イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

主力不在でも勝てるチームがリーグを制す…プレミアリーグのターンオーバー論(2)

前稿「主力不在でも勝てるチームがリーグを制す…プレミアリーグのターンオーバー論(1)」からの続きです。プレミアリーグには冬休みもなく、カップ戦が2つ存在するなど他国に比べてゲーム数が多いので、主力選手が試合に出続け、トップレベルのパフォーマンスを維持するのが最も難しいリーグです。そこであらためて、「主力不在でも強いチームに必要なエッセンスとは何なのか?」というテーマのもと、各クラブにおける「主力依存度」「控え選手レベル」「ポジション流動性」「控え選手の場数」という指標を、5段階評価などをつけつつ見ていきたいと思います。多分に私見や推測が入りますが、あくまでも推測はそれとわかるように書き、事実と反することをいうのは極力避ける所存ですのでご容赦ください。ここから何か、傾向のようなものが見えてくれば幸いです。

■マンチェスター・シティ
⇒主力依存度★★★★★ 控え選手レベル★★★★
ポジション流動性★★  控え選手の場数★★

先にも書きましたが、このチームはコンパニ、ダヴィド・シルヴァ、ヤヤ・トゥレという「3本の背骨」が中心。これだけクオリティが高い選手が同時に揃っているのは強みではあるのですが、彼らがいなくなったりパフォーマンスが落ちたりすると、チーム全体の質が下がります。もうひとつ気になるのは、ポジションの流動性。このチームでさまざまなポジションをこなせるのはアグエロとヤヤ・トゥレぐらい。こうなると、チームの層を厚くするためには各ポジションに最低2人を配置するなど人数が必要となり、頭数が増えれば、当然控え選手のレベルや場数は下がっていきます。

テベスやギャレス・バリーが扱いの改善や出場機会を求めてチームを離れたことは、「ポジションが固定されているのでゲームに出られない選手が多い」「レギュラーと控えの扱いに差がある」というこのチームの現状を象徴する出来事のように思います。また、DFラインについては決定的に人材不足です。

■チェルシー
⇒主力依存度★★★★ 控え選手レベル★★★★★ ポジション流動性★★★  控え選手の場数★★
モウリーニョ監督は現代サッカーの申し子のようにいわれがちですが、実は結構コンサバで、どのクラブでも「まずはDFラインのメンバーを固める」「チームの軸となる選手を決める」というチームづくりをしてきました。ダヴィド・ルイスやイヴァノヴィッチ、ラミレス、シュールレ、デブライネなど、さまざまなポジションをこなせる選手はいるのですが、それでも起用は中心選手偏重になりがち。エッシェン、アスピリクエタ、ファン・ヒンケル、ベルトランドはほとんどプレミアリーグに出ておらず、ここにデンバ・バやウィリアンを加えて全部足しても出場時間は90分に満たず、既にエトーひとりに追い越されています。

先のバーゼル戦でウィリアンとファン・ヒンケルをスタメン起用したように、チャンピオンズリーグ、国内カップ、プレミアリーグでうまく選手を使い分けようとしているのかもしれませんが、試合数の多いプレミアリーグでレギュラー固定させ過ぎると、普段出ていない選手が多くなる他の大会で足をすくわれる機会が増えそうですね。まだ4試合しか消化していないのでこれからですが、「若手を育てる」「チーム全体の成熟度を上げ、強くする」「それらをやりながら勝ち続ける」という難易度の高い命題に取り組むモウリーニョさんに注目しつつ、彼が強い軸を求めていることに関しては懸念があります。マタやF.トーレス、デンバ・バは、もう少しうまく使えるだろうに…と。

■アーセナル
⇒主力依存度★★★ 控え選手レベル★★★ ポジション流動性★★★★  控え選手の場数★★★★
私が声を大にしていいたいのは「ヴェンゲル監督は選手起用と育成は抜群にうまい!」ということであります。サニャやヴェルマーレンは中も外も守れて、ジェンキンソンは左右をカバー。ギブスとモンレアルを後ろと中盤で使い、ウィルシャー、ラムジー、ロシツキ、チェンバレンはセンターMFとトップ下、サイドハーフ。ジルーがいなければCFにはポドルスキかウォルコットを起用。この流動性があるおかげで、練習やコンディションづくりに問題があるんじゃないかといいたくなるくらいの大量のケガ人が出ても、涼しい顔でチャンピオンズリーグを勝てるわけです。試合途中で選手やフォーメーションを大胆に変えることを好まず、ヒディンクやビエルサ、ベップ・グアルディオラのようなマジックと無縁なため「ヴェンゲルは古い」「戦略がない」などという方がいますが、いやいや、このチームづくりは当代随一でしょう。何せ、絶対的なレギュラーで外せない選手は、現状ではコシールニーひとりですから。ヴェンゲル監督の起用法に不満をもってチームを去る選手がいないのもうなずけます。どの選手も使う。フェアに使う。一度使ったら、多少ミスがあっても信じてまかせる。マネジメントとして重要なことが徹底されていると思います。

今までしばらくタイトルを獲れなかったのは、そうはいってもトップレベルの選手が少なく、メンバーを絞り過ぎたから。今季はエジルも入り、1月にFW補強をもくろんでいるという話もあります。ケガ人が復帰するまで成績を落とさず耐えられれば(もうすでに耐えてますが)、今季のガナーズには期待していいのではないでしょうか。エミレーツには「主力不在でも強いチーム」のためのエッセンスがあふれています。

すみません、またもや長くなりました。次回「サー・アレックス・ファーガソンが勝ち続けた理由…プレミアリーグのターンオーバー論(3)」でさすがに最終回です。トッテナム、リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッドに続きます。

—–

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


コメントを残す