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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

プレミアリーグで唯一の補強ゼロ…新たなTDを招聘したウェストハムの内部で権力闘争が勃発!

アーセナルに売却したデクラン・ライスの移籍金は1億500万ポンド。プレミアリーグファンの多くが、ウェストハムは即座にセントラルMFを獲得するものと思っていたでしょう。ハマーズのキャプテンは、以前からチェルシーのターゲットといわれており、2月からはアーセナルが本気で獲りにいくと報じられていました。後継者探しの時間は充分にあったはずです。

しかし現在、ソーチェクの脇のポジションは未だ空席です。いや、それどころか、ウェストハムはプレミアリーグでひとりも補強していない唯一のクラブとなっています。ビッグディール成立のアナウンスから3週間、プレミアリーグ開幕まで1週間。2022-23シーズンの残留争いを何とかクリアしたチームは、大きな穴を晒したままで新たなステージに突入しそうな雲行きです。

この夏の彼らの動きを振り返ってみましょう。ジョアン・パリーニャは、フラムが9000万ポンドという高値を主張したため、話にならず。コナー・ギャラガーに対する4000万ポンドのオファーは、チェルシーに拒否されました。3500万ポンド程度で獲れる可能性があるセインツのウォード=プラウズは、2000万ポンドというプアな提示を断られただけで、撤退と報じられています。

マンチェスター・ユナイテッドは、4500万ポンドならマクトミネイを放出するといわれていますが、正式なオファーは届いていません。ユーヴェのデニス・ザカリアのレンタルも、アヤックスのエドソン・アルバレスも進展なし。ハリー・マグワイアに2000万ポンドという気の抜けたアプローチに続報はなさそうです。

最近になって、「テレグラフ」「アスレティンク」「スカイスポーツ」などが、ハマーズの異変に注目し始めています。「スカイスポーツ」のカヴェ・ソルヘコル記者と「ガーディアン」のジェイコブ・スタインバーグ記者は、「power struggle(権力闘争)」という表現で危機的状況をレポートしています。

事の発端は7月1日、ティム・シュタイテンのテクニカルディレクター就任。リクルート部門の責任者だったロブ・ニューマンと連携していたモイーズ監督にとっては、おもしろくない人事です。新戦力獲得の主導権を握りたがる指揮官は、ECL優勝で強気になっていたのですが、プレミアリーグ14位という着地に失望していた経営ボードは、彼の権限を狭めようとしたのです。

スタインバーグ記者によると、ウォード=プラウズ、コナー・ギャラガー、マクトミネイら英国系の選手は、プレミアリーグでの実績を重視するモイーズのチョイス。提案をことごとくボツにされてきたシュタイテンTDは、指揮官が熱望する人材の獲得にモチベーションを感じられず、最初の拒否であっさり諦めてしまうこともあるようです。

象徴的だったのは、ニューカッスルにさらわれたハーヴィー・バーンズ。モイーズ監督が求めていたウインガーに対して、スタッフは4月から獲得準備を進めていたのですが、シュタイテンTDのリセットボタンでマグパイズが逆転したそうです。あからさまな低額オファーや、追撃なしの撤退が目立つのは、現場のオーダーをディレクターが信頼していないからでしょう。

ハマーズが獲得していないのは、選手だけではありません。ファーストチームのコーチだったマーク・ウォーバートンとポール・ネヴィンの後任も決まっていません。まさか、新TDは「モイーズが連敗スタートで解任となってからが自分の時間」などと考えているのでしょうか。ターゲットのひとりといわれるヨナタン・ターは、彼が在籍していたレヴァークーゼンのDFです。

デクラン・ライスの後釜やCBの強化に手間取っているうちに、主力が続々と抜けていく可能性があります。アーロン・クレスウェルはウルヴス、ニコラ・ヴラシッチはトリノに行きたがっており、マイケル・アントニオにはスティーヴン・ジェラード率いるアル・エティファクという話があります。スカマッカもイタリアへ帰国となれば、ストライカー獲得は喫緊の課題となります。

このままでは、今季プレミアリーグも残留争いにエントリーすることになりそうです。戦力を強化できずに勝てなければ、責任を取るのは監督です。モイーズ監督に勝算はあるのでしょうか。8月の3試合はボーンマス、チェルシー、ブライトン。開幕戦を落としたら、ヨーロッパリーグの開幕を待たずにチームに別れを告げることになるかもしれません。


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