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【Burnley×MAN.CITY】緻密な戦術でアウェイ強者のペップと、個人力担保のモウリーニョの違いを見た!

美しいイングランドの秋空の下、のどかな雰囲気に包まれたターフ・ムーアにマンチェスター・シティが登場しました。プレミアリーグ13節、バーンリーとの一戦は、チャンピオンズリーグで遠征したメンヘングラートバッハから帰ってきて2日半というタイトなスケジュール。プレミアリーグにはときどきありますが、何もこの試合をランチタイムキックオフにしなくてもと同情するゲームです。ペップ・グアルディオラ監督とモウリーニョ監督は、スペイン時代のライバルであり、今季就任の新監督であり、同じマンチェスターのクラブを率いるマネージャーとして何かと比較されますが、片やは首位と1差で優勝争い、もう一方はプレミアリーグ6位に低迷中です。しかし、上位にいるペップのチームが圧倒的に完成度が高いかといえば、必ずしもそうではないでしょう。

両者とも試行錯誤中、発展途上なのですが、最も大きな違いはメンタルの状態なのではないでしょうか。マン・シティの多くの選手がペップのコンセプトや手法に感服し、理解が進んでいるのに対して、モウリーニョ監督のチームのほうは過半の選手に迷いや戸惑いが感じられます。試合によってはぎこちない時間帯もまだまだ多いマンチェスター・シティですが、ペジェグリーニ時代から大きく変わったなと思うのは、プレミアリーグ12節までで5勝1敗とアウェイを苦にしなくなったことと、主力選手を外してもそれなりのクオリティで戦えるようになったことです。好調だったキャリックが不在のホームゲームで先制され、追いつくのが精一杯だったマン・ユナイテッドと、デブライネ、ダヴィド・シルヴァ、ジョン・ストーンズを先発から外した試合で1点ビハインドの展開からひっくり返したマン・シティを観て、しぶとくなったライバルにあらためて怖れを抱きました。

さて、そのバーンリー戦です。コンパニがまたも負傷離脱となったアウェイチームの4バックは、サニャ、コラロフ、オタメンディ、クリシー。昨季は先発するとチームの得点力を落としていたフェルナンドが中央に配され、調子が下降気味だったフェルナンジーニョと、今季プレミアリーグは2試合めのヤヤ・トゥレが中盤にいます。ノリート、スターリング、アグエロと前線にはレギュラーが揃っているものの、真ん中から後ろは、1年前なら勝ち点を落としていてもおかしくないメンバーです。バーンリーが先制したのは14分。GKロビンソンが自陣からFKを最前線に蹴り込み、競ったボールをボックスの外にいたマーニーがズドンという、いかにもイングランドテイストなゴール。マン・シティにとっては嫌なサッカー、嫌な展開です。アウェイで内弁慶になる昨年までのチームなら、CLでの疲労、主力不在、1点のビハインドと3点セットが揃えば、いいところなくハーフタイムを迎えていたかもしれません。バーンリーは前線にロングボールを蹴ってくるので、前線からの激しいプレスからショートカウンターという得意な形は望むべくもありません。

しかし、ここからマンチェスター・シティは、ニューモデルの彼ららしいフレキシビリティを発揮します。蹴ってくる相手に対して、ハーフライン手前でボールを奪えるように陣形を整え、奪ったら速く、直線的に前線に展開。リードしているときに使うカウンター主体のプランBに近い戦い方です。司令塔役を担ったヤヤ・トゥレは、ペップによって変わりました。ボールを受けてから素早く前に出す彼のスピーディなプレイがチームのリズムを創り、バーンリーは徐々に追い込まれます。新監督になってから自信たっぷりにプレイするようになったスターリングも効いていたのですが、大きかったのはノリートの存在です。彼が誰とでも連携できるのは、ポジショニングが常に的確だからでしょう。パサーにとって、入ってきてほしいところに必ず走り込むアタッカーはありがたい存在です。

象徴的だったのは、35分からの3回のアタック。サニャからパスをもらったヤヤ・トゥレがダイレクトでノリートにつなぎ、リターンをもらってシュートを放つと、1分後には中央にいたヤヤが、ボールを受けるや否やスターリングにスルーパス。42番の早い判断が功を奏し、余裕があったスターリングは走り込んできたノリートに完璧なタイミングで合わせますが、シュートはDFにカットされました。この直後、CKのこぼれ球がアグエロの足元に転がり、1-1。同点ゴールは多分に運に恵まれたものでしたが、直前からの緻密で合理的なアタックが呼び込んだ1点でした。39分にコラロフからパスを受けたヤヤ・トゥレは、今までならドリブルを始めていたでしょう。しかし、この日の彼は違いました。前線でマークを外していたアグエロにすかさずフィード。エースのミドルはロビンソンのビッグセーブに阻まれましたが、14本のシュートを打ったアウェイチームが、後半どこかで逆転するだろうと思わせる迫力のある5分間でした。

バーンリーにとってアンラッキーだったのは、40分からマーニーとグドムンドソンが立て続けにリタイアしてしまったことです。メンバーが変わった隙を突いて、ペップは後半頭からラッシュをかけてくるはずと思いながら最初の10分を注視していたのですが、ホームチームの入りは悪くありません。51分、ノリートのポストプレーからヤヤ・トゥレが左足ミドル。今日のヤヤのプレイには贅肉がありません。このあたりから、マン・シティがピッチを制圧し始めました。プレイの大半が2タッチ以内。押している時間帯で追加点を奪いたいところです。ベン・ミーと接触したスターリングがレロイ・サネと代わりますが、これは予定の交代だと思われます。

60分、攻めていたアウェイチームが、ついに逆転ゴールを決めました。起点は、ダイレクトの素晴らしいヒールパスでフェルナンジーニョをフリーにしたヤヤ・トゥレ。ドリブルで進んだフェルナンジーニョがボックス左で空いていたノリートにスルーパスを通すと、折り返しを狙ったヤヤ・トゥレはブロックされますが、こぼれ球を拾ったフェルナンジーニョが右からゴールライン際まで持ち込みます。「グラウンダーをアグエロがプッシュした」というより、「フェルナンジーニョがアグエロに当てて決めた」といったほうがしっくりくる、ピンボールのような一撃。このゴールは、惚れ惚れするぐらいに全員のポジショニングが完璧でした。リードしたペップは、ボルシアMG戦でフル出場を果たしたデブライネとヘスス・ナバスの投入を終盤まで遅らせ、ダヴィド・シルヴァを完全休養させることに成功しました。後半、10人になったチャンピオンズリーグで、ノリート、フェルナンド、クリシーを使わず交代カード1枚で試合を終わらせたのは、この日のプレミアリーグをにらんでの采配だったのでしょう。

ホームではリヴァプール戦勝利を含む4勝1分2敗と滅法強いバーンリーは、ロングボールを放り込む嫌らしい攻撃で上位いじめを続けましたが、コラロフとオタメンディは終始落ち着いており、1-2のままタイムアップとなりました。マンチェスター・シティは、今季プレミアリーグでは初の逆転勝ち。内容は二の次、勝ち点3を奪ってタイトな日程をしのげればよかったペップにとっては、最初の失点と足を引きずっていたスターリングのアクシデント以外は、望み通りの一戦だったでしょう。

この翌日、60分以上の指揮官なき時間を過ごしたマンチェスター・ユナイテッドは、ウェストハムに1-1で引き分けました。国内リーグ戦でホーム4連続ドローは、36年ぶりの屈辱。私が最も残念に思ったのは、92分にムヒタリアンの速いパスを受けたルーニーが、ゴールラインまでえぐって折り返したシーンです。中にいたズラタン、ポグバ、フェライニは全員がゴール前1メートルに殺到してしまい、その後ろには広いスペースが空いていました。サー・アレックス・ファーガソン時代には、ひとりがニアに走り込んだら、後ろの選手はマイナスのボールを狙うべく引いてポジションを取るという約束ごとがありましたが、今のチームの攻撃はあまりにもフリーハンドです。的確なポジショニングでチャンスを創出するペップの緻密な攻撃戦術と、大まかな方向性はあれど多分に選手まかせなモウリーニョ監督の違いが、1-1と1-2の差だといっては大げさでしょうか。いや、先週末の試合の結果を当て込むのは乱暴かもしれませんが、「9勝3分1敗と5勝5分3敗の差」ではあるのではないかと思います。

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“【Burnley×MAN.CITY】緻密な戦術でアウェイ強者のペップと、個人力担保のモウリーニョの違いを見た!” への1件のコメント

  1. シティふぁん より:

    アウェイでの成績が良いですね
    CL後なので内容はともあれ勝てて良かったです
    確かにシティは完成度が高くありません
    今季最初頃の試合がまた見たいですね
    次よチェルシー戦がたのしみです

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