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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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【Chelsea×Watford】ホームでドロー発進…ヒディンク新監督がもたらしたもの、失うもの

プレミアリーグ14試合出場でたった3ゴールだったジエゴ・コスタが2発決めたのはよかったのですが、いずれもウィリアンの素晴らしいキックからだったのは今までどおり。マティッチが絶対にやってはいけないハンドでPKをとられ、逆にアザールが倒されて得たPKをオスカルが足をスリップさせて外してしまいました。ヒディンク監督の初陣は、何ともちぐはぐな印象は拭えませんが、ホームでドローという結果に対する評価は別として、今後につながる収穫はあったのではないでしょうか。プレミアリーグ18節、スタンフォード・ブリッジに迎えたのはワトフォードです。11月末からプレミアリーグ4連勝、現在7位と絶好調の昇格クラブは、ここまでの21ゴールのうち、イガロが12発、ディーニー5発。この2人をケアすれば、後ろの選手はさほど怖くないクラブなのですが、昨季の堅守をどこかに置き忘れてしまったチェルシーは、見事に2人にやられてしまいました。

指揮官不在のなかで、ヒールパスやラボーナを駆使した遊び心満載のサッカーを披露していた前節のサンダーランド戦は、選手たちにとって束の間のカタルシスだったのかもしれません。ヒディンク新監督の下、チェルシーは彼ららしいリアリティ重視のサッカーに戻っています。最終ラインは、序盤からイガロを持て余していました。15分に対応が遅れてイガロともつれ合って倒れたケーヒルには、レッドカードが出るのではないかと一瞬息を呑みました。19分にもイガロが左サイドから仕掛け、テリーとケーヒルを一気にごぼう抜き。クルトワがコースを塞ぎ、最後はテリーがクリアで逃げましたが、ワトフォードのほうに先制点の匂いがします。

しかし34分、先制したのはチェルシー。右から入れたウィリアンのCKは、ファーで待ち構えていたテリーの頭にぴったり。ゴール前に落としたボールにジエゴ・コスタが反応し、強烈な左足ボレーがGKゴメスが守るゴールに突き刺さります。強かった頃のチェルシーなら、前半を1-0で折り返すのが常でしたが、リードは7分しか続きませんでした。41分、ワトソンのCKは、さほど速くはなかったのですが、フェイスガードの死角に入ったのか目測を誤ったのか、マティッチがはっきり手で触ってしまい、レフェリーは迷わずPKスポットを指さします。ディーニーのキックはクルトワの動きの逆をとるゴール右隅。それでも前半1-1なら、よくあるゲームのひとつです。

ヒディンク監督は、守備を落ち着かせたかったのか、ハーフタイムにセスクを下げてミケル。後半開始直後はチェルシーの時間でしたが、徐々にワトフォードが盛り返し、55分にはホセ・ホレバスのクロスからカプェがきわどいシュートを2発。ペナルティエリア周辺での寄せが遅いのは、今季のチェルシーの失点が多い理由のひとつですが、この流れでアウェイのワトフォードに勝ち越しゴールが決まります。56分、フラドのパスを中央で受けて、左に流れながらイガロがシュート。ケーヒルは、イガロのドリブルにもっと詰めなければいけませんでした。CBの足に当たったシュートに逆に動いたクルトワは弾ききれず、ゴールイン。スタンフォード・ブリッジで、チェルシーは1点を追う展開を強いられます。

この苦境からチームを救ったのはウィリアンでした。右サイドから最終ラインの裏に出した素晴らしいラストパスは、そのスペースを狙っていたジエゴ・コスタにぴたりと合い、GKのポジションを見ながら左隅を狙ったエースのシュートがきれいにサイドネットに収まります。75分、ペドロに代わってアザール登場。勝ち点3を奪うべく、チェルシーが攻勢に入ります。ピッチに入って3分後、アザールが大きなチャンスをつかみました。左からペナルティエリアに侵入したところで、ベーラミに倒されPK。ゴール裏のファンが逆転を確信したキックは、オスカルが足を滑らせてしまい、無情にもクロスバーの上を越えていきます。

ラスト10分、チェルシーはピッチを支配することができず、勝ち点3への希望は遠のいていきます。87分、ワトフォードにビッグチャンス。左サイドからイガロがペナルティエリアに侵入し、集まったチェルシー守備陣を翻弄して放ったシュートはケーヒルが身を挺してブロック。こぼれ球を狙ったディーニーの一発も決まりません。最悪の結果は回避したものの、チェルシーは最後までこの2人に苦労させられました。追加タイム、ミケルのミドルが右に外れて間もなくタイムアップ。チェルシーにPK失敗はありましたが、2-2のドローという結果は妥当でしょう。

最終ラインの裏を狙う攻撃や、イヴァノヴィッチやペドロがペナルティエリアの脇をえぐって速いグラウンダーを入れる崩しは、今季プレミアリーグで不振に陥っていた頃のチェルシーにはなかったもので、攻撃のアイデアが増えたのはヒディンク監督就任の効果でしょう。ジエゴ・コスタはやりやすそうにプレイしており、彼が結果を出したのが、今後につながる最大の収穫だと思います。

一方で、守備は相変わらず不安定です。マティッチが軽率に手でボールをはたいたプレイが極上のクリスマスプレゼントとなってしまい、テリーとケーヒルは、速いストライカーに対する不安を露呈しました。昨シーズンまでの堅守は、モウリーニョ監督ならではの見事な組織構築とマネジメントによるものです。対するヒディンク監督は、引いてカウンターではなく、前で奪って速く攻めるスタイルを追求していくのだと思われますが、それは同時に、ペナルティエリア付近のスペースを徹底的につぶすプレミアリーグ王者の凄みを手離すことなのかもしれず、失点が目に見えて減るまでには時間が必要でしょう。

とはいえ、プレミアリーグは新生チェルシーの熟成を待ってくれません。年末年始は、マンチェスター・ユナイテッド、クリスタル・パレスと厳しいアウェイ戦が続きます。チェルシーは、マルシアル、デパイ、ザハ、パンチュンといった速いアタッカーを止めきれるでしょうか。ここで連敗となると、いよいよ上位進出が難しくなります。

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