偏愛的プレミアリーグ見聞録

まさか2試合連続で、3-0から追いつかれるのではないかとヒヤヒヤしながら戦況を見守りました。プレミアリーグ30節、デヴィッド・モイーズとモチベーションMAXの選手たちが、TOP4返り咲きをめざして戦ったウルヴスVSウェストハムのお話です。開始6分、われらがジェシー・リンガードが自陣からの素晴らしいドリブル突破でルイ・パトリシオと1対1になり、左足のシュートを決めてあっさり先制。14分には、クレスウェルのロングフィードを追ったリンガードが巧みなタッチでセメドをかわし、ボックス左に走り込んでボールを拾ったマスアクの折り返しを、ニアにいたフォルナルスが右隅に流し込みました。

37分の3点めも、仕掛け人はわれらがリンガード。波状攻撃を受けていたハマーズ守備陣がゴール前の混戦をしのぎ、ソーチェクがヘッドでリンガードにつなぐと、4人をドリブルでぶっちぎった11番が斜め前を走っていたボーウェンにラストパス。左に流れながら放った左足のフィニッシュがニアポストをかすめてネットに突き刺さり、勝負は決まりかと思われました。ところが、珍しくポゼッションを取っていたウルヴスがここから逆襲。44分のアダマ・トラオレのドリブルは、リンガードに本家はオレだと主張するような長距離突破でした。

クリアを拾ったのは、自陣のバイタルエリア。目の前にはツォウファルがおり、ユースの選手ならそんなところから無理やりドリブルするなと叱られるシーンです。SBをワンタッチでかわした馬車馬は、中央からフォローに入ったノーブルのスライディングもぶっちぎり、左サイドをスプリント。戻ってきたツォウファルを左足のワンタッチで再度抜き去ると、中央のデンドンケルに完璧なクロスを合わせました。ヘディングが決まって1-3。68分にペドロ・ネトの美しいラストパスをファビオ・シウヴァがボックス右に持ち込み、左隅に収めて2-3としたのですが、ウルヴスの逆襲はここまででした。

タイムアップの瞬間、「よっしゃ！」と叫んでしまったのですが、冷静になったらイーストロンドンのクラブを応援しているわけではなかったことに気づきました。ましてや、指揮官はデヴィッド・モイーズ。CL出場権をゲットしたら、「何でウチでは7位やねん！」とツッコミを入れてしまいそうです。プレミアリーグ30節という佳境で、ビッグ6以外のクラブが2つもTOP4にいるという椿事に酔っぱらっているだけでしょう。2-3で勝ったハマーズは、WBAに5失点を喫したチェルシーをかわして4位に浮上しています。

3位レスター、4位ハマーズという並びは、誰も想像できなかったでしょう。ブレンダン・ロジャースのチームは、ビッグ6相手に5勝1分3敗。1点差勝利が10もあるしぶといモイーズは1勝3分7敗で、下位いじめに徹しています（14勝4分1敗！）。レスターは、2019-20シーズンをプレミアリーグ5位で終えた強豪ですが、ハマーズのジャンプアップは素晴らしいのひとこと。立役者をひとり選べといわれれば、プレミアリーグ29試合9ゴールのトマシュ・ソウチェクですが、後半戦のヒーローというオーダーなら、ジェシー・リンガードと胸を張って答えられます。

2月3日のアストン・ヴィラ戦でいきなり2ゴールをゲットしたイングランド代表のアタッカーは、2～3人を一気にちぎる快足ドリブルと鋭いラストパスでチームに貢献。プレミアリーグ8試合6ゴール4アシストというスタッツには、「ブルーノ・フェリンガード」というニックネームを献上しましょう。マンチェスター・ユナイテッドが新たに創設したディレクター職に就任したばかりのマータフFD、フレッチャーTDに、「右サイドでお困りなら、イーストロンドンに凄いのがいますよ」と進言したくなるパフォーマンスです。

ハマーズの残り8試合で、上位との対戦はチェルシーとレスターのみ。次節のレスターとのシックスポインターに勝てば、3位との勝ち点差は1に詰まります。ラスト3試合がマンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、トッテナムのブレンダン・ロジャースより、ボトム10との試合が多いモイーズが有利になりますが、ボーウェン、ソウチェク、リンガード、マイケル・アントニオ、フォルナルスはライバルとの決戦でゴールを奪えるでしょうか。ホームで8勝4分3敗は、マン・シティに次ぐ2位です。いやー、楽しみですね！（ジェス・リンガード　写真著作者/Антон Зайцев）