彼らのベンチのオプションは、実質ジャック・コークのみ。79分にマネと代わったFWマユカは、今季のプレミアリーグに14分しか出ていない選手。ジャック・コークが入ったのは89分になってからで、それまでのセインツは、スタメンががんばり続けるしかありませんでした。攻撃的な選手がもう1~2枚ベンチにいれば、クーマン監督は不調だったシェーン・ロングをもっと早く代えたでしょう。早期に負傷者が復帰したうえで、夏の大量放出で蓄えた貯金をもう少し補強に使わなければ、年明けのサウサンプトンはプレミアリーグ4位から脱落しているのではないかと思います。リヴァプールやトッテナムよりも明確な攻撃のスタイルがあり、最後に追いつく粘り強さを見せつつも、不調の選手がひとりいただけで途端に停滞し、交代で修正できない。今季プレミアリーグにおける最大のダークホースであるセインツの、強さと脆さを両方感じたドローゲームでした。
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