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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

稀代のモチベーターか、過去の人か…「BBC」の記事で気になった「アンチェロッティの光と影」。

後半戦に突入したプレミアリーグの勝敗をチェックすると、勝ち越しているクラブが6つしかないことに気がつきます。リヴァプールが6連勝、マンチェスター・シティは4勝1分1敗。エンディディが負傷してからセインツとバーンリーに連敗したレスターは、3勝1分2敗と踏ん張っています。4位のチェルシーが2勝3分1敗。アンチェロッティを招聘したエヴァートンは4勝2分1敗と復活し、暫定ながらプレミアリーグ7位にジャンプアップしました。ナイジェル・ピアソンの下でようやく落ち着いたワトフォードも、3勝2分1敗で残留ラインを目前にしています。

マン・シティと同等の戦績を残しているエヴァートンの好調ぶりを見た「BBC」が、「アンチェロッティはどのように違いを生み出したのか」と注目するのもよくわかります。記事の中身を紹介する前に、2019-20シーズンの監督交代劇についておさらいしておきましょう。マルコ・シウヴァ監督が指揮を執っていた15節の終了時点では、4勝2分9敗という散々な戦績で降格ゾーンの18位。プレスの種類が複数あり、前線と中盤に複雑なポジショニングを要求するポルトガル人の戦術は、とにかくナーバスでした。

はまれば惚れ惚れするような美しいアタックを展開するのですが、一度歯車が狂えば立て直すのに時間がかかり、選手たちの自信とモチベーションの目減りを抑えられなくなります。42歳の若きマネージャーに、あのまま託していたら、トフィーズは今も同じようなポジションにいたのではないでしょうか。

マージーサイドダービーを5-2で大敗した後、マルコ・シウヴァはあえなく解任。メンタルに問題を抱えたチームにとっては、勝利に向かう情熱を注ぎ込んでくれるダンカン・ファーガソンという後任は最適でした。チェルシーを倒し、マン・ユナイテッドとアーセナル戦をドロー決着という素晴らしいパフォーマンスでつないだ後、CLを3度制した名将がマージーサイドにやってきます。ここで、「BBC」に話を戻しましょう。アリスエア・マゴワン記者のレポートは、アンチェロッティの改革の効果を伝えているのですが、その内容は、バイエルン・ミュンヘンの監督に就任した頃と酷似しています。

「ロボットのようだったマルコ・シウヴァと対照的に、温かさとユーモアがあり、選手をリラックスさせた」「マルコ・シウヴァの長時間の練習は選手たちを疲れさせていたが、セッションは短くシャープで、特定の時間に食事を強制されることもない」「プレースタイルはシンプルになった」「チームは自信と信頼を取り戻した」。そういえば、ペップ・グアルディオラの後継者としてドイツに渡ったときも、モチベーターとしての評価が高く、リベリーらに「マメにコミュニケーションを取ってくれる」「いい関係を築けている」とリスペクトされていました。

これらを読んで私が感じたのは、期待と懸念の両方です。5つのクラブでリーグ制覇を果たしたイタリア人指揮官は、ドイツ王者やナポリを率いたときと同様に最初の1年は評価され、やがて崩れていくのではないか、と。マゴワン記者が伝えるエヴァートンの戦術は、近年のアンチェロッティが解任のシーズンに囁かれる「クラシックなスタイル」です。リシャルリソンとカルヴァート=ルーウィンを前線で組ませる4-4-2は、3試合のつなぎ役としていい仕事をしたダンカン・ファーガソンを踏襲したフォーメーション。サイドアタッカーを中盤のインサイドに加勢させ、ディーニュやシディベの攻撃力を活かすあたりは、守備戦術に長けたセリエA出身の監督らしいアレンジです。

シンプルで自由という評価は、裏を返せば相手チームの弱点を突いたり、展開によって戦い方を変える策略に欠けるということでもあります。バイエルンの選手たちは、自分たちは勝てるサッカーをやっているのかと疑心暗鬼になり、確執が表面化して監督解任に至った際には、「われわれは間違った方向に進んでいると判断した」とクラブにいわしめるほどの状態に陥っていました。ナポリを追われたときは、会長との関係悪化が囁かれましたが、セリエAで2ヵ月もの長きに渡って勝利がなかったのが直接的なトリガーでした。

ダンカンだけでなく、アレックスまで彷彿とさせる「ファーガソンスタイルの4-4-2」を熟成させ、来季はCL出場権を争うレベルに浮上するのではないかと期待が高まります。しかし、その先は…。エヴァートンがデヴィッド・モイーズと同等の成功でよしとするなら、安定的な戦績をキープした名監督としてクラブ史に名を残すかもしれません。ただし、野心溢れるファルハド・モシリさんがひとたび上をめざせば、「ミランで過ごした8年から戦術をアップデートできていない、オールドファッションのモチベーターは2年めに行き詰った」などといった報道とともに終わる可能性も秘めています。

2009-10シーズンにチェルシーでプレミアリーグを制覇して以来、率いたクラブで3シーズンめを迎えたことがない監督は、マージーサイドで成功者として名を残すことができるでしょうか。「BBC」のほめ方が気になってしまい、記事にしてみた次第であります。一時は就任の噂もあったアーセナルのサポーターのみなさんも、興味があるテーマなのではないでしょうか。今はただ、「Let’s see how it goes(どうなるか、見てみよう)」としかいえませんが。

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“稀代のモチベーターか、過去の人か…「BBC」の記事で気になった「アンチェロッティの光と影」。” への1件のコメント

  1. プレミアリーグ大好き! より:

    この後の補強次第な気がしますね
    CLまで勝ち取って成功を収めたと言えるミランとレアルの時はいずれも各ポジションに錚々たるメンバーが揃ってましたから

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