偏愛的プレミアリーグ見聞録

負傷者続出のリヴァプールと、自信喪失のマンチェスター・ユナイテッド。プレミアリーグ3節の最後のゲームは、コンディションを崩して出遅れたチームの直接対決です。

ホームのテン・ハフ監督は、最終ラインにダロト、ヴァラン、リサンドロ・マルティネス、タイレル・マラシアを起用。中盤センターはエリクセンとマクトミネイ、2列めにエランガ、ブルーノ・フェルナンデス、サンチョ、ワントップにラシュフォードの4-2-3-1です。

対するクロップ監督は、最終ラインと中盤のやりくりを強いられています。GKアリソン、DFアーノルド、ジョー・ゴメス、ファン・ダイク、ロバートソン。中盤にはミルナー、ヘンダーソン、エリオット、フロントスリーにサラー、フィルミーノ、ルイス・ディアスという布陣です。

立ち上がりは、両者ともに相手のプレスを嫌がり、ロングフィードが飛び交う展開。4分にラインの裏に出たラシュフォードは、左足のシュートをファン・ダイクに止められました。フィルミーノの縦パスで、ミルナーがボックス左に入ったのは6分。シュートチャンスは、ヴァランがハードなチェックでつぶしています。

8分のエリクセンのFKは、壁にヒット。10分にマクトミネイの素晴らしい縦パスで、ブルーノ・フェルナンデスが前線にスプリント。ジョー・ゴメスと競った8番がスライディングで横に出すと、走り込んだエランガの前にはアリソンしかいません。枠に入れればOKだった決定的なショットは、右のポストに直撃！押しているホームチームは、最初のチャンスをものにできませんでした。

2度めのチャンスは15分。ラシュフォードが右に流れてキープし、逆サイドに展開した二次攻撃。エリクセンとのワンツーで縦に突破したエランガが中央に転がすと、冷静だったサンチョはキックフェイントでミルナーとアリソンの体勢を崩しました。ゴール左がガラ空きになり、イージーなシュートが決まって1-0。3試合連続でビハインドを背負ったレッズは、攻める姿勢を鮮明にしています。

18分、エリオットとのワンツーで中央に入ったルイス・ディアスのシュートは右にアウト。2分後、エリクセンの素晴らしいサイドチェンジが右のサンチョに通り、縦パスを受けたラシュフォードは、右足のシュートをジョー・ゴメスに阻まれました。25分、エリクセンが左サイドから直接狙ったFKは、決めるならここという完璧なコース。アリソンがぎりぎりで触り、CKに逃れました。

28分、ボックス脇から左足のアウトで浮かしたサラーのラストパスがヘンダーソンに通るも、ボレーはポストの右に逸れていきます。40分にアーノルドのグラウンダーがフィルミーノに通り、落としを受けたサラーが左足を振り抜きますが、リサンドロ・マルティネスがブロック。直後のCKをミルナーがヘッドで叩き、ブルーノのクリアがゴールに向かうも、胸に当てたリサンドロ・マルティネスが落ち着いてクリアしました。

前半のオンターゲットは1-0というデリケートなゲーム。マンチェスター・ユナイテッドの中盤センターは、CBの前のスペースをしっかり埋めています。ハーフタイムにエランガと代わったマルシアルは、ワントップをまかされるようです。

ポゼッション70%のアウェイチームは、後半も主導権をキープ。48分に右から2人抜いたアーノルドのクロスは味方に通らず、こぼれ球を叩いたエリオットのボレーもブロックされました。サインプレーのCKは、ボックス手前から放ったサラーのボレーが枠の上に浮いてしまいました。

53分、センターサークルにいたマルシアルが後方からのボールをキープし、左から中に絞ってきたラシュフォードに完璧なスルーパス。アリソンと1対1になった10番は、冷静にゴール左に突き刺しました。さらに2分後、CKの二次攻撃から、ブルーノがヘッドでゴール前に送ったボールをヴァランがジョー・ゴメスを背負ってキープ。落としをもらったラシュフォードのシュートは、アリソンが左に飛んでセーブしました。

クロップ監督は、59分にヘンダーソンに代えてファビーニョを投入。67分のCKをポストの左にいたファビーニョが頭で合わせると、ニアに飛んだボールはデ・ヘアががっちりキャッチしました。71分、サンチョが下がってフレッジ。73分にミルナーと代わったファビオ・カルヴァーリョは、クロップ監督が持っていた唯一の攻撃的なカードです。

76分、左から仕掛けたラシュフォードは、ジョー・ゴメスを強引に抜き去って強烈なシュート。アリソンの指先を越えたボールは、クロスバーすれすれを抜けていきます。ロバートソンのクロスをフィルミーノがプッシュした81分の決定機は、デ・ヘアがビッグセーブ。CKのこぼれ球を強打したカルヴァーリョのシュートも守護神がセーブしますが、浮いたボールを冷静にニアに収めたサラーのヘッドは、触れませんでした。

2-1となった85分、ロバートソンに代わってツィミカス。その1分後、テン・ハフ監督は3枚代えを敢行しました。ダロト、エリクセン、ラシュフォードが下がり、ファン・デ・ベーク、ワン＝ビサカ、ロナウド。追加タイムは、マルシアルがアリソンに1対1を止められたのが、唯一のトピックスでした。

マンチェスター・ユナイテッド、今季プレミアリーグ初勝利。エランガとエリクセンのワンツーで決まった先制点も、ヘンダーソンのトラップミスを拾ったマルシアルのスルーパスも見事でした。最終ラインは、この4枚が現状のベストでしょう。エリクセンとマクトミネイは、フィルミーノやエリオットが入ってくるスペースを消し、奪ったら前線を走らせて速攻という意思統一ができていました。

リヴァプールの敗因は、間延びしたラインではないでしょうか。奪われた直後にプレスがかからないシーンが多く、エリクセン、ブルーノ、マクトミネイが自由にパスを出す形を創られてしまいました。マティプかコナテが帰ってくれば、4バックは落ち着くのでしょうか。ハイプレスを仕掛けてくるチームに対して、ラインをうまくコントロールできなければ、今日のような失点を繰り返してしまうのではないかと思います。

チェルシー12位、マン・ユナイテッド14位、リヴァプール16位。補強が遅れたチームと、9人の負傷者を出したチームが下位であえいでいます。2強時代が続いたプレミアリーグは、これまでと違うバトルになるのでしょうか。3チームとも、次節はボトム10との対戦です。これ以上、勝ち点を落とすわけにはいきません。（ジェイドン・サンチョ　写真著作者/Ardfern）