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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

サー・アレックス・ファーガソンが勝ち続けた理由…プレミアリーグのターンオーバー論(3)

さて、前回まで2回にわたり、「 主力不在でも勝てるチームがリーグを制す…プレミアリーグのターンオーバー論(2)」をやってまいりましたが、今回、いよいよというかさすがにというか、とにかく最終回です。前回は、チェルシー、マンチェスター・シティ、アーセナルのチーム作りや起用について触れましたが、今回はトッテナム、リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッドです。

「ターンオーバー論」という大げさなタイトルで記事を書くにあたり、私の頭のなかにあったのは、サー・アレックス・ファーガソンとユップ・ハインケスの姿です。それぞれマンチェスター・ユナイテッドとバイエルン・ミュンヘンで三冠を獲得し、昨季限りでクラブを去ったふたりの名将は、スタメンを激しく変えるタイプという共通項があり、エース格の選手をスタメンから外してもチームのスタイルやレベルが変わらないところも似ています。「レギュラーを休ませるためのターンオーバー」と、「常時勝つチームを作るためのターンオーバー」は、根本的に違うのではないか。最近は、そんな問題意識を持ちつつ、プレミアリーグやチャンピオンズリーグを観ています。

■トッテナム
⇒主力依存度★★★ 控え選手レベル★★★★ ポジション流動性★★  控え選手の場数★★★★
個人的に、ヴィラス・ボアス監督には何かと辛口になりがちなのですが、フラットにまいりましょう。今季のトッテナムは、ベイルを売却した資金で大型補強を進めました。ソルダード、パウリーニョ、シャドリ、カプエ、エリクセン、ラメラ、キリケシュ。書いているだけでもワクワクするような選手たちですが、冷静に見れば、DFが足りないですね。開幕4試合でわかることは、「トップはとにかくソルダード」「不満がたまりそうなMFは、パウリーニョ(とデンベレ?)をのぞいて均等ローテーション」「枚数が足りないDFラインはメンバー完全固定でがっちり熟成」といったところです。このチームもユーティリティのある選手が少なく、サイドもCFもセンターもスペシャリストばかり。比較的、いろいろこなせそうなのはシグルズソンとラメラぐらいです。

チェルシーでコンセプチュアルなチームづくりを通そうとして、選手との間に軋轢が生じて失敗したヴィラス・ボアス監督は、トッテナムに来た当初、GKロリスの起用法で二の轍を踏みそうになり、今では真逆の対話&モチベート路線。中盤の選手の出場時間を見ると、中心に据えようとしているパウリーニョ以外は、一部の評価が低い選手を除けば全員同じ水準です。実際に、こういったローテーションがいいと思ってやっているのか、戦略より配慮が勝った結果なのかはわかりませんが、これでうまくいくのであれば、ヴィラス・ボアス監督の戦略がチームに浸透している証拠です。さらに選手育成の視点が上がれば、彼は40歳を過ぎた頃にはヴェンゲルさんのような監督になっているかもしれません。ベイルに依存していた昨季より、存外このほうがうまくいくのではないでしょうか。後ろの選手の疲労が心配なものの、「主力不在でも勝てるチームづくり」という観点では合格点だと思います。

■リヴァプール
⇒主力依存度★★★ 控え選手レベル★★ ポジション流動性★★★★  控え選手の場数★★★★
戦略性という観点では、ブレンダン・ロジャース監督はモウリーニョと勝負できるくらい優秀な監督だと思います。今季のリヴァプールは積極的に補強をしましたが、いかんせんヨーロッパで戦えないチームだけに、一流どころを獲得するには至らず。とりわけムヒタリャンをドルトムントに持っていかれたのは痛かったものの、それでもイアゴ・アスパス、コロ・トゥレ、モーゼスなど、即戦力として計算できる選手が揃いました。移籍市場前半戦は攻撃の選手の獲得が目立っていたこともあり、私は本ブログで「後ろを獲らないと」と書いていたのですが、後半戦でシェルヴェイ、ダウニングを出し、若手CBを2枚補強したため、フタを開けてみれば「前は固定メンバー、DFはローテーション」という状況になっています。

それでも今後、スアレスが戻り、コウチーニョのケガが癒えれば、前線においても相手の戦力に合わせた思い切った采配が増えてくるでしょう。先日のスウォンジー戦で右サイドが狙われていると見るや、ウィズダムを諦めてコロ・トゥレをSB起用したように、リアリストでもあるロジャース監督は相手の意図を読んだ対応が早いです。実はリヴァプールは複数ポジションをこなせる選手が多く、イアゴ・アスパス、ルーカス、ジェラード、スアレス、スタリッジ、コウチーニョらは前後左右に自在に動かせるので、多少のけが人には充分対応可能です。何しろ、スアレスを欠きながらトップを走っているチームですから。今季は、うまくローテーションをかませながら、調子を落とさずに走り切れるのではないかと見ます。

ただしひとつだけ、埋まらない穴があります。スティーブン・ジェラードには、くれぐれもケガに気をつけてもらわないと…。

■マンチェスター・ユナイテッド
⇒主力依存度★★★ 控え選手レベル★★★★ ポジション流動性★★★★★  控え選手の場数★★★★
そして最後にプレミアリーグのディフェンディング・チャンピオンです。過去20数年にわたり、サー・アレックス・ファーガソンがこのチームを勝たせ続けていたわけですが、そのサッカースタイルはオーソドックスな4-4-2のサイドアタック。1点豪華主義で時折ワールドクラスを連れてくるものの、大量補強することはなく、移籍市場においては地味。では「サー・アレックスの何がすごかったか」といえば、それがまさに「主力が抜けても勝てるチームづくり」だったのです。

象徴的なのが、スコールズの話です。彼曰く「前の試合で活躍しても、突然スタメンを外れることがあり、その理由は監督本人しかわからない。誰もスタメンを予想できない。自分はいつも試合に出たかったので、不満がたまって退団を願い出たこともあった」。サー・アレックスは、それがエースであろうと中盤の軸であろうと、時々意図的に入れ替え、さまざまな組み合わせを経験させることによって、どんなメンバーでもレベルが落ちないチームにしようとしていたのだと思われます。

昨季、このチームでスタメンと呼べる選手は、エヴラとファン・ペルシ、キャリックのみ。キャリックについては、ダレン・フレッチャーがいれば、常時出場させることもなかったでしょう。ルーニーやリオですら普通にベンチにいる時があり、前回の試合からDFを総入れ替えすることすらある。もちろん、これを支えているのは、全員が2~3のポジションがこなせるくらいのユーティリティの高さです。マンチェスター・ユナイテッドは連敗が少なく、調子の波がさほどないチームですが、長いリーグ戦を戦ううえでは、レギュラーとサブの垣根を低くして、さまざまなコンビネーションに対応できることが重要なのだと思います。

さて、しかし。今季からは、モイーズ監督です。ここまで観る限り、彼はトップクラブの監督のなかで、いちばんの「レギュラー固定派・ポジション固定派」です。プレシーズンに「基本は4-3-3」といっておきながら、ルーニーの調子がいいと見るや、2トップにしているあたりも柔軟というよりはブレているようにみえます。香川真司やナニ、チチャリートなど、戦力として期待されているとはとても思えない起用しかされていない選手も多く、この状態が続けば、選手の離反も増えてしまいます。チャンピオンズリーグやFAカップが始まり、試合数が多くなれば出場機会も増えるのかもしれませんが、それでもあのレベルの選手たちが国内カップのみで使われ続けたら、さすがに今後の身の振り方を考えるでしょう。モイーズ監督が、たくさんのタレントをうまく使いこなし、どんなメンバーでも王者の試合ができるチームを作れるかどうか。まだ不安はありますが、これからの采配に期待します。

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“サー・アレックス・ファーガソンが勝ち続けた理由…プレミアリーグのターンオーバー論(3)” への2件のフィードバック

  1. It’s much easier to understand when you put it that way!

  2. That’s a knowing answer to a difficult question

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