一貫性、スピード、コミュニケーション…関係者と現場が指摘するVARの改善ポイント。
新しいシステムには議論が付き物。2019-20シーズンより登場したVARは、数々のフラストレーションと論争、賛同を巻き込みながら、プレミアリーグのピッチに溶け込もうとしています。VARの責任者であるネイル・スウォーブリックさんは、いいスタートを切ることができたと自画自賛し、これまでの運用について10点満点で7点とコメント。「2年以内には8~9点になるかもしれない」「進化させるために、常にオープンな姿勢をキープしており、暴走することはない。フィードバックを受けて、改善すべきポイントを見極めたい」と、楽観的な見方を示しています。
「改善が必要」と語ったのは、今週に入ってからシステムと運用の評価を実施したレフェリーズチーフのマーク・ライリーさんです。冒頭の発言のとおり、一貫性とスピード、コミュニケーションに課題があると認識しているものの、「コンペティションの完全性に影響を与える恐れがあるので、今季の実質的な変更はない」と明言。ベーシックなルールは変えず、運用レベルでの改善を進めていく方針のようです。
プレミアリーグ11節を終えた時点で、ジャッジが覆ったのは27回。そのうち16のシーンでゴールが取り消されています。イギリスメディア「フォー・フォー・トゥー」によると、最も多くの勝ち点を失ったのは、4ポイントのウルヴス。3勝7分2敗で8位のチームは、昨季までのルールなら6位だったと指摘されています。3ポイントをプラスされたクリスタル・パレスは12位から13位に落ち、同じく1勝分をプレゼントされたサウサンプトンは最下位にいるはずでした。2ポイントをロストしたマンチェスター・シティに対して、リヴァプールはプラスマイナスゼロで、12節の直接対決のジャッジが正しかったとすれば、両者の差は7ポイントとなります。
「VARによるジャッジにかけていい時間は30秒~1分にするべき。それを超えるならば、その判定は見直しが必要な誤審でない」(ガリー・リネカー)
「問題は一貫性だろう。ある週末にはペナルティではなく、次の週にはペナルティになる。私にとっては、それが重要なポイントだ」(ジョゼ・モウリーニョ)
評論家の指摘と、クラブの意見はほぼ一致しているようです。「ファンは不幸だ。関係者は改善が必要と考えなければならない」と語気を強めたアストン・ヴィラのクリスチャン・パースローCEOも、「改善が期待されているのは、ジャッジのスピードと一貫性だ。スタジアムにいる私たちにとっては、ジャッジする前、最中、決定後に何が行われたかがわかるコミュニケーションが必要だと思う」とコメントしています。
先般行われた協議に際して、プレミアリーグのクラブから挙がったのは、「オフサイドラインの設定が未だアナログ」「レフェリーがピッチサイドモニターでリプレイを確認したことがない」といった正確性に関する不満や要望でした。「1試合につき、各チーム3回までのチャレンジを導入してはどうか」という声も多く、ジャッジに対してVARのサポートを受けるかどうかをレフェリーが判断している現状を懸念する関係者が多数派となっています。
「1分以内は現実的ではない」「チャレンジシステムは時間稼ぎのツールと化す可能性がある」。プレミアリーグとPGMOLは、レギュレーション変更による新たな混乱を回避し、現状の課題解決にフォーカスする意向です。当面はスピードが上がらなくても、一貫性とコミュニケーションが改善すれば、ファンやクラブの納得感は高まるのではないでしょうか。パーフェクトなジャッジメントには辿り着けなくても、明らかな誤審やモヤモヤ感が減れば、多くの人々がVARの存在をポジティブに捉えられるようになると思います。しばらくは、個別のジャッジに関する論争が続きそうですが、改善に期待しましょう。
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リネカーの意見になるほどと思いました。今までは、正確なジャッジをするのに時間を決めるのはどうかと思っていましたが、リプレイで何度も観ないとわからないレベルであれば、主審の判断に従えばいいのかもしれませんね。