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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

クラブ売却は決裂危機で運転資金はショート寸前…エヴァートンは最大のピンチを切り抜けられるのか?

長期的な視座なきクラブ運営、場当たり的な指揮官解任、激怒したサポーターの暴走、積もり続ける負債、FFP違反疑惑、苦しい残留争い、経営ボードの大量離職…。ロベルト・マルティネスが指揮を執っていた2013-14シーズンをプレミアリーグ5位で終えたエヴァートンは、ファルハド・モシリが株式を取得した2016年から、坂を転げ落ちるように凋落の一途を辿りました。

マージーサイドで2年9ヵ月を過ごしたロベルト・マルティネスが去ったのは2016年。その後の7年で招聘された7人のうち、最も長かったマルコ・シウヴァでも1年半です。イングランドが制した2017年のU-20ワールドカップの主軸は育たず、補強はことごとく失敗。ベニテス、ランパード、ショーン・ダイクが苦闘した直近2年は、残留争いに巻き込まれていました。

サポーターの暴走が始まったのは、ワールドカップカタール大会の直後でした。ボクシングデーのウルヴス戦は1-2、年明けのブライトン戦は1-4、セインツ戦は1-2とグディソン・パークで3連敗。「経営ボードはクビだ!」というチャントが飛び交い、セインツ戦ではボードのメンバーに「スタジアムに行かないでほしい」という要請がありました。

その直後、選手とスタッフに慕われていたランパードが解任。バレット=バクセンデールCEOがサポーターにヘッドロックを喰らったという記事が配信されると、「証拠映像がない」「マージーサイド警察に通報が入っていない」と大騒ぎになりました。CEOに続いて、グラント・イングルズCFO、グレアム・シャープ社外取締役も夏までにクラブを離れています。

3月には、プレミアリーグがエヴァートンのFFP違反について、独立委員会に調査を委ねると発表。過去5年で赤字は4億3000万ポンド(約782億円)に膨れ上がり、ブラムリー・ムーア・ドックの新スタジアムの建設費用は、当初予定の5億ポンドから7億6000万ポンド(約1383億円)に増加しています。

カオスの被害者でもあり、当事者でもあったサポーターたちの数少ない希望は、最終節の勝利によるプレミアリーグ残留と、クラブ運営に失敗したファルハド・モシリが株式を売却すると報じられたことです。9月に合意と伝えられたのは、777パートナーズ。セヴィージャ、ジェノア、ヴァスコ・ダ・ガマ、スタンダール・リェージュに投資しているアメリカの企業です。

12月までに完了するといわれていた売却スキームについて、昨日、新たなニュースが舞い込んできました。「ニューヨークタイムズ」によると、777パートナーズは買収の承認に必要な監査済み財務諸表をFCA(Financial Conduct Authority=英国の金融行動監督機構)に提出していないそうです。

記事をフォローした「テレグラフ」のベン・ラムスビー記者は、「2ヵ月分のサラリーの資金が必要なモシリは、777パートナーズから6000万ポンド(約109億円)の融資を受ける可能性がある」と伝えています。アメリカにおける違法融資や請求書に対する多額の支払い漏れを指摘されている企業は、プレミアリーグのオーナーや経営者による審査でアウトとなるかもしれません。

破綻につながるドアが見えているクラブは、FFP違反疑惑に関する聴聞会が控えています。世界最古のフットボールリーグの創設メンバーである古豪は、窮地を脱することができるでしょうか。プレミアリーグ2023-24シーズンは、2勝1分5敗で14位。ピッチの内外とも、予断を許さない状況が続いています。


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