偏愛的プレミアリーグ見聞録

年末のエミレーツは、0-2でウェストハムが完勝。2023年になってから1分2敗と、アーセナルはモイーズのチームに勝っていません。これだけを見ると、プレミアリーグ24節のロンドンスタジアムはホームチームが有利のようですが、FAカップ敗退から3連勝と立ち直ったガナーズに対して、ハマーズは直近の6試合は勝利なしです。

チャンピオンシップのブリストルと戦ったFAカップは、ホームで1-1の後、リプレイは1-0で敗戦。プレミアリーグはブライトン、シェフィールド・ユナイテッド、ボーンマスに3戦連続ドローで、前節のマンチェスター・ユナイテッド戦は3-0の完敗です。ルーカス・パケタの離脱、クドゥスのアフリカ行き、足首を痛めたボーウェンの停滞といったあたりが不振の要因でしょう。

敵地に乗り込んだアーセナルは、冨安健洋とジェズスがベンチからも外れています。GKラヤ、DFベン・ホワイト、サリバ、ガブリエウ、キヴィオル。MFデクラン・ライス、ウーデゴーア、カイ・ハヴェルツ、FWサカ、トロサール、マルティネッリ。開始2分、キヴィオルがクドゥスに奪われて始まったカウンターは、速い戻りでシュートを打たせずに終えています。

ハマーズはボーウェンのワントップで、クドゥスとベン・ジョンソンを左右に配しています。10分の右サイドのFKから、デクラン・ライスがクロスを入れると、カイ・ハヴェルツのヘッドは真上に浮いてしまいました。マルティネッリがつぶされた19分のカウンターは、ボーウェンのシュートをラヤがキャッチ。20分にサカが中央から放ったミドルは、エメルソンが足に当てました。

サカが右からクロスを入れ、フリーのトロサールのヘッドが枠を越えたのは22分。直後、右にまわったマルティネッリが縦に突破して折り返すと、トロサールのジャストミートのボレーはアレオラのビッグセーブに阻まれました。28分のウーデゴーアのミドルは、ソーチェクがかかとに当ててCK。マルティネッリは、いつになくドリブルを奪われるシーンが目立っています。

32分のデクランライスのCKは、サリバの頭にぴったり。前にいたベン・ホワイトを気にしたアレオラは下がれませんでした。0-1となってからもアーセナルが攻め続け、35分にキヴィオルのクロスを叩いたサカのヘッドは左に逸れていきます。ウーデゴーアが、ボックス右にサカを走らす縦のスルーパスを入れたのは37分。アレオラの脇を抜いたシュートは、ファーポストの外です。

押していたガナーズが、追加点のチャンスを得たのは38分。トロサールがラインの裏に落としたボールでアレオラの前に出たサカは、右にかわそうとして倒されました。ジャッジはイエローとPK。ほぼ真ん中に蹴ったサカは、今季プレミアリーグで9ゴールめです。44分の左からのFKも、デクラン・ライス。ニアに入ってヘッドでプッシュしたのは、ガブリエウでした。

追加タイム2分、カイ・ハヴェルツのパスを受けたウーデゴーアが左に流すと、トロサールの右足のコントロールショットが決まって0-4。ロンドンスタジアムは、騒然としています。前半のポゼッションは28対72、シュート数1対15、オンターゲットは0対7。後半を捨ててパブに向かったハマーズのサポーターは、2アシストの元キャプテンに悪態をついているのではないでしょうか。

弛緩した空気が流れる後半の立ち上がり。52分のクドゥスとベン・ジョンソンの連打は、いずれもブロックされています。マルティネッリが中央から右に流れるシーンが増えているのは、今後に向けてのお試しでしょうか。ウーデゴーアのパスをカイ・ハヴェルツが落とし、サカが左にまわり込んで打った58分の決定機は、アレオラがビッグセーブでしのいでいます。

5点めが決まったのは63分。ウーデゴーアの縦パスをボックス右で収めたサカが、ナイフ・アゲールをあっさりかわしてニアに叩き込みました。2分後、サカ、マルティネッリ、ベン・ホワイトとボックス右でつながり、SBが中央に流すと、ウーデゴーアとトロサールがお見合いしてチャンスは潰えた…かと思いきや、後ろから走ってきたデクラン・ライスが強烈なロングシュート！

バレーボールでいうところの時間差攻撃。前の2人が「オマエが打て」「いや、オマエが」とやってたところに後ろからズドンは、トリオのコントのようでもあります。0-6となり、67分にサカ、トロサール、デクラン・ライスがアウト。歩いてベンチに向かう41番に送られた拍手は、アウェイチームのサポーターだけでは実現しえないボリュームでした。

代わって入ったのはエンケティア、ネルソン、エルネニー。サブのガス抜きのような交代策は、勝負ありと記された書類にモイーズのハンコを迫っているようです。72分にウーデゴーアがゴールライン際から折り返すと、エルネニーのダイレクトショットはアレオラがキャッチ。77分には、マルティネッリとベン・ホワイトに代わって16歳のヌワネリとセドリクが入っています。

ガナーズは、6発で打ち止め。セットピースがいかに大事かをプレゼンする資料映像が出来上がりました。今季のセットピースから16発は、エヴァートンに3本差でTOP。PKから7発も、チェルシーと並んでリーグNo.1です。MVPは、1ゴール2アシストのデクラン・ライスか、シュート8本で2発のサカか。主力の出場時間を減らすことができた圧勝は、いろいろな面でポジティブです。

次節のバーンリー戦は、ジンチェンコ、ジェズス、冨安健洋が戻ってくる予定で、ポルトとのCLまでにファビオ・ヴィエイラも合流するでしょう。トロサールは絶好調。カイ・ハヴェルツも自信をもってプレイしています。プレミアリーグとチャンピオンズリーグの2冠を追う体制が整いつつあるアーセナル。3月末のペップとの決戦まで、無敗で駆け抜けられれば楽しみです。