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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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プレミアリーグ首位に立ったレスターと14位チェルシー、勝ち点差14は埋まるのか?

岡崎慎司のプレミアリーグ2点めは、バレーボールなら「ひとり時間差」、テニスならライジングショット、相撲界では今話題の「猫だまし」と表現するであろう不思議なシュートでした。シンプソンのシュートをGKエリオットが体に当てると、ボールはゴールの前に高く浮きます。ヘディングで勝とうと焦ったのか、小柄なストライカーはありえないタイミングでジャンプしてしまい、自身が着地したときにはボールはまだ空中。しかし、この明らかなミスにニューカッスルのムベンバは幻惑されてしまい動けず、ワンバウンドしたボールが岡崎の頭に当たってゴールに飛び込むラッキーゴール。レスターはこれで0-3とし、セント・ジェームズ・パークで望外の快勝を遂げました。

同時刻開催だったアーセナルが負けたために暫定2位となったレスターは、その2時間半後にマンチェスター・シティ敗戦の報を受けて、自分たちが順位表の頂点に立ったことを知ります。ラニエリ監督、ブラボー!失点20と毎週明るく殴り合いを演じているクラブが、1週でもプレミアリーグのトップに立っただけで、それは既に快挙、いや、「怪挙」でしょう。一方で、昨季プレミアリーグ王者のチェルシーは、スタンフォード・ブリッジでのノリッジ戦に1-0の辛勝。クリーンシートでの勝ち点3という結果はいいとしても、「あの強いチェルシー」に戻ったとはいえません。28対14。レスターがチェルシーの上に立つだけでもちょっとしたニュースなのに、プレミアリーグの1/3を消化した時点で両者の勝ち点がダブルスコアになるとは…。それぞれのゲームを簡単に振り返ってみましょう。

レスターは、ジェイミー・ヴァーディとウジョアの2トップがキレキレでした。前半終了間際にウジョアのスルーパスを受け、切り返しから右足を豪快に振り抜いたヴァーディは、プレミアリーグ10試合連続ゴールでファン・ニステルローイの記録に並びました。レコードホルダーだったマンチェスター・ユナイテッドのレジェンドは、ニューカッスル戦の前に「Records are there to be broken.. Go on @vardy7, all the best and good luck!(記録は破られるもの。続けてくれ、ヴァーディ、幸運を祈る)」という粋な賛辞をツイッターに残しており、次戦はそのマンチェスター・ユナイテッド戦という最高の舞台が用意されています。

相棒のウジョアも、62分にマフレズのクロスから今季プレミアリーグ初ゴールを決めており、こちらは日本代表FWと違ってツッコミ不要の完璧なヘッド。マフレズが球離れがよくなったレスターは、右サイドからの攻撃に厚みがあり、この好調はもうしばらく続きそうです。

チェルシーは、0-1で負けた前節のストーク戦にはなかったサイドからの速い崩しが戻ってきていました。10分に左サイドをえぐったアザールの折り返し、13分のCKでテリーが狙ったラボーナは、いずれも相手をのんでかかっているからこそできるプレイ。25分にセスクのスルーパスから左を走ったペドロが中に入れ、ジエゴ・コスタがボレーで合わせた攻撃は、こちらが先制のシーンでもおかしくありませんでした。一方で、マティッチが本来の動きを見せつつある守備は、まだ本調子とはいえないようです。復帰したイヴァノヴィッチに致命的なミスはなかったものの、マッチアップしたブレイディに手こずっており、15分にブレイディのグラウンダーをムボカニにワントラップボレーで狙われたシーンは、CBがストライカーを離し過ぎる悪癖が残っていました。

42分に決定的なシュートをルディの足に阻まれたジエゴ・コスタに決勝ゴールが生まれたのは、64分でした。FKからのリスタートで、DFラインの裏に走ったジエゴ・コスタとペドロをめざとく見つけたセスクのファインプレー。浮き球の縦パスを受けて、右隅にコントロールしたスペイン代表のストライカーには余裕がありました。セスクが視野の広いゲームメイクで周囲を動かし続けたこと、アザールとペドロにアグレッシブな動きが増えたこと、そして決勝点のエースがいいシュートを再三放っていたことがこの試合の収穫でしょう。とはいえ、ノリッジが「昨季プレミアリーグ王者とのアウェイ戦」だからか、受けにまわっていたのは割り引かないといけません。少なくとも次節、敵地のトッテナム戦での勝利を見届けるまでは、彼らの復活について白黒を語るのは保留にしたいと思います。

モウリーニョ監督はこの勝利が相当うれしかったのか、38分にゴール前で倒されたジエゴ・コスタに対するジャッジに感情的になることなく、プレミアリーグ4位が可能かどうかについて、ジョークを交えて語りました。「4位はまだ“ミッション・インポッシブル”ではない。タイトルについては、“ミッション・インポッシブル”だといわざるをえない。トム・クルーズなら可能だろうけどね」。私も、当該シリーズにおいてトム・クルーズの失敗を見たことがないので、チェルシーの監督に同意なのですが、数字を見るとプレミアリーグ4位も相当厳しいミッションです。過去5シーズンの4位チームの平均勝ち点は72。チェルシーがこれからの25試合を、優勝した昨季と同じ16勝6分3敗で走り抜けたとしても68にしかならず、相当なハイペースが求められています。対して現在首位のレスターは、12勝8分5敗でちょうど72。どちらが現実的な数字かといえば、後者ではないでしょうか。

マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、エヴァートン、リヴァプール、マンチェスター・シティと戦う怖ろしい年末が待っているレスターと、トッテナムとマン・ユナイテッドは残しているものの、プレミアリーグ降格候補とのホームゲームが多いチェルシー。2016年を迎えるとき、両者の差はどこまで詰まっているでしょうか。12月14日の直接対決でチェルシーが敗れ、レスターばかりかトッテナムやリヴァプールにも突き放されることになれば、トム・クルーズでも「ソーリー」と肩を落とすのではないかと思います。緊張感の高い年末の戦いに注目しましょう。

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“プレミアリーグ首位に立ったレスターと14位チェルシー、勝ち点差14は埋まるのか?” への3件のフィードバック

  1. プレミアリーグ大好き! より:

    とりあえずBBCでアザールからきちんとモウリーニョとの確執否定、話し合いで自ら望んで10番の位置を希望し、そこで起用されたこと、今季駄目でも来季以降タイトル取りたい発言がきてよかったです。もともと確執云々は誤報だと思っていたので、こうして出てようやく間違いを拡散していた諸メディアもトーンを少しは変えるかとおもいます。

    それとは別に正直毎週末が最近は恐怖になっていたので(笑)勝ってホッとしました。奇策にも見えたサイドバックケネディという采配も当たったと思います。まだまだとても楽観はできませんが、逆に別に勝てなかったからと過剰に悲観せずここまで来たなら腰をすえて応援を送りつづけるのみと腹をくくってます。

  2. ぐーなー より:

    どこかのサイトで見ましたがちょうど一年前、チェルシーが首位、レスターが最下位だったそうですね。まさか一年後こうなるとは…

    チェルシーの不振は一過性のものだとは思いますがここまで長く続くと心配ですね。

    何より昨シーズンの後半戦から今シーズンのレスターはあっぱれです!
    ただスタメン固定&強豪戦を残しているレスターが今シーズンどこまで踏ん張れるか、見物です。

  3. makoto より:

    プレミアリーグ大好き!さん>
    負けが込むとムードが悪くなるのは、どんなチームでもあることなので、確執とまでいうかはともかく、一時期はロッカールームの緊張感が高かったのは事実なのではないかと思います(一般社会でも、営業業績が悪い部署は雰囲気も悪くなりがちですしね)。今回のアザールのコメントは具体的だったので、おそらくいいコミュニケーションがあって状況は改善しているのでしょう。勝利が続けば、選手もより積極的になり、いい意味での遊びも増えてくるのではないかと思います。

    ぐーなーさん>
    びっくりですよね。年末に強豪対決が続き、日程もタイトになるレスターは、今のレギュラー固定運用では息切れ必至でしょう。それを考えると、ウジョアがゴールを決めたのは大きいと思います。

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