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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

安すぎる主力の契約解除金とサラリー…劇的すぎたプレミアリーグ優勝の副作用に悩むレスター!

クラウディオ・ラニエリ監督のお人柄と、選手たちのキャラが醸し出す明るくポジティブなチームカラー。岡崎慎司やカンテのチェイスや、最終ラインの体を張った守備から一気にカウンターに持ち込み、ヴァーディとマフレズが仕留めるスリリングなサッカー。降格候補からプレミアリーグ優勝というハリウッド映画のような劇的な結末。日本代表のエースストライカーの加入をきっかけにレスターを観始め、あっという間にファンになったという方も多いのではないでしょうか。栄光とともにチャンピオンズリーグ出場権を手にしたラニエリ監督は、奇跡を起こしたチームのメンバーについて「全員残留するはず」と語り、多くの選手たちが結束の強さを強調していました。しかし…。

ジェイミー・ヴァーディにアーセナル入団寸前という報道があり、マフレズも移籍に傾いていると伝えられ、さらにはカンテもチェルシーが獲得を狙っているといわれています。イギリスメディア「デイリー・ミラー」「ザ・サン」のコンビとなると、ななめ読みしてしまいそうになりますが、はなから疑わずに、まずはカンテの最新情報を整理してみましょう。彼らの記事によると、「カンテにはパリ・サンジェルマンが5年契約のオファーを出しているが、チェルシーもフランス代表MF獲得に乗り出した。契約解除金2000万ポンド(約31億円)を満額支払い、サラリーは現在の週給3万5000ポンド(約540万円)の3倍以上」とのこと。最近、どこかで聞いた話と酷似しています。そう、ジェイミー・ヴァーディとアーセナルも、ほぼ同様のストーリーでした。契約解除金は同額。ヴァーディは年明けに年棒UPの契約をクラブと交わしているにも関わらず、アーセナルの提示した額はその2倍だったと報じられています。

これらの記事を読むと、レスターの選手たちにおける給与額の低さと、契約解除金の安さが目を引きます。カンテの週給3万5000ポンドは、プレミアリーグでトップクラスと評価されている選手の相場ではありません。簡単にいえば、こういうことでしょうか。「そんなに高いサラリーは出せないので、よろしくね。その代わり、移籍しやすい額のバイアウト条項を付けるから」。レスターの選手は、補強の責任者として評価が高いウォルシュさんが、安い移籍金とサラリーで連れてきた選手ばかり。彼らがそこそこ活躍してプレミアリーグ残留を果たす目論見だったところが、プレミアリーグ24ゴールだのインターセプト数リーグNo.1だのといった素晴らしい数字を残して優勝してしまったために、獰猛なビッグクラブを振り向かせてしまったわけです。

ロンドンのクラブが彼らの契約内容を見れば、「ルカク、スターリング、ジョン・ストーンズなどと比べると何て安い移籍金!サラリーをちょいと乗っければ選手は喜んで来てくれるのでは!?」と考えるでしょう。一部に「アーセナルがレスターを弱体化させようとしている」といった判官びいき的な批判があるようですが、ヴェンゲル監督にそんな狙いがなく、冷静に見ただけでもプレミアリーグ優勝の立役者たちのコストパフォーマンスがよすぎて、「よその選手を獲るよりもこっちを…」というジャッジになるのだと思われます。

カンテは、パリのオファーに対して「フランスに帰ることは考えていない」と返事をしたと伝えられておりましたが、同じプレミアリーグのチェルシーがレギュラー待遇と口説き、年棒が7~8億円に跳ね上がるとなれば、話は別でしょう。私は、業界トップの会社から、2番手以下ではあるもののいいオファーをいただいた会社に転職した経験があるので、チャンピオンズリーグ出場を1季先延ばしにしてでも、好待遇という自分に対する評価と情熱に動く気持ちは少しだけ想像できます。ましてや、カンテが示されている転職先は、未来が明るい都心のブランド企業です。

現場の空気を感じられない場所にいるわれわれプレミアリーグファンは、「チャンピオンズリーグで、今季のレスターがどこまでやれるか観たかったのに」「レギュラーでプレイできるレスターに残ればいいのに」「金で釣られた」「ちょっと活躍するとすぐにビッグクラブに持っていかれて…」などとついつい顔をしかめてしまいがちですが、ビッグクラブも、レスターも、選手たちもそれぞれにプロです。チャンピオンズリーグ出場が決まり、選手層を厚くしなければならないレスターにとっては、会計上は5年契約の金額を5分割できる移籍金ならまだしも、固定費として乗っかってくるサラリーを3人で15億円相当増やすのは考えどころでしょう。「安く買って高く売る」のが中小クラブのビジネスのひとつと割り切って、どこかで眠っている第2のヴァーディ、マフレズを発掘してこようと考えても不思議はありません。選手の評価に対して安すぎるバイアウト条項を発見すればオファーするのがビッグクラブであり、歴史と実績があるトップクラブから情熱的な話があれば、チャレンジしてみたいと考えるのがプロスポーツの選手なのだと思います。

と、頭ではわかっていても、ヴァーディ、マフレズ、カンテがいなくなったレスターは想像したくないですね。レスターファンは、彼らが残留宣言をしてくれるとただ信じるよりほかにありません。いちばん残りそうなのは、29歳と残された時間が短く、3人のなかではレスター在籍が最も長いヴァーディでしょうか。彼がもう一度、「レスターにいるのが幸せだ。ずっとここでやりたい」とチームへの愛を口にしたら、よくぞ踏みとどまったと拍手を送りたいと思います。残留もまたリスクをとらないというプロとしての判断であり、レスターから年棒UPを引き出せたことが留まる理由だったのではないかという醒めた疑問が頭をよぎったとしても、こういう話に快哉を叫ぶのもまた、ファンならではの楽しみ方ですので。

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“安すぎる主力の契約解除金とサラリー…劇的すぎたプレミアリーグ優勝の副作用に悩むレスター!” への2件のフィードバック

  1. yuto より:

    トッティのように一つのクラブでバンディエラとして君臨するのも、イブラヒモビッチのように様々なクラブでタイトルをもたらして英雄となるのもどちらもプロフェッショナルとして理想だと思います。
    ヴァーディ、カンテ、マフレズの去就についてはいずれの選択もリスペクトするべきでしょう。

  2. makoto より:

    yutoさん>
    そうですね。それぞれ、生き方ですよね。ヴァーディがアーセナルに行ったら金のため、残留したらクラブへの愛を取ったという単純な話ではなく、どちらの決断にも彼なりのロマンとソロバンがあるのだと思います。

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