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モウリーニョ監督は虎を再生できるのか…ファルカオのチェルシー移籍で、問われる3つの力

古くは、ユヴェントスのパオロ・ロッシ。プレミアリーグではマイケル・オーウェン。サッカーの世界には、若くして輝きを失ってしまう「早熟の天才」がしばしば現われます。1982年ワールドカップスペイン大会で、2次リーグに入ってからハットトリックを含む6ゴールと固め獲りを決めて得点王になったロッシは、13ゴールを挙げた1983-84シーズンが最後のトップフォーム。28歳だった彼は、その後の3シーズンでリーグ戦9ゴールしか残せずにピッチを去りました。

19歳で迎えたワールドカップフランス大会で世界にインパクトを与える2人抜きゴールを決め、ワンダーボーイといわれたオーウェンは、2006年のワールドカップで重傷を負ってからはスピードに陰りが見え始め、プレミアリーグ2007-08シーズンの11ゴール以降は普通のストライカーになってしまいました。「オーウェンはチームに貢献してくれるはず」と手を差し伸べたサー・アレックス・ファーガソンは、3年間で5ゴールという数字に、ポジティブな回想を添えることはできないでしょう。

さて、29歳のファルカオは、オーウェンなのか、復活するのか。昨日、チェルシーが、このところ結果を残せていない「エル・ティグレ(虎)」ラダメル・ファルカオの獲得を発表しました。以前に、総額30億円程度で期限付き移籍となると報じられておりましたが、条件面では特段問題なくスムーズに着地したようです。「彼を再生させてあげたい。イングランドの人々が、マンチェスター・ユナイテッドのファルカオを本当の彼だと思っていると考えると、胸がえぐられるようだ」と語ったモウリーニョ監督の姿は、オーウェンを引っ張ってきたサー・アレックスとオーバーラップします。

昨季プレミアリーグでは、26試合4ゴールと完全に空振り。明日ファイナルが行われる南米選手権でも、ファルカオは文字通り何もできずにチリを後にしました。2014年のワールドカップブラジル大会前に負った左膝前十字靭帯損傷は、1996年のアトランタ五輪直前に、当時の日本オリンピック代表の小倉隆史がジャンプして落下したきり動けなくなったアクシデントと、すぐ近い部位の重傷です。損傷ではなく断裂だった小倉は、「レフティ・モンスター」といわれたキレのいい動きと強烈なシュートを取り戻せず、その後はJリーグで年間10ゴールを一度も記録することのないまま、最後はJ2でキャリアを終えました。私は、ファルカオはオーウェンや小倉のように、大きなケガによって大事なものを失ってしまったのではないかと思っています。

この移籍は、3つの力が問われています。ひとつは、ファルカオ自身のストライカーとしての実力。いまひとつは、モウリーニョ監督の指導力・再生力。もし、ファルカオが復活すれば、マンチェスター・ユナイテッドの選手を評価する力が疑問視されるでしょう。先頃、ディエゴ・フォルランがディ・マリアの不振に触れ、「私の友人のリケルメがバルセロナ時代に彼と過ごした時のことからわかるが、ファン・ハール監督は南米の選手を好まないようだ。彼はバイエルン・ミュンヘンでも南米出身のプレイヤーを放出した」と語っておりました。しかし、プレミアリーグ1年めのファン・ハール監督は、入団当初好調だったディ・マリアを重宝しており、ロホもシーズンを通じて起用。1990年代にバルセロナをオランダ人選手で固めたエキセントリックなチームづくりについては、改めたように見えます。とはいえ、少なくとも昨季プレミアリーグにおけるファルカオは、自信とモチベーションを得られず、不安と迷いのなかで無為な時間を過ごしていたのは事実でしょう。使い方か、戦術か、モチベートか。モウリーニョ監督は、どういうアプローチで「エル・ティグレ」に昔の自分を思い出させるのでしょうか。

マンチェスター・ユナイテッドのサポーターとして、昨季のプレミアリーグで振るわなかったファルカオに対して落胆したのは確かです。しかし、彼は短い出場時間のなかで、何としてもチームを勝たせようと前線でボールを追いかけまわしてくれており、ゴールが奪えない時間が続いても、決して腐ったり手を抜いたりはしませんでした。たった1年ですが、最後までクラブのために走ってくれた選手です。オールド・トラフォードでチェルシーの青いユニフォームに身を包んだ彼を見たら、盛大な拍手で迎えたいと思います。直近のプレイを観る限り、ファルカオがトップフォームを取り戻すイメージはないのですが、復活のキーは思いもよらないところにあるのかもしれません。ジエゴ・コスタ、フィリペ・ルイス、ティボ・クルトワ、そして入団が噂されているアルダ・トゥランといった、いいときの彼を知る昔の仲間たちの存在など…。

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“モウリーニョ監督は虎を再生できるのか…ファルカオのチェルシー移籍で、問われる3つの力” への4件のフィードバック

  1. パチ より:

    う~ん、再生できないに一票!

    今までモウリーニョが再生すると言って、
    出来た選手…ベンゼマ、テリー
    出来なかった選手…アドリアーノ、カカ、トーレス

    両者の違いは数か月スパンでスタメンでの出場機会+得意なポジションでのプレー機会が与えられたかどうか…。
    テリー用システムの元出番が与えられたテリーは別として、ベンゼマもイグアインの長期離脱を受けてスタメンの機会が巡ってきたにすぎませんし…、可能性があるとしたらコスタが怪我で数か月離脱した場合に活躍できるかどうかでしょうね…。
    まさかの2トップで4-4-2にしてアザールをゴールから遠い位置に置いてしまうなんて馬鹿な真似はしないと思うけど…、なんだかこの移籍不安しかないです…。

  2. パックン より:

    全盛期の状態に戻る事は無理でも昨季よりプレミアにフィットする可能性なら十分にあるでしょう。
    あくまでバックアッパーですしモウリーニョもその辺りはシビアに考えてるはず。
    現にレミーへのオファーを拒否したという報道もありますしね。
    ゴールをこじ開けたい時の2トップ要員としては面白いかなと個人的には思います。
    体は衰えても嗅覚は衰える事はないですからね。

  3. Uボマー より:

    移籍一年目でノーゴールというわけでもない、と考えると起用法次第でもう少し数字は残せそうな気もします。

    今シーズンは4位になったとはいえ、後方・中盤から良いパスが供給できなかったのは事実。しかも(ルーニーはともかくとして)マタやエレーラといった二列目の選手は自分でゴールを決めようとペナルティエリアに入る傾向も強かったので、ファンペルシならともかく、動きが鈍ったように見えたファルカオには気の毒な面もありました。

    ただ以前のような点取り屋に成れるかと言われれば、やっぱり疑問ですよね。あとはバックアッパーあるいはジョーカー的な立場を甘受できるかどうかってところでしょうか。まあユナイテッドにとってのチチャリートみたいに活躍されても困りますが…。

  4. トト より:

    再生まではいかないが及第点くらいは…
    コスタの控えに終わりそうですね
    仮にアルダの獲得が成功すればアトレティコ色が増えて当時の力を発揮しそうです

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