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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ノッティンガム・フォレストはなぜ4ポイント剥奪?何かと不明瞭なPSRについて思うこと。

PSR違反を問われていたノッティンガム・フォレストに、ついに裁定が下されました。プレミアリーグが科したペナルティは、4ポイントの剥奪。6勝7分16敗で勝ち点25だったチームは、21となってルートンと1ポイント差の18位に転落しました。まずは、オープンになっている事実を整理しましょう。

「プレミアリーグのFFP」といわれる「Profitability and sustainability rules(収益性と持続可能性に関する規則=PSR)」について端的に説明すると、「3年間で赤字額が1億500万ポンド(約199億円)を超えてはならない」。ノッティンガム・フォレストのペナルティの対象となったのは、2020年~2023年の3シーズンです。

世界で2番めに古いクラブは、最初の2シーズンはチャンピオンシップに所属しており、1年あたりの許容額は1300万ポンドでした。2年なら倍額の2600万ポンドで、昨季はプレミアリーグの3年総額の1/3にあたる3500万ポンドが上限となるため、許容される損失は6100万ポンド。これに対して、計上した赤字は約9550万ポンドで、差し引き3450万ポンドがアウトとなっています。

ペナルティの基準となるのは、先に違反が確定したエヴァートンです。11月に勝ち点10の剥奪を申し渡されたマージーサイドのクラブは、制裁の根拠となった9つの理由を不服として上訴し、2月の控訴委員会で2つを覆して6ポイントに軽減されています。彼らは1950万ポンド、今回は77%UPとなる3450万ポンド。当初、委員会は8ポイント剥奪と算定していたようです。

最終的に4ポイントまで下がったのは、起訴された後のプロセスで全面的に協力したから。それでも、ブレナン・ジョンソンの売却に対する解釈は、クラブも委員会も譲らない大きな争点となりました。6月に届いたブレントフォードからの3500万ポンドを拒否したクラブは、デッドラインデーまで引っ張り、スパーズに4750万ポンドで売却しています。

彼らの言い分は「6100万ポンドを超えていたのは、ブレナン・ジョンソンを手元に置いていた2ヵ月だけ」。裁定する側は、「6月30日までに動かなかった選手の売却益は、次期の算出」と正論を繰り返しました。結末はクラブの敗訴。「期日内のオファーを見送り、9月に1250万ポンドの上乗せに成功した自分たちは、PSRの精神に則っている」という主張は通りませんでした。

ノッティンガム・フォレストには上訴する権利がありますが、事実の特定に全面的に協力したことを勘案しての4ポイント剥奪なので、対立するとペナルティが重くなる可能性もあるといわれています。現地メディアは、「4ポイントは上訴するレベルで、彼らは動くだろう」「このまま確定させるのではないか」と、見立てが分かれています。

一連の報道を見て、「現状のルールと運用には、スポーツのフェアネスとエンターテインメント性を損なう重大な欠陥がある」と感じました。大前提は、「プレミアリーグは、ビジネスコンテストでも経営コンサルの場でもない」ということ。ポイント剥奪の乱発は、「ピッチでより多く勝ったチームが相当の果実を得る」とするフットボールの原則を毀損します。

フェアネスの観点では、「違反に対する量刑が不明瞭」「裁定が下される時期が違うのはアンフェア」であるのも問題です。赤字に対するペナルティなら、「補強制限あるいは一定期間の禁止」「時限的なサラリーキャップ」などのほうが妥当でしょう。ペナルティの消化自体が、損失の抑制に直結するからです。

2019年~2022年の違反が確定したエヴァートンは、2020年からの3年でもアウトと発表されており、「二重のペナルティではないか?」「シーズンが終わった時点で降格するクラブがわからないのは、さすがにまずいのではないか」と指摘されています。プレミアリーグに所属する大半のクラブが「性急すぎた導入」「欠陥だらけ」と現状のPSRを批判し、見直しを求めています。

エヴァートンが7件の違反と当初の非協力的な姿勢を咎められ、マイナス6ポイントということは、115件の容疑を全否定のマン・シティが完全敗訴なら130ポイント以上…!「返済は5年ローンで年間26ポイント剥奪」でも、過去3シーズンは7位、6位、6位で欧州へのチケットを得られます。そう考えると、ペップは凄いですね、やっぱり。

結局、最大の問題は「ゴリゴリの鉄球を両足に付けたチームが複数いるリーグを楽しめるのか」ではないでしょうか。「32勝6分のスーパーインヴィンシブルズが、1ポイント足りずに無念の降格」といわれたら、困惑するしかありません。ルールは続くのか、マン・シティはいつどうなるのか、そしてそのときペップは…と、PSR関連の話は気になることだらけです。


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