偏愛的プレミアリーグ見聞録

3月4日に厚生労働省が発表した日本のコロナウィルス感染者数は257名で、死亡者6名。イギリスは51名に留まっており、死者はいませんでした。「スポーツイベントを中止する理由はない」という姿勢を崩さなかったイギリス政府に対し、監督や選手の感染が発覚したプレミアリーグは、FAやEFLと協議を行い3月12日に週末のゲームの中止を発表。この後、イギリスにおける罹患者は急速に増え、3月22日には日本が1046名（死亡者36名）で直近の感染数を鈍化させているのに対して、5018名の感染者と233名の死者が発生する事態に至りました。

当初は、4月3日までの中断としていたプレミアリーグは、4月末に延期しており、現在は5月の再開も危ぶまれています。そんななかで、一昨日の「テレグラフ」が、独占と銘打って協議中の新たなレギュレーション案を報道。「Exclusive: Premier League considers plan to resume games from June 1 and start 2020-21 season in August（プレミアリーグは6月1日からのゲーム再開を計画しており、2020-21シーズンは8月スタートとする）」と題された記事によると、現在決定しているのは「2019-20シーズンを完了させる」という1点であり、このたびの案も「目標」としかいえないようです。

さっそく、6月1日再開のプランを具体的に紹介しましょう。6週間を目処として、プレミアリーグ9節分とFAカップのすべての試合が開催され、終了予定は7月11日前後。FAカップまで実施するチャレンジングな案を本線としているのは、「スカイスポーツ」「BTスポーツ」に突き付けられた要件を満たすことができ、テレビ放映権料の減額を回避できるからです。4週間の充電と準備を経て、新シーズンの開幕は8月中旬。イギリスの放送局と海外メディアと握っているテレビ放映権料は、2019年からの3シーズンで92億ポンド（約1兆1900億円）に膨らんでおり、2シーズンめのオーダーをクリアするためには通常どおりのスタートが基本条件です。

このプランにおける最大の懸念は、シーズン終了が6月30日をまたいでしまうことでしょう。FIFAがこの件に介入する可能性は低いと見做されており、プレミアリーグの裕福なクラブは短期の契約延長でさばけそうですが、選手のサラリーがクラブの売上の107％となっているチャンピオンシップのクラブにとっては由々しき事態です。EFLが全クラブに5000万ポンドを提供するレスキューパッケージを実施し、選手のサラリー総額を週6000ポンドに制限するルールが検討されていますが、最適解を導き出すためには、プレミアリーグやFAとの協議を続ける必要があります。

「6月末までに終わらせたい。そこを過ぎると、われわれは法的なチャレンジと問題に覆われてしまう（サウサンプトンCEOマーティン・セメンス氏）」といった声もありますが、すべてはコロナウイルスの蔓延状況次第です。イタリアとスペインに甚大な被害が発生しているなかで、プレミアリーグもさらなるイレギュラーな対応を迫られる可能性があります。続報があれば、随時レポートさせていただきます。