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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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まさかVARがミスリード?マンチェスターダービーの誤審のプロセスを知って空を見上げた朝。

こんなに早く「間違ってた、ゴメン」といわれても、困惑するばかりです。オールド・トラフォードのプレミアリーグ4節、マンチェスターダービーの決勝ゴールについて、レフェリーの統括組織であるPro Ref(旧PGMOL)が誤審だったと認めました。被害者となったマンチェスター・ユナイテッドに即座に謝罪したそうですが、菓子折りも3ポイントもいただけなかったようです。

あらためて、ハーランドのゴールを振り返ってみましょう。左サイドでキープしたセメンヨが、外からオーバーラップしてきたグヴァルディオルに預けたのは60分。レフトバックの左足のクロスはドルグのつま先に当たり、ファーに流れていきました。エンソ・フェルナンデスのダイビングヘッドは届かず、外で待っていたハーランドのハーフボレーがネットに突き刺さりました。

決まった瞬間、エンソ・フェルナンデスと競ったリサンドロ・マルティネスが手を挙げ、アシスタントレフェリーもオフサイドを示すフラッグを掲げました。マンチェスター・ユナイテッドのCBから、ハーランドのポジションとラインの関係はわからなかったはずで、チェルシーから来たMFは明らかに出ていたと主張したかったのでしょう。後で振り返ると、彼の抗議は正解です。

問題は、アシスタントレフェリーのほうです。フラッグの対象はハーランドの足だったのか、エンソの関与だったのか。Pro Refの公式発表は、「VARのマット・ドノヒューは、グヴァルディオルがクロスを上げた際に明らかにオフサイドだったフェルナンデスが、ボールに触れたかどうかのみに注目していた」。関与の有無という観点がなかったため、誤審となったといっています。

アシスタントレフェリーとマイケル・オリヴァーのやりとりは公表されておらず、「レフェリーはオフサイドを取ってゴールを認めなかった」「VARがドルグとハーランドの足の位置を精査し、オンサイドと指摘」「エンソについてはボールに触れていないというジャッジのみで、関与をチェックするオンフィールドレビューの提案はなかった」というプロセスだったようです。

なぜ、アシスタントレフェリーにこだわるかというと、フラッグの対象がエンソだったら、「最初のジャッジは正しかったのに、ホークアイやSAOT(半自動オフサイド判定)など最先端テクノロジーを駆使したVARがミスリードした」という話になるからです。どんなに精緻なシステムを導入しても、人間の主観が入ると限界があることを証明してしまった可能性があります。

ただし今回の件について、マイケル・オリヴァーとVARをガン詰めする気にはなれません。問題の本質は、あまりにも複雑で多角的なチェックが必要とされる状況のなかで、「早く」「正確に」を同時に求められることにあるからです。「早押し大喜利で大爆笑をとる」というミッションを突然与えられ、あらゆるお題をクリアできる芸人はいないでしょう。

キックポイントはグヴァルディオルかドルグか。マン・シティのSBなら、ハーランドがオフサイドで終わりです。中央で残っていたエンソはボールに触ったのか、関与したといえるのか。私もまた、MFの関与という観点がなかった「誤審チーム」のひとりですが、「リサンドロ・マルティネスとラメンスが影響を受けたようには見えなかった」と言い訳させてください。てへぺろ。

左からのクロスの瞬間をチェックしつつ、オフサイドポジションだった中央の選手のダイビングヘッドと、逆サイドのストライカーのハーフボレーをコンマ数秒で見極めるのは不可能でしょう。検証のプロトコルを熟知したVAR、ホークアイのリプレイ担当オペレーター、SAOTのエンジニアにとって、両チームのサポーターを待たせているというプレッシャーは苛烈だそうです。

プレミアリーグのレフェリーを10年務め、VARも100回以上の経験があるグラハム・スコット氏が「アスレティック」で一連のプロセスをレポートしているのですが、自身がリアルタイムで成り行きを追っていた時間を振り返って、「私もVARと同様に、エンソ・フェルナンデスの関与の有無という視点を失っていた。ハーランドがオフサイドではないとされたことに気を取られてしまった」と吐露しています。

現場で難題を突き付けられているスタッフにペナルティを科しても、より経験値が低い若手が代わりにいじめられるアナザーワールドが到来するだけです。「すんません!」といわれたら、「手ぶらなのね、ふーん」といじりつつ、泣き笑いで受け入れるしかありません。「スーパーAI関与チェッカー」が完璧にさばく未来を妄想しながら、敗戦の激痛に耐えるしか…イタタタ。


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