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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

痛かったのはカンテだけでなく「マフレズ不振」「ウォルシュ退団」…レスターに巻き返し策はあるか!?

勝ち点足りて礼節を知る、とでもいいましょうか。久しぶりの快勝でプレミアリーグ4位のアーセナルに勝ち点2差としたモウリーニョ監督が、敗れたレスターのラニエリ監督をおとなしくフォローしていました。「彼ら(=レスター)は、落ち着くために充分な勝ち点を得ることができるだろう。ラニエリ監督は、昨シーズンのFIFAの年間最優秀監督。妥当な受賞だ。彼の仕事は、サッカー界に長く語り継がれるべきものだ。みんなレスターを忘れないだろう。称賛に値するよ」。おっしゃるとおりです。前シーズンの4月まで最下位にいたチームをプレミアリーグ優勝に導いたラニエリ監督の奇跡的な偉業について、その価値を低く見積もる人はいないでしょう。素晴らしい監督でした。ただしそれは過去形、「昨季は」です。ジョークを連発しながら、ピザパーティやクリスマス旅行、1週間のごほうび休暇でチームを盛り上げていた指揮官は、1年前とは逆の奇跡に震えています。

迷えるイタリア人監督と輝きを失った選手たちは、プレミアリーグ優勝クラブが翌シーズンに降格という前代未聞の事件を起こしてしまうのでしょうか。降格圏の18位と勝ち点1差。大量補強で元気になったハル・シティと、最終ラインに必要なメンバーを補充したクリスタル・パレスは上がり目があり、スウォンジーはリヴァプールを敵地で破り、マンシティをドロー寸前に追い詰めました。最下位サンダーランドもここ2試合は1勝1分。エンディディとモラ・ワグを獲得したものの、薄い最終ラインからルイス・エルナンデスとシュルップを失ったレスターは、ボトム5では最も上昇のためのトリガーを欠いたチームに見えます。

Chelsea are 30 points better off than at this stage last season. Leicester have 30 points fewer. 」。プレミアリーグ24節終了のチェルシーは昨シーズンより勝ち点が30も多く、レスターは30少ない(=正確には29)という状況を「The Kante effect」と紹介しているのは、「BigSport」のツイッター。レスターからチェルシーに移籍したカンテは、「昨季あったのに今はなくなったもの」としてわかりやすいのですが、豊富な運動量で相手のチャンスの芽をつぶしていたセントラルMFの移籍は、「レスターが優勝を狙えない理由」ではあっても、ここまで低迷する理由ではないのではないかと思います。

他の10人が力を発揮できていれば、代役のアマーティやキングが多少足りなくても、ヨーロッパリーグ出場権争いには参加していたでしょう。カンテと同じか、それ以上に大きいのはマフレズの不振です。昨季プレミアリーグで17ゴール11アシストの選手が、PK3発のみでアシストわずか2本となっては、ゴール数の激減は必至です。評論家からより批判されているのは5ゴールしか決めていないヴァーディですが、彼に出てくるラストパスが少なくなっているのを見逃してはいけません。レスターの過去3年の戦績を見てみましょう。得失点は最下位だった2014-15と同じで、攻守両面で問題を抱えているのがわかります。

【レスター・シティ 過去3年のプレミアリーグ24節終了時戦績】
2014-15シーズン=20位/勝ち点17 4勝5分15敗 21得点38失点
2015-16シーズン=1位/勝ち点50 14勝8分2敗 44得点26失点
2014-15シーズン=16位/勝ち点21 5勝6分13敗 24得点41失点

マフレズに脅威がなくなれば、どうなるか。サイドから押し込まれます。右SBのダニー・シンプソンは、昨季は食い止めていたクロスを許すようになり、サイド攻撃に強かった守備陣は混乱し始めます。運動量に定評があったオルブライトンも精彩を欠き、フクスが孤軍奮闘になることが増えた左サイドも、同様に弱体化。縦のボールには強い一方で横と裏は微妙だったウェズ・モーガンとフートが耐えられたのは、カンテとSBが周囲をフォローしてくれていたからです。かくしてレスターの守備は、2年前の強度に逆戻り。シンプソン、フート、ウェズ・モーガン、フクスという平均年齢31歳以上のレギュラーを見直さず、ルイス・エルナンデスを加えただけだった夏の補強は失敗でした。カンテの後釜として期待したナンパリス・メンディの長期離脱という不運はあったものの、弱点となりそうなポジションに適切な強化をできなかったという意味では、レスターの最大の痛手は「プレミアリーグ屈指のスカウト、スティーヴ・ウォルシュをエヴァートンに持っていかれたこと」だったのではないかと思います。

さあ、どうしましょうか。いなくなった人々の素晴らしい仕事を振り返っているだけでは、プレミアリーグ残留は果たせません。ラニエリ監督は、チェルシー時代に名づけられたティンカーマン(こねくりまわし屋)ではないことを、いま一度証明したほうがいいでしょう。昨季のフォーメーションに戻し、ドリンクウォーターとエンディディでバイタルエリアを埋める守り方を徹底させるべきではないでしょうか。しかし…。考えれば考えるほど、後ろの頭数と個性のバリエーションが足りないことに気づかされてしまい、変化をもたらすのが難しいですね。率直にいえば、下位のなかでレスターがいちばん策に乏しく、厳しそうにみえるのですが、個々のポテンシャルが高いのも間違いありません。ここは、モチベートも含めてラニエリさんの手腕に賭けるしかなさそうです。

チャンピオンズリーグが再開すれば、選手たちは、1年前に自ら紡いだおとぎ話の素晴らしさを思い出すでしょうか。岡崎慎司がいることもあって、常に注目し、応援してきたチームです。プレミアリーグ王者のここからの巻き返しに期待したいと思います。

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