偏愛的プレミアリーグ見聞録

このところファイナンシャルフェアプレーがらみで、プレミアリーグクラブの経営やお金について紹介しましたが、今回もお金のお話です。昨日、「Qoly」が取り上げていたのが、イギリス紙「デイリー・テレグラフ」が報道したQPRの巨額な負債のニュースです。今週、彼らの会計報告があって発覚したというその金額は、昨季だけで何と6450万ポンド（現在のレートで約111億円）！昨季はプレミアリーグで残留争いをしており、無理な投資をしていたのでしょうね。QPRの負債総額は305億円になるそうです。…これは、厳しい。

2012-13シーズンからの比較でいえば、売上高は640ポンドから600万ポンド（約10億3000万円）に減少し、チケット収入は84万ポンドから83万ポンドと微減。このくらいの収入減は、芳しくはないもののよくあることでしょう。問題は負債額で、この1年で8600万ポンド（約148億円）も増えているのです。人件費自体は、585万ポンドから780万ポンドに増えているだけ（といっても、プレミアリーグ降格という状況で職員や選手、スタッフを50人も増やすかという問題はあります）なので、やはり特定の選手の移籍金として支払われたお金なのでしょうね。

もともとこのチームは、峠を越えた元代表や大物選手を獲得することが多く、ジョーイ・バートンやショーン・ライト・フィリップス、ボビー・ザモラなどが在籍。激しかったのは2012-13シーズンで、GKジュリオ・セーザル、パク・チソン、ロイク・レミーなどの代表クラスを次々と獲得。今季も、リチャード・ダンや、レンタルながらもクラニチャール、アス＝エコトなどを獲っており、「これで勝てないとこうなります」ということなのでしょう。…やはり、厳しい。

おそらく、彼自身もまた多額の負債の一部だと思われる「稀代のモチベーター」名将ハリー・レドナップ監督も、QPRを救えず。昨季のプレミアリーグ降格に続き、今季もチャンピオンシップ4位とパッとしません。チャンピオンシップでは、1位と2位がプレミアリーグ昇格。3位～6位のチームはレギュラーシーズン終了後のプレーオフで残るひとつの椅子を争うことになり、今の調子では確率4分の1というのは悲観的な数字でしょう。来季、プレミアリーグに滑り込めればマンチェスター・ユナイテッドやチェルシー、アーセナルとのゲームに多くの観客を呼び込め、テレビ放映権料もがっぽり入ってきますが、このままチャンピオンシップに残ったら…。ファイナンシャル・フェアプレーにより、長期の選手獲得禁止や、4700万ポンド（約81億円）の罰金を受ける可能性があるそうです。「借金が多いから罰金」というのも、せつない話ではあります。

QPRのお話は、プレミアリーグの下位クラブにとって、他人事ではないでしょう。昨年、ヴィンセント・タンオーナーがクラブをシンガポールで株式上場させようとして、赤字が多く上場基準を満たさないという理由で断念したカーディフにも同じ匂いがします。そもそも、勝手にチームカラーを変えてしまうというフェアプレー精神がなさそうなオーナーは、ファイナンシャルフェアプレーをご存じなのでしょうか。

それにしても、300億の負債を返せるか、クラブを破たんに追い込むかを背負ってチームを指揮するハリー・レドナップのプレッシャーは並大抵ではないでしょうね。自分がその立場だったら、満足に眠れる夜はほとんどないと思います。もう、このうえは「がんばってください！」という月並みな言葉しか浮かびません。（ハリー・レドナップ　写真著作者/James Boyes）