2020.10.15 チームの話題(全体・他クラブ)
賛否両論、沸騰中!フットボールに変化をもたらす「Project Big Picture」に対するそれぞれの見解。
リヴァプールのオーナーであるフェンウェイグループが提案した「Project Big Picture」が、イングランド全土を巻き込む大論争となっています。現在20クラブのプレミアリーグを18に縮小し、自動昇格・降格は2クラブ。プレミアリーグ16位とチャンピオンシップの3~5位がプレーオフに参加し、3つめの枠を争うレギュレーションです。過密日程を緩和するという建前で、コミュニティシールドとリーグカップの廃止も盛り込まれています。
カップ戦がなくなれば、人気クラブとの対戦が減り、経済的な損失を被るイングリッシュフットボールリーグ(EFL:2部~4部相当)のクラブに対しては、2億5000万ポンドの補償金に加えて、プレミアリーグに入るテレビ放映権料の25%が継続的に支払われるというインセンティブを設定。FAにも損失補填として1億ポンドが用意され、「誰も損をせず、フットボール全体が繁栄するプラン」という建て付けになっています。
さて、ここからが本題です。現在、賛否両論が渦巻いている「Project Big Picture」は、誰が支持し、誰が懸念を示しているのでしょうか。「BBC」によると、最初に賛同の意を表したのは、EFLのリック・パリー会長です。発案したリヴァプールと、支持しているといわれるマンチェスター・ユナイテッドについて、「リーダーシップを発揮し、責任を果たしている私たちの素晴らしいクラブ」「彼らはピラミッドを気にかけてくれている」と大絶賛。「プレミアリーグの創立以来最大のアイデア」とまで誉めそやされると、「マージーサイドからいくら振り込まれました⁉」とツッコミを入れたくなります。
チャンピオンシップやリーグ1、リーグ2のクラブにしてみれば、ここまでの話に反対する理由は見当たりません。「BBC」によると、火曜日にミーティングを行った各カテゴリーのクラブのオーナーや経営者たちは、「ほぼ全会一致で賛成」と声を揃えているようです。バートン・アルビオンのジェズ・モクシーCEOは、「リーグ1は、全会一致だと思う」とコメント。「特定の面について懸念があったが、原則は非常に健全だ。歓迎されている」と語ったジリンガムのポール・スカリー会長は、「2億5000万ポンドで魂を売るわけではない。プレミアリーグが大きな役割を果たしているEFLとサッカーのピラミッドの将来の持続可能性について、前向きな結論に達すると期待している」と付け加えています。
「リーグ2では、おそらく24クラブのうち23クラブが賛成。ひとつだけ、興味深い問題を提起したクラブがあった」と証言したのは、レイトン・オリエントのナイジェス・トラヴィス会長。チャンピオンシップに所属するプレストン・ノースエンドのオーナー代表のひとりであるピーター・リズデイル氏も「投票こそなかったが、電話会議で反対意見は出なかった。元々がリークされた話だったため、各論を明確にしたい、しっかり議論を重ねたいという声はあるが、大まかな原則に反対はない」といっています。アクリントン・スタンリー、リンカーン、ウィンブルドンの代表が「全体像とサポートのレベルを正確に把握できていない」と慎重な姿勢を見せていますが、投票が行われれば「EFLは組織のトップもクラブも賛成」という着地になるのは間違いありません。
一方、反対にまわっているのは、プレミアリーグの関係者と英国政府です。彼らが問題にしているのは、「プレミアリーグにおける検討事項は、特別な投票権を付与されたビッグ6とエヴァートン、ウェストハム、サウサンプトンによって決定される。9クラブのうち6クラブの賛同があれば可決」という一項です。プレミアリーグは「ゲーム全体に悪影響を与える可能性がある」と対決する姿勢を鮮明にしており、デジタル・カルチャー・メディア・スポーツ省も「密室取引が準備されていることに驚き、失望した」とコメント。ボリス・ジョンソン首相のスポークスマンは、「このプランが施行されれば、サッカーの統治への信頼を損なう」と懸念を示しています。
「プランの当初の話し合いに関与していたが、その後撤退した」というのは、FA会長のグレッグ・クラーク氏。「改革は、クラブ、ファン、プレーヤーに利益をもたらすものでなければならない。特定のバランスシートだけを大事にすることはできない」と考え、議論の主目的が権力と富の集中に移行したタイミングで距離を置くようにしたそうです。
特別な権限を与えられる9つのクラブのなかで、反対にまわっているのはウェストハムです。ホームゲームが2試合削減され、国内カップの収益も得られなくなるクラブにとって、ビッグクラブだけで盛り上がるスーパーリーグ創設や欧州のテレビ放映権料の山分けといった話は、自分たちに利するものではありません。ビッグ6とその他のクラブの収益格差が広がるプランに乗っかるつもりはないという見解に、蚊帳の外とされた7つの中小クラブも追随しているといわれています。
最後に紹介する抵抗勢力は、火曜日に共同声明を発表したビッグ6のサポーターグループです。「プレミアリーグの競争力を確保しつつ、国技の一環として下部リーグが繁栄するためには、かなりのリソースが必要。われわれがサポートする6つのクラブは、『Project Big Picture』を推進していると伝えられているが、今回のプランまでサポートしているわけではないことを明確にしたい。大富豪である6人のオーナーに権力を集め、プレミアリーグの個々のクラブの投票を反映させる精神を捨てることに断固反対したい」。自分たちの利益が増えれば全体にもいい影響があるという資本家たちの論陣は、ハマーズと同じ目線で異を唱える顧客の理解を得られていないようです。
ビッグクラブとEFLが推進派で、政府、プレミアリーグ、FA、中小クラブ、サポーターが反対。プレミアリーグのクラブは「Project Big Picture」を拒否し、全クラブ参加の戦略レビューを行うと発表されましたが、発案者と支持者に次なる一手はあるのでしょうか。欧州の強豪がリーグ戦で優勝を争うステージに魅力を感じつつも、一連の議論のなかで私が最もしっくりくるのは、「フットボールの母国の未来を決めるのは、外国資本ではなくイギリス人であらねばならない」と主張するフランス人の言葉なのであります。
「この国の伝統を完全に無視することはできない。プロジェクトが外部のオーナーのものであるため、消極的かつ否定的なアプローチを生み出している。コロナウイルスの前から既に存在していた問題を解決する妥協点を見つけるためには、政府、FA、プレミアリーグから全体的な解決策が提示されなければならない」(アーセン・ヴェンゲル)
カップ戦がなくなれば、人気クラブとの対戦が減り、経済的な損失を被るイングリッシュフットボールリーグ(EFL:2部~4部相当)のクラブに対しては、2億5000万ポンドの補償金に加えて、プレミアリーグに入るテレビ放映権料の25%が継続的に支払われるというインセンティブを設定。FAにも損失補填として1億ポンドが用意され、「誰も損をせず、フットボール全体が繁栄するプラン」という建て付けになっています。
さて、ここからが本題です。現在、賛否両論が渦巻いている「Project Big Picture」は、誰が支持し、誰が懸念を示しているのでしょうか。「BBC」によると、最初に賛同の意を表したのは、EFLのリック・パリー会長です。発案したリヴァプールと、支持しているといわれるマンチェスター・ユナイテッドについて、「リーダーシップを発揮し、責任を果たしている私たちの素晴らしいクラブ」「彼らはピラミッドを気にかけてくれている」と大絶賛。「プレミアリーグの創立以来最大のアイデア」とまで誉めそやされると、「マージーサイドからいくら振り込まれました⁉」とツッコミを入れたくなります。
チャンピオンシップやリーグ1、リーグ2のクラブにしてみれば、ここまでの話に反対する理由は見当たりません。「BBC」によると、火曜日にミーティングを行った各カテゴリーのクラブのオーナーや経営者たちは、「ほぼ全会一致で賛成」と声を揃えているようです。バートン・アルビオンのジェズ・モクシーCEOは、「リーグ1は、全会一致だと思う」とコメント。「特定の面について懸念があったが、原則は非常に健全だ。歓迎されている」と語ったジリンガムのポール・スカリー会長は、「2億5000万ポンドで魂を売るわけではない。プレミアリーグが大きな役割を果たしているEFLとサッカーのピラミッドの将来の持続可能性について、前向きな結論に達すると期待している」と付け加えています。
「リーグ2では、おそらく24クラブのうち23クラブが賛成。ひとつだけ、興味深い問題を提起したクラブがあった」と証言したのは、レイトン・オリエントのナイジェス・トラヴィス会長。チャンピオンシップに所属するプレストン・ノースエンドのオーナー代表のひとりであるピーター・リズデイル氏も「投票こそなかったが、電話会議で反対意見は出なかった。元々がリークされた話だったため、各論を明確にしたい、しっかり議論を重ねたいという声はあるが、大まかな原則に反対はない」といっています。アクリントン・スタンリー、リンカーン、ウィンブルドンの代表が「全体像とサポートのレベルを正確に把握できていない」と慎重な姿勢を見せていますが、投票が行われれば「EFLは組織のトップもクラブも賛成」という着地になるのは間違いありません。
一方、反対にまわっているのは、プレミアリーグの関係者と英国政府です。彼らが問題にしているのは、「プレミアリーグにおける検討事項は、特別な投票権を付与されたビッグ6とエヴァートン、ウェストハム、サウサンプトンによって決定される。9クラブのうち6クラブの賛同があれば可決」という一項です。プレミアリーグは「ゲーム全体に悪影響を与える可能性がある」と対決する姿勢を鮮明にしており、デジタル・カルチャー・メディア・スポーツ省も「密室取引が準備されていることに驚き、失望した」とコメント。ボリス・ジョンソン首相のスポークスマンは、「このプランが施行されれば、サッカーの統治への信頼を損なう」と懸念を示しています。
「プランの当初の話し合いに関与していたが、その後撤退した」というのは、FA会長のグレッグ・クラーク氏。「改革は、クラブ、ファン、プレーヤーに利益をもたらすものでなければならない。特定のバランスシートだけを大事にすることはできない」と考え、議論の主目的が権力と富の集中に移行したタイミングで距離を置くようにしたそうです。
特別な権限を与えられる9つのクラブのなかで、反対にまわっているのはウェストハムです。ホームゲームが2試合削減され、国内カップの収益も得られなくなるクラブにとって、ビッグクラブだけで盛り上がるスーパーリーグ創設や欧州のテレビ放映権料の山分けといった話は、自分たちに利するものではありません。ビッグ6とその他のクラブの収益格差が広がるプランに乗っかるつもりはないという見解に、蚊帳の外とされた7つの中小クラブも追随しているといわれています。
最後に紹介する抵抗勢力は、火曜日に共同声明を発表したビッグ6のサポーターグループです。「プレミアリーグの競争力を確保しつつ、国技の一環として下部リーグが繁栄するためには、かなりのリソースが必要。われわれがサポートする6つのクラブは、『Project Big Picture』を推進していると伝えられているが、今回のプランまでサポートしているわけではないことを明確にしたい。大富豪である6人のオーナーに権力を集め、プレミアリーグの個々のクラブの投票を反映させる精神を捨てることに断固反対したい」。自分たちの利益が増えれば全体にもいい影響があるという資本家たちの論陣は、ハマーズと同じ目線で異を唱える顧客の理解を得られていないようです。
ビッグクラブとEFLが推進派で、政府、プレミアリーグ、FA、中小クラブ、サポーターが反対。プレミアリーグのクラブは「Project Big Picture」を拒否し、全クラブ参加の戦略レビューを行うと発表されましたが、発案者と支持者に次なる一手はあるのでしょうか。欧州の強豪がリーグ戦で優勝を争うステージに魅力を感じつつも、一連の議論のなかで私が最もしっくりくるのは、「フットボールの母国の未来を決めるのは、外国資本ではなくイギリス人であらねばならない」と主張するフランス人の言葉なのであります。
「この国の伝統を完全に無視することはできない。プロジェクトが外部のオーナーのものであるため、消極的かつ否定的なアプローチを生み出している。コロナウイルスの前から既に存在していた問題を解決する妥協点を見つけるためには、政府、FA、プレミアリーグから全体的な解決策が提示されなければならない」(アーセン・ヴェンゲル)
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