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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

「国民健康サービスの支援」「クラブ経営の危機回避」…賃金カットの是非を巡る対立の論点整理。

先の記事で、ウェイン・ルーニーが「サンデータイムズ」に寄稿したコラムを紹介しました。「看護師への支援や人工呼吸器の提供を求められれば、喜んで貢献したい。自分のお金が、どこに行くのかわかっているのならば」と語っていたマンチェスター・ユナイテッドのレジェンドは、プレミアリーグが発表した「選手に対するサラリー一律30%カット」という策は、充分な収入を得ていない選手たちを痛めてしまうと反論しています。

「BBCラジオ」の番組に出演し、「キャプテンたちを統率するジョーダン・ヘンダーソンは、何かをなすために懸命に働いている」と話したダニー・ローズも、「フットボールに関わっていない人々が、選手は自らのお金で何をすべきと諭すのは、大きなお世話だと思う」とコメント。ウルヴスのキャプテン、コナー・コーディは、「サッカー選手として、できる限り多くの人々を助けたい。しかし、サラリー30%カットという案が出てきており、われわれは毎日のように裁かれている。今こそ、前進したい。寄付をするべきと考えている」と、給与削減以外のアプローチに言及しています。

彼らの心情を代弁しているのは、スパーズOBのジャーメイン・ジェナスさんです。「プレミアリーグの選手たちに向けられた批判は、絶対ジョークだろう」と語った元イングランド代表は、「彼らは、お金の行き先を制御したかっただけだ」と喝破しています。

「選手たちがサラリーの引き下げを行った場合、基本的には受益者はクラブだ。彼らの関心事は、このお金がどこに行くか。使い道に対して、影響力を持ちたいと思っているのだ。NHS(国民保健サービス)や学校の給食に行くのか?それらをコントロールしたいのだろう。彼らは、プレミアリーグに支配されることを望んでいない。お金がどうなったかわからなくなるからね」

「BBC」が紹介しているこれらのコメントを読むと、クラブとの契約によってサラリーを得ている選手たちの言い分に傾きそうになるのですが、プレミアリーグが危機感を募らせているのは、中小クラブの経営が立ちいかなくなることです。バーンリーのガーリック会長が、このたびのシーズン中断によって最大で5000万ポンド(約66億5000万円)の減収となると発表。「8月までにシーズンが再開され、次の開幕の目処が立たなければ資金は底をつく。数週間前には予想できなかった前例のない状況に陥っている。ひとつのクラブの問題ではなく、プレミアリーグ全体の問題だ」と対応を請うています。

リヴァプールが、休業となったスタッフに対してサラリーの80%が給付される政府のスキームを利用したことに対して、「より厳しい状況に置かれている業界があるのに、なぜ裕福なクラブが国の制度を使うのか」と批判されていますが、彼らもまた、先の見えない状況に対して最大限の手を打つべきと決めているのでしょう。マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、エヴァートンが制度を使わないと公言していることもあり、リヴァプールやトッテナムが悪者になっていますが、どこかのクラブが「給与が払えないので大量リストラをする」と発表すれば、批判の矛先はそちらに移るはずです。

ビッグクラブでさえも追い詰められているような状況を見て、「速く、スピーディーに、フェアに対応するなら賃金一律カットが有効」と考えたプレミアリーグを、頭ごなしに非難することもできません。彼らに足りなかったのは、対話でしょう。「医療体制の崩壊を防ぎたい国に対して、どんな支援をするのがベストなのか」「経営危機を迎えているクラブをどう支えていけばいいのか」。大きな論点が明確になったなかで、選手たちとクラブ、プレミアリーグが冷静に協議し、それぞれを解決に導くための適切な配分が見出せればいいのだと思われます。

「本来なら、クラブが選手と向き合い、生き残るために必要なことなんだと説明するべき。選手は、それを受け入れる」。ウェイン・ルーニーの言葉に、ここ数日の議論がこじれてしまった理由が内包されており、今後の歩み寄りの糸口もそのなかにあるのだと思います。全世界の人々の生命と健康が第一であることを前提としながらも、プレミアリーグファンとして、破産宣告を受けるクラブが出ないよう、しかるべき手が打たれることを願っております。


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