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マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

プレミアリーグの「パス本数ランキング」に見る、エジルとカソルラの驚異的なクオリティ!

プレミアリーグの公式サイトが、 10節を終わったところでの「パス本数ランキング」をリリースしています。チーム・個人それぞれで、パスを出した本数と成功率を集計しているのですが、チームでみると1位はマンチェスター・ユナイテッドの5698本。2位アーセナルとは130本ほどの開きがあるものの、10月4日の直接対決で速攻に徹したアーセナルに対して、持たされたマンチェスター・ユナイテッドが220本多くパスをまわしていることを考慮すれば、実質的なトップはアーセナルということになります。マンチェスター・シティを含む上位3チームは、ポゼッションを主張してパスワークで相手を崩そうとする戦術を取っており、最下位から3つとなるレスター、クリスタル・パレス、WBAは、前線へのロングボールとカウンターで戦うチーム。試合を観ていると戦術の違いは明確ですが、あらためて数字を見ても、やはり色分けがはっきりしています。

ドリンクウォーターを基軸に、ジェイミー・ヴァーディやマフレズを前線で競らせるボールが多いレスターは、パス成功率でもプレミアリーグ最下位。キャバイェがボラシエ、ザハ、パンチュンらを走らせるシーンが多いクリスタル・パレスも、アーセナルより10%ほど低い数字となっており、ロングボールの大家・ピューリス監督のWBAも同様です。この3チームは5位、7位、10位とTOP10内で健闘しており、「中盤を省略する弱者のサッカー」を徹底すれば、中央にいい選手がいる上位クラブを困らせることが可能なのだと思われます。現在の順位が9位、15位と調子が上がらないリヴァプールとチェルシーは、上位よりも成功率が3~4%ほど低く、1試合あたりに直すと14~15本ほどパスの失敗が多い計算です。2013-14シーズンは、ポゼッションを獲りにいってうまくいかなかったエヴァートンは、マネやペッレに縦のボールを入れてシンプルに攻めるサウサンプトンとほぼ変わらず、今シーズンは前への意識を向上させているのでしょう。

【プレミアリーグ2015-16 パス本数の多いチームランキング】
1位/マンチェスター・ユナイテッド 5698本/86.1%
2位/アーセナル          5561本/87.2%
3位/マンチェスター・シティ    5441本/85.9%
4位/チェルシー          5034本/83.0%
5位/リヴァプール         4795本/82.1%
6位/スウォンジー         4650本/83.3%
7位/ボーンマス          4521本/79.4%
8位/トッテナム          4510本/81.9%
9位/ノリッジ           4280本/80.2%
10位/エヴァートン         4222本/81.8%
11位/サウサンプトン        4186本/81.0%
12位/ストーク           4166本/80.5%
13位/アストン・ヴィラ       4117本/80.8%
14位/ウェストハム         3791本/79.1%
15位/ニューカッスル        3706本/80.0%
16位/ワトフォード         3652本/77.5%
17位/サンダーランド        3450本/74.5%
18位/WBA             3450本/75.8%
19位/クリスタル・パレス      3445本/78.7%
20位/レスター           3244本/74.2%
※数字はパス総数/成功率

アーセナルは、パス成功率においても87%でプレミアリーグNo.1。個人の数字でも、TOP10にカソルラ、エジル、ラムジーが入っており、カソルラはパス成功率でも92.8%で1位です。エジルの91.3%も素晴らしいのひとことで、20位まで枠を広げても、成功率90%を超えているのは13位のシュナイデルラン(532本/91.4%)のみ。今季はカウンターの餌食になることが減ったアーセナルは、マンチェスター勢やトッテナムと並んでプレミアリーグ最少の8失点です。セットプレーには課題があるものの、簡単にゴールを奪われなくなったのは、中盤の底をケアするコクランの奮闘やチェフのスーパーセーブだけでなく、前後左右のハブとして機能しパスミスが少ないカソルラのクオリティも大きいのだと思います。

さあ、実は本題はここからです。このなかに、驚異的な選手がひとりいます。パス本数10位にランクインしているメスト・エジル。何が凄いかといえば、20位までに入っている選手で、攻撃的なポジションにいるのはエジルと17位のアザール(520本/86.5%)だけなのです。一般的にパス本数が多いポジションは、仕切り直しで戻すパスを受け、後方からのビルドアップにも参加するセントラルMFと、攻められない時に左右に回し続けることが多いDFです。TOP20にボーンマスの選手が2人、スウォンジーからアシュリー・ウィリアムス、フェデリコ・フェルナンデス、シェルヴィの3人が入っているのですが、彼らはパス本数TOP3のクラブと同様につなぐ意識が高く、セントラルMFやDFでボールをまわしながら出しどころを窺う時間が長いのがわかります。

そんななかで、エジルはシュナイデルラン、ギャレス・バリー(12位)、ヤヤ・トゥレ(18位)よりも多くボールに絡み、しかも90%以上のパスを成功させているのです。7アシストはプレミアリーグ1位。アーセナル入団後の57試合で27アシストを記録しており、1アシストを決めるのに2.71試合しかかからないのは、エリック・カントナとセスクをしのぐプレミアリーグ史上最高のハイペースだそうです。

【プレミアリーグ2015-16 パス本数の多い選手ランキング】
1位/カソルラ(アーセナル)      832本/92.8%
2位/セスク(チェルシー)       749 本/84.2%
3位/サーマン(ボーンマス)      666本/86.2%
4位/フェルナンジーニョ(マン・シティ)630 本/89.0%
5位/シェルヴィ(スウォンジー)    577 本/85.8%
6位/ウィーラン(ストーク)      576 本/87.5%
7位/シュヴァインシュタイガー(マン・ユナイテッド)
                   571 本/86.3%
8位/フランシス(ボーンマス)     570 本/80.5%
9位/ラムジー(アーセナル)      558 本/85.8%
10位/エジル(アーセナル)       551 本/91.3%
※数字はパス総数/成功率

ライバルクラブのみなさん、アーセナルと戦うときは、カソルラに厳しいプレスをかけて、エジルに何もさせないようにMFをひとり密着させれば、シェフィールド・ウェンズデイと同じ成功を手に入れられるのではないでしょうか。逆にグーナーのみなさんからすれば、プレミアリーグで6ゴールのアレクシス・サンチェス、エジル、カソルラまで休ませたキャピタルワンカップは、「想定内の敗戦。本番は来週のバイエルン」と笑って忘れればいいのだと思います。だとすればなおのこと、ウォルコットとチェンバレンのケガは痛かったですね。そうはいっても勝ちたかったわけで、彼らまで外すのはリスクが高く、アンラッキーだったとしかいえません。

話を戻しましょう。ランキングからは、マンチェスター・シティのフェルナンジーニョの貢献度の高さや、パス成功率が低くないシェルヴィの成長も見て取れます。マンチェスター・ユナイテッドのシュヴァインシュタイガーとシュナイデルランは、途中出場・交代が多いのに20位までに入っており、この補強こそが今季のファン・ハール戦術の骨格なのだとあらためて思います。ひととおりランキングをなめたところで、「何をおいてもエジルとカソルラは凄い」と念押しさせていただいて、この稿を締めたいと思います。いやー、史上最高とは…。

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“プレミアリーグの「パス本数ランキング」に見る、エジルとカソルラの驚異的なクオリティ!” への3件のフィードバック

  1. エジルのパス より:

    いやぁ今日のゲームは残念でしたがこういった風に記事に取り上げていただけると本当に有難いです。

    エジルのパス成功率が史上最高ペースとは誇らしい限りですね!

    嬉しい記事内容本当にありがとうございました!

  2. ぐーなー より:

    エジルはプレミアで過小評価されてる選手の1人だと思います。
    レアル時代がすごすぎた、ゴールが少ない、プレミアファン好みのファイターではない(多分これが一番の理由でしょう)…こんなとこが理由ではないかと思います。

    しかしスタッツを見ると走距離、パス成功数、アシストなどはものすごい数字です。

    主さんも触れていますがバイタルエリア付近のチャレンジングなパスが多い選手としては格別でしょう。

    バイエルンとの2ndレグも期待しています。

  3. ガナユ より:

    シルバと並んでプレミア屈指のチャンスメーカーですよね!敵のチェックが厳しいバイタルで仕事が出来る数少ない選手ですが評価されづらいプレースタイルでもあるのでこの様な形で認められるのは嬉しい限りです!それにしても凄いスタッツですね…(笑)

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