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【Chelsea×Leicester】カンテがすべてではないはず…レスターの守備が脆弱になった理由を探る。

ホームは2勝2分、アウェイは3戦全敗。今季のレスターは、プレミアリーグ7節まで敵地でまったく勝てず、リヴァプ―ルとマンチェスター・ユナイテッドには4失点惨敗でした。プレミアリーグを制覇した昨季とはまるで別なチームになってしまったラニエリ監督のチームは、カンテの移籍が痛いといわれておりますが、それにしても失点が多すぎます。前線、中盤、SB、CB…守備崩壊の理由はどこに潜んでいるのでしょうか。彼らの低迷の理由を探る場として、カンテのプレイを見ながらチェックできるこの試合はうってつけの一戦です。

スタンフォード・ブリッジ、チェルシーVSレスター。コンテ監督は、本日も3バックをチョイスしました。最終ラインにアスピリクエタ、ダヴィド・ルイス、ケーヒル。両翼にマルコス・アロンソとヴィクター・モーゼスが入り、マティッチとカンテがセントラルMFです。前線にはジエゴ・コスタ、アザール、ペドロ。3-4-3の布陣はミスが多いCBが不安ですが、ヴァーディとアーメド・ムサの2トップはホームチームを混乱させることができるでしょうか。岡崎慎司はベンチ外。イスラム・スリマニとマフレズを控えに置いたラニエリ監督は、シュルップ、アマーティ、オルブライトン、ドリンクウォーターを中盤に並べました。

開始早々、CBのケーヒルがドリブルで持ち込み、ジエゴ・コスタのダイレクトパスからアザールが裏を狙うペップのチームのようなアタックがありました。アザールは、プレミアリーグMVPに選ばれた2014-15シーズンの輝きを取り戻しつつあり、ウェズ・モーガンはドリブルに手を焼いています。先制までにジエゴ・コスタがダイレクトパスでサイドの選手を走らせるシーンが3回ありましたが、チェルシーのストライカーの素晴らしいパスセンスよりも、カンテの後釜のアマーティとドリンクウォーターが縦パスを簡単に許していることのほうが気になります。7分、CKをニアにいたマティッチがヒールで流すと、ジエゴ・コスタが完全にフリー。コースよりも強さを選んだシュートは、シュマイケルは触るのが精一杯でした。いきなり1-0。ゴール前でマークを外すことがなかった昨季のレスターでは、考えられない失点です。

13分にはアザールに縦パスが入り、ダイレクトパス一発でマルコス・アロンソが抜け出すと、危険なクロスがファーサイドへ。サイドを破られるシーンが格段に増えたのも、レスターの守備で気になることのひとつです。昨季の右サイドはマフレズの脅威で相手のオーバーラップを抑え、左は運動量の多いオルブライトンとフクスが中央に入れさせないようにしっかりチェックしていました。チェルシーの圧倒的なポゼッションは予想通りですが、レスターは攻守ともに意図が見えません。19分、中盤のカンテからの絶妙な浮き球で、裏に飛び出したアザールがフリー。難しい体勢からのボレーはうまくミートせず、シュマイケルがキャッチしますが、「レスターは、やっぱりカンテがいないのが大きいのではないか」といわれれば、返す言葉はありません。

28分、速い楔が中央のアザールに入ると、フートが後ろから倒してしまいイエローカード。FK職人ダヴィド・ルイスが蹴った落ちるボールは、惜しくも左のポストに当たって2点めはなりません。レスターの中盤の4人はポジションが低すぎ、マティッチは自由に縦のボールを入れています。33分の2点めは、久しぶりに前線からプレスをかけたために布陣が縦に伸びてしまい、マティッチに最前線への縦パスを通されたことが失点につながってしまいました。ペドロの手前でルイス・エルナンデスとフートがインターセプトしようとして交錯し、倒れたペドロがつま先で触ってアザールに渡すと、レスター守備陣は誰もチェックにいけず。10番は悠々とシュマイケルをかわし、無人のゴールに流し込みました。前半は2-0、枠内にシュートが打てないレスターは、1点を返すのも難しそうです。

中盤のせめぎ合いが続いた後半の立ち上がり。2点を追いかけるレスターは、52分にドリンクウォーターが最前線のオルブライトンに縦パスを通し、ようやくきわどいシュートがバーのすぐ上を越えていきます。ところが57分にカウンターから決定機をつかんだのは、チェルシーです。左サイドからドリブルで上がって、フリーで走り込んだヴィクター・モーゼスにラストパスを通したのは、何とカンテです。シュートはシュマイケルのビッグセーブに阻まれましたが、カンテの攻撃センスの高さをあらためて感じさせられました。しかし、これはレスターがやりたかった攻撃でしょう。ジエゴ・コスタ、アザール、マルコス・アロンソらが仕掛ける青いユニフォームのカウンターは、昨季のプレミアリーグを制したサッカーを再現しているかのようです。

64分、オルブライトンの速いクロスをダヴィド・ルイスがかろうじて左足でカット。チェルシーがいちばん危なかったシーンは、ゴールポストに救われました。ラニエリ監督が、イスラム・スリマニとマフレズの投入を67分まで引っ張ったのは、ホームで必勝を期すチャンピオンズリーグのコペンハーゲン戦が火曜日にあったからでしょう。先の試合のことを考えなくてはならなくなったのも、昨季のレスターにはなかったことです。コンテ監督のほうは、ペドロをチャロバー。勝ちを確信したのか、プレミアリーグ2試合めの選手を残り20分以上あるタイミングで入れてきました。73分、右からのグラウンダーをレスターの選手がカットしたところに走り込んだのは、これもカンテ。ノーマークで思い切りよく放った右足のシュートは、DFの足に当たってCKとなります。

マティッチがするすると上がり、左に流れながら放った78分のシュートも、ミドルレンジをきっちり埋めていた昨季のレスターなら打たせていなかったはずです。80分、チェルシーの3点めは若手のスーパープレーから生まれました。ヴィクター・モーゼスのパスをヒールでゴール前に落としたチャロバーのワンツーは、完璧なボールでした。GKを見る余裕があったモーゼスが足元を抜いたシュートに、シュマイケルはノーチャンス。先を見据えたコンテ監督は、ロフタス=チークとプレミアリーグデビューのオラ・アイナという20歳コンビをピッチに送り出します。ジェイミー・ヴァーディは何もできず、レスターはプレミアリーグのアウェイゲームを4連敗。今季になって生じた守備の綻びは、この日も繕うことができませんでした。

昨季王者の課題がすべて出尽くしたような完敗。前線からのプレスがかからないためマティッチに自由に動かれ、中盤が低く構えているにも関わらず、ジエゴ・コスタやアザールに簡単に楔を入れられてしまいました。前線の選手に時間をかけずにサイドにさばかれれば、MFのカバーリングを得られないSBは速いドリブラーと1対1の勝負となり、一気に苦しくなります。前線と中盤が連動したプレスと、縦パスへのチェックを徹底させなければ、これから当たるハリー・ケイン、サロモン・ロンドン、イガロにもやられてしまうでしょう。開幕早々のアーセナル戦で負傷してしまった本来のカンテの代役であるナンパリス・メンディの復帰に期待を託しつつも、まずはヴァーディの相棒となるスリマニやムサの守り方を修正し、中央の選手にはハードなチェックを求めなければなりません。これ以上負けが込むと、レスターの目標は「優勝の翌シーズンに降格というプレミアリーグ初の怪挙を回避すること」になってしまいます。

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“【Chelsea×Leicester】カンテがすべてではないはず…レスターの守備が脆弱になった理由を探る。” への3件のフィードバック

  1. へんだーそん より:

    降格!!!?
    ゾクッとしますね。

    ストークやウエストハムよりも状態は悪いのでしょうか…

  2. チェルサポ 一男太郎 より:

    チェルシーが良かったのもあるが、レスターも悪かったですね。
    しかしコスタは最高です。8試合で7得点ですからね。
    レスターはCLはトーナメント進出できそうですが、プレミアの方はヤバイですね。

  3. makoto より:

    ハル、レスター戦と続いたチェルシーのシステムに関してはどう思われますか?

    —–
    へんだーそんさん>
    ホームでは負けておらず、ストークやウェストハムよりはいいとは思いますが、あちらは改善余地が多く、レスターは後ろを立て直す手立てが少ないのが厳しいです。モーガンとフートが不振ですので…。

    チェルサポ 一男太郎さん>
    レスターは中盤の守備が厳しすぎました。選手のメンタルが落ちれば、プレミアリーグ残留争い突入も充分ありえると思います。

    Blueさん>
    アザールとペドロが活かせるので、おもしろいと思います。問題は、3-4-3を見越した補強をしていないため、アウトサイドの層が薄いことではないでしょうか。こうなると、ベルトラン・トラオレとケネディのいずれかでも残しておきたかったですね。

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