イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

マンチェスター・ユナイテッドが史上最高の売上見込み。リーグに蔓延する危険な「国内優先主義」

もうすぐ1000億円…。マンチェスター・ユナイテッドが、17日付の クラブのプレスリリースで経営関連のレポートを発表。そこには、2015-16シーズンの売上が5億ポンド(約930億円)を超える見通しと記されています。2014-15シーズンは、前年のプレミアリーグ7位という不調でチャンピオンズリーグの出場権を逃したこともあり、売上は前年比9%マイナスの4億ポンド(約740億円)と停滞しました。ここから200億円の増収という数字にまずは驚かされますが、10年総額7億5000万ポンド(約1300億円)となる「アディダスパートナー契約効果」は絶大です。これだけ売上が伸びれば、ファン・ハール監督就任後の2年で2億5000万ポンド(約470億円)におよぶ新戦力への投資をしても、びくともしません。プレミアリーグでは、チェルシーやマンチェスター・シティも同様に景気のいい数字を発表することになるでしょう。増え続けるスポンサー、うなぎ上りのテレビ放映権料。ドイツやスペインから、プレミアリーグのクラブが選手を爆買いすると怖れられている状況は、この先数年は続くのだと思われます。

と、ここまでは、経営努力が実を結んだといういい話です。一方で私は、この収益力がプレミアリーグを弱くし、ファン離れ、スポンサー離れ、テレビ放映権料の下落を招いてしまう危険性もあるのではないかと懸念しています。今週開催されたチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグのグループステージでは、プレミアリーグ勢は2勝1分け3敗と絶不調。チャンピオンズリーグの開幕戦で3敗したのは初めてのことだそうです。マンチェスター勢とアーセナルはすべて1-2というスコアで、勝てない試合ではなかったと思います。また、唯一ドローだったリヴァプールも、チャンスボールを活かせなかったボルドーに助けられた感もあり、「4つめの1-2」になっていた可能性は充分にありました。

敗因はそれぞれですが、共通しているのは、「今までのプレミアリーグでやらなかったことをやった」ことです。マンチェスター・ユナイテッドは「初めて」シュナイデルラン、キャリック、シュヴァインシュタイガー以外の選手をセントラルMFとして起用。プレミアリーグのチェルシー戦では経験豊富なデミチェリスを入れて逃げ切りを図ったマンチェスター・シティは、大事な局面で「初めての」オタメンディを投入。アーセナルは「初めて」コクランを外してアルテタをスタメン起用し、両SBも入れ替え。リヴァプールに至っては、ロシター、サコ、アルベルト・モレノ、コロ・トゥレ、オリギ、病み上がりのララナと総勢6人チェンジです。相手をなめていた、というのはいい過ぎでしょうか?彼らは勝ち点3を奪えず、よりスケジュールがタイトになる時期の戦い方を難しくしただけで終わってしまいました。

長いシーズン、2つの国内カップ、冬休みがないどころか年間でいちばん忙しくなる年末年始…プレミアリーグのクラブが、先を見越してターンオーバーを図るのは当然だと思います。しかしそれは、普段の積み重ねがあってこそで、隙を突かれて負けてしまっては意味がありません。うがった見方かもしれませんが、ロジャース監督は「ヨーロッパリーグで負けるのは何ともないが、プレミアリーグで負けが先行すればそろそろ立場が危ない」と考えたのでしょうか。そうとでも解釈しなければ、日曜日にアンフィールドでのノリッジ戦という最高のカードが控えている監督が、危険なフランスのクラブ相手にあそこまでメンバーを落とす理由がわかりません。ヴェンゲル監督も、本日のチェルシー戦が頭にあったのでしょう。そしてまた、41試合無敗を続けていた「インビンシブルズ」ディナモ・ザグレブは元祖のわれわれには勝てない、という確信もあったのだと思われます。しかし、プレミアリーグが最強を誇っていた2000年代中盤と今は大きく地図は変わっていました。オランダ。クロアチア、フランスといった、以前なら決して負けなかった国のクラブは、プレミアリーグのトップクラブに2点めを許してくれませんでした。

経営的な視点で見れば、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグのラウンド16敗退とベスト8では大した違いはなく、一方でプレミアリーグ4位と5位は雲泥の差です。今後も、トップクラブの指揮官がプレミアリーグ優先と受け取れるようなチーム運営を目撃する機会は減らないでしょう。私たちは、しばしば「おもしろいプレミアリーグ」と「つまらない欧州」を観ることになりそうです。優勝争いに常時4~5チームが参加し、中堅クラブにも代表レギュラークラスがゴロゴロいるプレミアリーグが「最もおもしろいリーグ」として評価されているからこそ、スポンサーやテレビ局は膨大な額の投資をするわけですが、欧州で勝てない時期が長引けば、チーム力だけでなくコンテンツとしてのアドバンテージまで奪われる時代がこないとも限りません。私たちファンは、おもしろいだけでなく、「強いプレミアリーグ」が観たいのです。各クラブの監督のみなさま、欧州でも勝って勝って勝ち続けてください。何卒よろしくお願い申し上げます。

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