イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

深すぎるポジション、シュートは打てず…批判が集まるイングランド代表で、どうなるルーニー!?

ロシアワールドカップのヨーロッパ予選でグループFに入ったイングランドは、プレミアリーグのトップクラブで活躍する選手を揃えながら、初戦のスロバキア戦は0-1で辛勝。追加タイムにララナが決勝ゴールを叩き込み、2ヵ月前の悪夢の再現を何とか回避しました。初陣で勝ち点3をゲットしたサム・アラダイス新監督にとっては「最悪ではない船出」ではあるものの、サッカー命のイングランドのみなさんは、新監督の最初のゲームだからと大目に見ることも、勝ったのだからと結果オーライで済ますことも許しません。ユーロ2016で、アウトサイダーと目されていたアイスランドに敗れて大会から去るという屈辱を味わったスリー・ライオンズに、今回も批判が集まっています。「今までと変わらないじゃないか」「ルーニーのポジションが深すぎる」。ビッグ・サムは、ルーニーはチームに必要なタレントであり、イングランド代表の中心であることを必死に説明しています。

イギリスメディア「メトロ」は、アイスランド戦と今回のスロバキア戦のスタッツを並べて、イングランドはボールを支配しながらもシュートの精度が低く、相手を崩せないという課題が解決していないと主張しています。アイスランド戦はポゼッション68%、シュート18でオンターゲットは4本、パス成功率は86%。スロバキア戦はポゼッション64%で、シュート20本枠内5本、パス成功率は89%でした。ポゼッションについては、リヴァプールやアーセナルなどプレミアリーグのトップクラブでもよく見られる数字で、相手が引いてくればおのずとこうなります。数字からわかる問題は、圧倒的に押しているのに少ない枠内シュートでしょう。プレミアリーグ得点王のハリー・ケインは、彼だけユーロ2016が終わっていないかのようにシュートチャンスが少なく、崩しのフェイズでは輝くララナもミドルを枠におさめられません。

スティーブン・ジェラードやフランク・ランパードのように、プレミアリーグで10ゴールを決めるミドルシュートに長けたMFが少なくなりました。昨季プレミアリーグで10発超えを果たしたのはデル・アリひとりで、次がロス・バークリーの8ゴール。エリック・ダイアーも素晴らしいミドルを打てる選手ですが、この3人はひとりが代表落ち、ひとりは途中出場で、フル出場のエリック・ダイアーは中盤の底に引いていました。もうひとり、「正確なミドルが打てるセントラルMF」を挙げるとすれば、キャプテンのウェイン・ルーニーなのですが、彼こそが今回の代表で議論の的になっているのです。

「ルーニーが深すぎる」という意見には、3つの視点があるように思います。「もっと上がってきてほしい」「やはり彼はストライカーが適役ではないか」「もはやルーニーは必要ではないのではないか」。少なくともひとついえるのは、プレミアリーグでも代表でも、ルーニーが遠めからのシュートをゴールの隅に蹴るシーンが激減したということ。マンチェスター・ユナイテッドでの10番は、コースは悪くないものの強さが足りないシュートを、GKに正面でキャッチされるシーンが目立っています。「デイリー・ミラー」は、「Sam Allardyce admits Wayne Rooney is undroppable – and remains England’s main man(サム・アラダイスはルーニーは落ちない、イングランドの中心選手であり続けると認識している)」という記事のなかで、ビッグ・サムがルーニーについて「彼のキャプテンとしての経験を目いっぱい引き出したい。彼は、われわれがゴールを叩き込んでくれると望んでいることを忘れていないはずだ」とコメントしたと伝えています。指揮官は中盤で起用しながらも、ゴールに絡むプレイを求めているようです。

代表においてルーニーがどうあるべきかは、イングランドのみなさんが語り、指揮官が決めるべき問題ではありますが、私は彼個人の問題よりも、イングランドの4-3-3の問題のほうが大きいのではないかと思います。左のインサイドMFを務めたスロバキア戦のルーニーのプレイエリアを確認すると、サイドに飛び出すことも中央に斬り込むこともなく、ペナルティエリア内でのタッチは皆無です。ポジションチェンジが少ないチームのなかで、ルーニーは攻守のバランスを取る左MFでしかなく、得意とするプレイができるエリアに入ってきていません。プレミアリーグをご覧のみなさんは、サイド攻撃の際に中央に4~5人が殺到するチェルシーやトッテナムの厚みのあるアタックを覚えてらっしゃるでしょう。イングランドは、サイドを崩した際に中が薄いケースが多く、カイル・ウォーカーやスターリングのボールは点で完璧に合わせないとゴールにつながりません。

ポジショニングの問題が監督の指示なのか、自由を与えられたルーニーの選択なのかはわかりませんが、10番がペナルティエリア内でチャレンジし、真ん中に斬り込むシーンが目立つようになれば、イングランドの枠内シュートはおのずと増え、ベタ引きの相手に横パスをまわしながら攻めあぐむ時間は減るのではないでしょうか。ルーニー個人を云々する前に、まずは戦い方を変えることのほうが先ではないかと思います。今回はチームづくりにかけられる時間がなく、前任者が作ったベースを頼らざるをえなかったのは理解しますが、次戦以降はビッグ・サムなりの答えを見せてくれればと思います。

「今までと変わらない」という批判があるなか、ひとつだけ、「ホジソンはやったがアラダイスは絶対やらないこと」がありました。これについては、常にボックス内で勝負してゴールを狙うべきプレミアリーグ得点王の言葉を聞いてみましょう。

Do I expect to take a corner again? Probably not.(自分がまたCKを蹴ると思うか?たぶんもうないね)」(ハリー・ケイン)

(ウェイン・ルーニー 写真著作者/Илья Хохлов)

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


“深すぎるポジション、シュートは打てず…批判が集まるイングランド代表で、どうなるルーニー!?” への2件のフィードバック

  1. リバサポ より:

    ルーニーをMFで使うんなら、ドリンクウォーターを使って欲しいです。ユーロもそうでしたけど、あのポジションでのプレイなら本職のMFのほうがいい気がしますし。絶賛売り出し中のドリンクウォーターをベンチに置いているのもよくわからないですね〜

  2. makoto より:

    リバサポさん>
    「デイリー・ミラー」が、「アラダイスは前任者たちと同じ罠にかかっている」と書いてましたが、下げて使うとゴール前に出てこず凡庸になるのであれば、プレイを変えるよう要求するか、前で機能させるか、スーパーサブ的に起用するか、ですね。好きな選手ですし、その経験はチームに必要とは思うものの、要求通りのプレイができなければ時に外す勇気も必要だと思います。

コメントを残す