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プレミアリーグからさらにロイク・レミー⁉中国の爆買い連発で、難しくなる冬の移籍市場

この冬、サッカー界では「中国スーパーリーグの爆買い」が話題になっています。ジャクソン・マルティネス、グアリンなど錚々たる顔ぶれが極東に渡り、プレミアリーグから江蘇蘇寧に移籍したチェルシーのラミレスの移籍金は、2100万ポンド(約36億円)とも2500万ポンドともいわれています。数十億円規模の移籍金を事もなげに払い、競合する欧州のクラブを出し抜くダイナミックさは、 1990年代後半にジョルジーニョ、レオナルド、ドゥンガ、ストイコヴィッチ、エムボマなどの現役代表レギュラー選手を集めたJリーグの比ではありません。シャフタル・ドネツクのテイシェイラ獲得で、リヴァプールが降りたと聞いたときはびっくりしました。Jリーグが凄かったときでも、鹿島や大阪、磐田が欧州の有名クラブに競り勝ったという話は記憶にありません。

とはいえ、「この冬の移籍金総額2億5890万ユーロ(約338億円)は、プレミアリーグの2億4730万ユーロ(約318億円)を上回って世界一!」という報道は、少し冷静になったほうがいいでしょう。中国はオフシーズン、欧州は夏の大型補強を済ませた後のシーズン中の市場で、テイシェイラが5000万ユーロ(約65億円)の高値で江蘇蘇寧に入団したと伝えられたのは、欧州のデッドラインデーを過ぎた2月5日でした。中国は、2月末まで新戦力獲得が認められているので、その段階で全体の規模感を把握し、夏の欧州と比較するのが適切でしょう。おそらく、昨夏のブンデスリーガの総額である3億9500万ユーロ(約533億円)は超えないのではないでしょうか。長期的なテーマとして気になるのは、この勢いがさらに加速するのか、萎むのか。ヴェンゲル監督は、「日本もかつて、彼らのような大型補強にトライしていたことを思い出してほしい。結局、それは長続きしなかったよね」と、一過性のものだという見方をしているようですが、時代が変わった今、かつてない巨大なマーケットを持つ国が同じような結果に終わるのかはわかりません。そして喫緊の問題は、「2月中にさらに選手を抜かれ、戦い方が難しくなるクラブが出るのではないか」です。

中国からオファーがあった選手の反応は大きく2つに分かれており、高額の給与や新しいチャレンジへの好奇心を選んでアジアに流れた選手と、本流の欧州での評価や自国代表への選ばれやすさを重視してクラブに留まった選手です。後者の代表は、今季プレミアリーグで14ゴールの活躍を見せている、ワトフォードのナイジェリア代表FWオディオン・イガロ。この話にはびっくりしたのですが、昨夏に中国2部リーグの河北華夏幸福から彼に届いたオファーは週給30万ポンド超え、年収換算で26億円以上の魅力的な話だったそうです。

「僕は移籍に近づいていた。彼らが用意した移籍金は1000万ポンド(約16億9000万円)で、4年契約だった。3日間眠れなかった。もらえるお金は、断るのは難しいものだった。何人かのチームメイトに、こんなチャンスは逃すべきじゃないとアドバイスされたんだ。…でも、僕は飛び込まなかった。神に祈ってみたら、それは僕のためにはならないといわれた。結局、僕は中国には行きたくないといった。彼らの提示は最後は週給30万ポンドを超えていたけど、僕は彼らに、お金じゃないと断ったんだ」(オディオン・イガロ)

月額1億円超を断ってプレミアリーグを選んだチェルシーのアレシャンドレ・パト、江蘇蘇寧からの年棒5億円に首を振ったサンプドリアのエデル、9億円より欧州での活躍を望んだドルトムントのアドリアン・ラモス。イギリスメディア「ESPN」によると、プレミアリーグではサウサンプトンのグラツィアーノ・ペッレも、ユーロでの代表落ちを懸念してノーといったようです。

中国に行くかどうかは、個々の選手が何を重視するかであり、全体としてどちらがいいと結論を出す種類のお話ではありません。移籍を決断する理由はサラリーのよさだけではなく、「新しいサッカー文化を創るために君が必要なんだ!」という口説き文句は、動機づけとしては充分でしょう。今、いえるのは、「中国の参入で選手の値段がさらに高騰するかもしれない」「マーケットが最も動く時期と、そのデッドラインデーが違うために、欧州のクラブは冬の対応が難しくなりそう」という2点でしょう。サウサンプトンのチャーリー・オースティン獲得には、ペッレを失ったときの保険という意味合いがあったのかもしれません。

ファルカオの中国移籍はなさそうですが、今季中国スーパーリーグに昇格した河北華夏幸福がロイク・レミーを狙っていると報じられており、チェルシーはラミレスに続いて難しい判断を迫られそうです。ついこの間までアジアのリーグの2部にいたクラブが、エムビア、ジェルヴィーニョ、カクタに加えてロイク・レミーです。上海、広州などさらにその上があるとなると、強豪国のNo.1クラブ以外にオファー額で負けることが少なかったプレミアリーグはもちろん、欧州のクラブからすれば脅威でしょう。いや、これも冷静に見れば、リーグ・アンやブンデスリーガにとっては既にプレミアリーグが「どないやねん!」であり、出ていく選手の行き先がイギリスであろうと中国であろうと関係ないのかもしれませんが…。

ロイク・レミーが動き、さらに上海申花が噂のラベッシ獲得に成功すれば、チェルシーとパリは、想定していたオプションをひとつ失った状態で来週のチャンピオンズリーグで激突することになります。うーん、悩ましい。レミーは29歳、ラベッシは30歳。彼らに移籍金を20~30億円積まれようものなら、クラブは断れないかもしれませんね。欧州のクラブにとっては、「戦力的にはマイナスしかない移籍市場がまだまだ続いている」のです。

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“プレミアリーグからさらにロイク・レミー⁉中国の爆買い連発で、難しくなる冬の移籍市場” への2件のフィードバック

  1. Uボマー より:

    中国超級で戦うデメリットはコンディション調整の難しさもあると思います。中国は日本以上に高温多湿な地域もあって代表戦との往復になると体力的にはかなりきついんじゃないでしょうか。ACLでは外国人選手のレギュレーションもあるので、Jリーグファンにもメリットはあまりありませんし。能力のあるうちは欧州で頑張ってほしいと思いますが、お金の面だと特にセリエAは厳しいですよね。

  2. makoto より:

    なぜテイシェイラの獲得にリバプールはお金を渋ったのでしょうか
    プレミアのビッグクラブが中国に選手獲得で競り負けるのはあまり見たくありませんでした
    特にこれから全盛期という選手でしたしね

    —–
    Uボマーさん>
    チャンピオンズリーグのような質の高い大会を戦えないハンディキャップが大きく、いずれ沈静化するのではないかと思います。

    シティズンさん>
    1シーズンしか活躍していない選手にエジルと同等はさすがに高い、という判断だったのではないでしょうか。私は、多少高くてもゴーでしょう!とテンションが上がっていたので、残念です。

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