2024.07.05 チームの話題(全体・他クラブ)
不足額は6000万ポンド、オファーはゼロ。PSR違反を怖れたニューカッスル、ラスト24時間の大混乱!
PSR違反を回避しなければならないとはいえ、21歳のエリオット・アンダーソンと19歳のヤンクバ・ミンテという有望株を手離すとなれば、熱狂的なサポーターは激怒するのではないか…。「もうひとつのデッドラインデー」となった6月30日。何としても厳罰を避けたかったニューカッスルは、利益の絶対額が高い2人を放出し、条件をクリアしました。
外から見ると、「着実に成長を遂げている若手を売るなんて、もったいない」のひとことです。しかし最終日の経営ボードに、そんなことを考える余裕はなく、プレッシャーとストレスによってパニックになっていたそうです。「テレグラフ」のルーク・エドワーズ記者が、経営に近い関係者に取材したインサイドストーリーを読むと、現場の緊張感の高さに言葉を失います。
そもそもニューカッスルはなぜ、PSRに記載されている「3年で1億500万ポンド(約216億円)」を大幅に超える赤字を抱えてしまったのでしょうか。サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドによる買収で資金に余裕が生じたクラブのイメージと、赤字が埋まらず恐怖に震える経営ボードという情景描写には、大きなギャップがあります。
理由はシンプルで、「選手の売却がうまくいかなかったから」。2021年10月に買収が成立した後、翌年1月の最初のトランスファーマーケットで、新たな経営ボードはさっそく大型補強を敢行しました。クリス・ウッド、ブルーノ・ギマランイス、トリッピアー、ダン・バーンに8700万ポンド。2022年の夏には、イサク、マット・ターゲット、ポープ、ボトマンを引き入れています。
イサクとボトマンだけで1億ポンドを費やしたクラブは、2023年の冬にもアンソニー・ゴードンに4500万ポンドを投じています。昨年は、サンドロ・トナーリ、ハーヴィー・バーンズ、リヴラメント、ヤンクバ・ミンテに7300万ポンド。4回のマーケットで4億ポンドを超える支出を計上したクラブが、余剰戦力の放出で利益を得たのは1人だけでした。
ノッティンガム・フォレストに移籍したクリス・ウッドは、獲得時の移籍金の減価償却をクリアできない赤字の売却。唯一のプラスは、サウジのアル・アハリから誘われたサン=マクシマンですが、利益は1000万ポンドに満たなかったそうです。これほどの赤字を、コマーシャル収入、テレビ放映権、マッチデーの売上でカバーするという話は現実的ではありません。
運命の最終日を迎える前に、さまざまな手を打ったのですが、あまりに残念な理由ですべて空振りに終わりました。「テレグラフ」の記事から、主な失敗を抜き出してみましょう。ブルーノ・ギマランイスとの契約に1億ポンドのバイアウト条項を入れたのは、いざというときに売りやすくするためだったのですが、高額の投資を嫌がったビッグクラブはオファーを出しませんでした。
イサクの獲得を目論んだチェルシーに、移籍金は2億ポンドと伝えると、その後コンタクトはなし。本人が残留を希望し、エディ・ハウ監督も売却を拒否したため、昨季プレミアリーグで21ゴールのエースは緊急避難策のリストから消されました。思わず笑ってしまったのは、ジョエリントンに関するスタッフの不手際です。
2月まで現場にいたダン・アシュワースSDは、クラブが誰かを売却しなければならなくなる事態を想定し、ジョエリントンとの契約延長交渉を止めていたとのこと。しかし、マンチェスター・ユナイテッドからのオファーを受け、退団を申し出たSDがガーデニング休暇に入ると、引継ぎがなされていなかったスタッフが長期契約を結んでしまったそうです。
2023-24シーズンの年度会計の最終日となる6月30日。6000万ポンドの利益を必要としていた彼らの手元に、オファーは1件もなかったといいます。子どもの頃からリヴァプールファンだったアンソニー・ゴードンに代理人が移籍を勧めると、テンションが上がったウインガーは、イングランド代表のチームメイトに「行きたい!」といっていたのですが…。
ダルウィン・ヌニェスとルイス・ディアスを擁するクラブは明らかに関心がなく、口頭であまりにも安い金額を伝えてきただけだったそうです。1週間前にリヨンからの4000万ポンドのオファーを拒否したヤンクバ・ミンテは、ノッティンガム・フォレストもNG。「エヴァートンかブライトンなら」といっていたウインガーに手を差し延べたのは、ブライトンでした。
突如現れたエンジェルの3000万ポンドで、残りは3000万ポンド。ヤンクバ・ミンテを獲れなかったノッティンガム・フォレストが、エリオット・アンダーソンにも興味があるという話が聞こえてくると、「左のインサイドでジョエリントンとジョー・ウィロックの3番手。出場機会は限られる」と説得された21歳の生え抜きが移籍を決断しました。
大混乱だった経営ボードに、彼を残してほしいというエディ・ハウ監督のオーダーなど届くはずがありません。3500万ポンドの移籍金が確定しても、利益は6000万ポンドに到達しなかったのですが、最後のスーパーイリュージョンで見事、クリアとなりました。「マンチェスター・ユナイテッドと揉めていたダン・アシュワースの補償金」。まさかこれが、切り札になるとは…!
もうひとつのデッドラインデーが夏の風物詩になると、長年サポーターに愛されてきたホームグロウンの選手たちが、売価が全額利益になるために売られるケースが増えてしまいそうです。チェルシーはコナー・ギャラガ―を手離すのか。マンチェスター・ユナイテッドは、ラシュフォードの経済的なメリットを重視するようになるのか。
マグパイズは最終日に慌てたためにドラマになりましたが、若手を続々と売ったチェルシーも同じ考え方で動いています。会計上の赤字ではなく、移籍金のマイナスやサラリー総額にキャップをはめたほうが健全になりそうです。そうなると、サステナビリティというPSRの本質からはズレてしまうのかもしれませんが…。現状、明快な改善策はありません。
外から見ると、「着実に成長を遂げている若手を売るなんて、もったいない」のひとことです。しかし最終日の経営ボードに、そんなことを考える余裕はなく、プレッシャーとストレスによってパニックになっていたそうです。「テレグラフ」のルーク・エドワーズ記者が、経営に近い関係者に取材したインサイドストーリーを読むと、現場の緊張感の高さに言葉を失います。
そもそもニューカッスルはなぜ、PSRに記載されている「3年で1億500万ポンド(約216億円)」を大幅に超える赤字を抱えてしまったのでしょうか。サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドによる買収で資金に余裕が生じたクラブのイメージと、赤字が埋まらず恐怖に震える経営ボードという情景描写には、大きなギャップがあります。
理由はシンプルで、「選手の売却がうまくいかなかったから」。2021年10月に買収が成立した後、翌年1月の最初のトランスファーマーケットで、新たな経営ボードはさっそく大型補強を敢行しました。クリス・ウッド、ブルーノ・ギマランイス、トリッピアー、ダン・バーンに8700万ポンド。2022年の夏には、イサク、マット・ターゲット、ポープ、ボトマンを引き入れています。
イサクとボトマンだけで1億ポンドを費やしたクラブは、2023年の冬にもアンソニー・ゴードンに4500万ポンドを投じています。昨年は、サンドロ・トナーリ、ハーヴィー・バーンズ、リヴラメント、ヤンクバ・ミンテに7300万ポンド。4回のマーケットで4億ポンドを超える支出を計上したクラブが、余剰戦力の放出で利益を得たのは1人だけでした。
ノッティンガム・フォレストに移籍したクリス・ウッドは、獲得時の移籍金の減価償却をクリアできない赤字の売却。唯一のプラスは、サウジのアル・アハリから誘われたサン=マクシマンですが、利益は1000万ポンドに満たなかったそうです。これほどの赤字を、コマーシャル収入、テレビ放映権、マッチデーの売上でカバーするという話は現実的ではありません。
運命の最終日を迎える前に、さまざまな手を打ったのですが、あまりに残念な理由ですべて空振りに終わりました。「テレグラフ」の記事から、主な失敗を抜き出してみましょう。ブルーノ・ギマランイスとの契約に1億ポンドのバイアウト条項を入れたのは、いざというときに売りやすくするためだったのですが、高額の投資を嫌がったビッグクラブはオファーを出しませんでした。
イサクの獲得を目論んだチェルシーに、移籍金は2億ポンドと伝えると、その後コンタクトはなし。本人が残留を希望し、エディ・ハウ監督も売却を拒否したため、昨季プレミアリーグで21ゴールのエースは緊急避難策のリストから消されました。思わず笑ってしまったのは、ジョエリントンに関するスタッフの不手際です。
2月まで現場にいたダン・アシュワースSDは、クラブが誰かを売却しなければならなくなる事態を想定し、ジョエリントンとの契約延長交渉を止めていたとのこと。しかし、マンチェスター・ユナイテッドからのオファーを受け、退団を申し出たSDがガーデニング休暇に入ると、引継ぎがなされていなかったスタッフが長期契約を結んでしまったそうです。
2023-24シーズンの年度会計の最終日となる6月30日。6000万ポンドの利益を必要としていた彼らの手元に、オファーは1件もなかったといいます。子どもの頃からリヴァプールファンだったアンソニー・ゴードンに代理人が移籍を勧めると、テンションが上がったウインガーは、イングランド代表のチームメイトに「行きたい!」といっていたのですが…。
ダルウィン・ヌニェスとルイス・ディアスを擁するクラブは明らかに関心がなく、口頭であまりにも安い金額を伝えてきただけだったそうです。1週間前にリヨンからの4000万ポンドのオファーを拒否したヤンクバ・ミンテは、ノッティンガム・フォレストもNG。「エヴァートンかブライトンなら」といっていたウインガーに手を差し延べたのは、ブライトンでした。
突如現れたエンジェルの3000万ポンドで、残りは3000万ポンド。ヤンクバ・ミンテを獲れなかったノッティンガム・フォレストが、エリオット・アンダーソンにも興味があるという話が聞こえてくると、「左のインサイドでジョエリントンとジョー・ウィロックの3番手。出場機会は限られる」と説得された21歳の生え抜きが移籍を決断しました。
大混乱だった経営ボードに、彼を残してほしいというエディ・ハウ監督のオーダーなど届くはずがありません。3500万ポンドの移籍金が確定しても、利益は6000万ポンドに到達しなかったのですが、最後のスーパーイリュージョンで見事、クリアとなりました。「マンチェスター・ユナイテッドと揉めていたダン・アシュワースの補償金」。まさかこれが、切り札になるとは…!
もうひとつのデッドラインデーが夏の風物詩になると、長年サポーターに愛されてきたホームグロウンの選手たちが、売価が全額利益になるために売られるケースが増えてしまいそうです。チェルシーはコナー・ギャラガ―を手離すのか。マンチェスター・ユナイテッドは、ラシュフォードの経済的なメリットを重視するようになるのか。
マグパイズは最終日に慌てたためにドラマになりましたが、若手を続々と売ったチェルシーも同じ考え方で動いています。会計上の赤字ではなく、移籍金のマイナスやサラリー総額にキャップをはめたほうが健全になりそうです。そうなると、サステナビリティというPSRの本質からはズレてしまうのかもしれませんが…。現状、明快な改善策はありません。
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