偏愛的プレミアリーグ見聞録

クロップ監督はベストメンバー、スールシャール監督はルーク・ショーとブランドン・ウィリアムズの併用という奇策に打って出ました。プレミアリーグ23節、アンフィールドで開催されるリヴァプールVSマンチェスター・ユナイテッド。前半戦で、唯一レッズに負けなかったチームは、アウェイでも勝ち点をゲットすることができるでしょうか。さっそく、両チームのメンバーをチェックしましょう。プレミアリーグ首位チームのベンチには、ファビーニョとマティプが戻ってきています。GKアリソン、DFアーノルド、ジョー・ゴメス、ファン・ダイク、ロバートソン。中盤はチェンバレン、ヘンダーソン、ワイナルドゥム、3トップにサラー、マネ、フィルミーノ。劣勢あるいはセーフティーリードで、南野拓実の出番があるかもしれません。

対するレッド・デヴィルズは、プレミアリーグ14ゴールのラシュフォードを欠いています。GKデ・ヘア、3バックにリンデロフ、マグワイア、ルーク・ショー。WBはワン＝ビサカとブランドン・ウィリアムズ、中盤センターはフレッジとマティッチ、ダニエル・ジェームズ、アンドレアス・ペレイラの前にマルシアルが張る3-4-2-1でしょうか。立ち上がりから押しているのは、アウェイチーム。執拗なプレスによって前で奪い、サイドから速攻を仕掛けるというプランでしょう。8分、アーノルドのFKで中央から上がったマネのヘッドは左にアウト。レッズの先制ゴールはセットピースでした。14分のCKでマグワイアに競り勝ち、完璧なヘディングシュートを叩き込んだのはファン・ダイク。18分の右からのFKは、マグワイアと絡みながらプッシュしたファン・ダイクのボレーが枠にいきません。

23分、フィルミーノのパスがフレッジに当たってマネの足元にこぼれると、デ・ヘアの前に躍り出た10番のドリブルはルーク・ショーがカット。25分にフィルミーノがコントロールショットを決めたシーンは、VARがデ・ヘアに対するファン・ダイクのチャージを取りました。2分後、ファン・ダイクのロングフィードが右のサラーに届きますが、グラウンダーに走り込んだフィルミーノのボレーは右に外れます。35分、スルーパスでデ・ヘアの前に抜け出したワイナルドゥムは、右のサイドネットに沈めた直後にオフサイドに気づきました。

39分、フレッジのパスを左で受けたマルシアルのチーム初シュートはニアにアウト。左からの浮き球にフリーで走り込んだワン＝ビサカが逆サイドに転がした決定機は、アンドレアス・ペレイラのつま先に当たったボールが外に流れてしまいます。45分のレッズの速攻は、サラーのラストパスで抜けたマネの左足シュートをデ・ヘアが足でブロック。前半のリヴァプールはオンターゲット2本、マン・ユナイテッドは1本というつぶし合いです。後半立ち上がりからレッズの猛攻がスタート。47分にロバートソンのグラウンダーをフリーで受けたサラーは、イージーなボレーをミスしてしまいました。

左から上がったフィルミーノの折り返しに反応したマネのボレーは高く浮き、偽9番の短いパスでフリーになったヘンダーソンの強烈な左足は、デ・ヘアがぎりぎりで触ってポストにヒット。プレミアリーグ首位チームが決め切れずにいる幸運を、マン・ユナイテッドは活かすことができるでしょうか。52分のチェンバレンのミドルは、デ・ヘアがキャッチ。57分、スローインをインターセプトしたフレッジがそのまま持ち込んで放ったシュートは、ニアに切れていきます。59分にアンドレアス・ペレイラとのワンツーでゴール前に出たマルシアルは、なぜ強く打ったのか。右隅を狙えばよかったボールは、アリソンの頭上に消えていきました。

63分、ワイナルドゥムが自陣からドリブルで上がってカウンター発動。マネにパスが出たとき、サラーとフィルミーノが有利なポジションにいたのですが、10番は強引に縦に持ち込み、左足のシュートをクロスに外してしまいます。クロップ監督は、66分にチェンバレンに代えてララナを投入。マルシアルとフレッジのミドルは、アリソンが冷静にさばいてリードを守りました。残り20分。スールシャール監督のベンチには、マタとグリーンウッドが控えています。2枚のカードを同時に切ったのは74分。アンドレアス・ペレイラとブランドン・ウィリアムズが下がり、4-3-1-2にシフトするようです。

82分、フィルミーノとマネが下がり、オリギとファビーニョ。1-0で畳みにいったクロップ監督の布陣は、サラーを最前線に残す4-2-3-1です。87分、ルーク・ショーに代わってジオゴ・ダロト。明らかに疲れているアーノルドのサイドは狙い目です。アンフィールドが絶叫したのは93分。アリソンのキックで抜け出したサラーが、ダニエル・ジェームズを背負ってボックスに侵入し、デ・ヘアの脇を抜きました。2-0で勝ったレッズはプレミアリーグ22戦21勝、連勝は13、クリーンシートは7試合連続となりました。

50分までに決着がついていたはずのゲーム。サラーの決定機逃しとデ・ヘアのビッグセーブで希望をつないだマンチェスター・ユナイテッドは、マルシアルが千載一遇のチャンスで力んでしまったのが痛恨でした。オンターゲット4本はすべてミドルシュート。奪われた直後の対応、サイドにおける連携、ロングフィードの質で劣るチームは、ノーミスで戦えなければ敗戦必至です。後ろを厚くしてWBのポジションを上げ、サイドからの速いアタックに活路を見出そうとしたスールシャール監督のプランは悪くなかったのですが、ヘンダーソン、ロバートソン、ファン・ダイク、ジョー・ゴメスの対応が的確で、2-0は妥当な結果でしょう。

マン・シティがホームで勝ち点を落とし、エンディディを欠いたレスターが崩れたため、レッズは残り16試合を10勝6敗で優勝という絶対的に有利なポジションに立ちました。マティプとファビーニョが復帰したチームに死角は見当たらず、キーマンの新たな負傷さえなければチャンピオンズリーグとの両立も問題ないでしょう。UEFAスーパーカップとクラブワールドカップを制した世界王者は、3冠か、4冠か、5冠制覇まであるのか。クロップ監督が築き上げた最強のスカッドの戦いぶりを、最後までしっかり見届けたいと思います。素晴らしい！（ヴィルジル・ファン・ダイク　写真著作者/Mehdi Bolourian）