偏愛的プレミアリーグ見聞録

ファビーニョ獲得というリヴァプールの鋭利なカウンターには、プレミアリーグファンは揃ってラインの裏を取られた感がありましたが、ナビル・フェキルへの初めてのオファーは、現地メディア「ル・パリジャン」がしっかりキャッチアップしています。「フランス代表のストライカーは、リヨンを離れるべき」「チャンピオンズリーグのファイナリストは、プラン通りに具体的な交渉を開始」「6000万ユーロ（約76億円）は、リヨンの希望には届いていない」。迫力ある言葉が並ぶ記事は、ワールドカップ前に話をまとめたいプレミアリーグの名門と、大会後に価値が上がることを考えれば急がなくていいリーグアンのクラブが描き出すコントラストを活写しています。

これを受けて、イギリスメディアも動き出しました。ル・パリジャンの掲げたオファー額を、5270万ポンドと自国の通貨に換算して記事を紹介したのは「デイリー・メール」。「フェキル自身が、ワールドカップ開幕前の移籍を望んでいる」と報じたのは「エクスプレス」です。オリンピック・リヨンの希望額には500万ユーロほど足りておらず、交渉はワールドカップ後に引き延ばされるかもしれませんが、リーグアン30試合18ゴールのアタッカーは、アンフィールドにやってくるのではないかと思われます。

サイドアタッカーが中に斬り込むリヴァプールなら、マネのポジションに置くことも考えられ、ファビーニョ、ナビ・ケイタ、フェキルの新戦力トリオで中盤を固める試合もありそうです。リヨン生え抜きのMFは、まだ24歳。モー・サラーのように、クロップスタイルのなかでプレイの幅を広げ、ただでさえ凄まじいレッズの破壊力をさらに引き上げていただければと期待しています。

エムレ・ジャンの後釜と前線の充実の目処が立ったレッズは、懸案のGKについても新たな可能性を広げているようです。「ムンド・デポルティーヴォ」「エクスプレス」など、スペインとイギリスのメディアが同時に伝えているのは、バルセロナのオランダ代表GKヤスパー・シレッセンへのアプローチです。スペインメディアの記事によると、シレッセンのエージェントが、レッズの関心をバルサに伝えたとのこと。2016年の夏にバルサ入りしたシレッセンは、ラ・リーガ出場はわずか2試合。ベンチでテオ・シュテーゲンのプレイを見ていることが多い守護神が、プレミアリーグ行きを決断すれば、「ロリス・カリウスの悪夢」は一気に解決する可能性があると報じられています。

アトレティコ・マドリードのオブラクの契約解除金は1億ユーロ（約127億円）。ローマのアリソンを獲ろうとすれば、8000万ユーロ（約101億5000万円）という大金を準備しなければなりませんが、シレッセンの契約解除金は6000万ユーロと2人に比べてお手頃です。2014年のワールドカップ南アフリカ大会で、PK戦の直前にクルルに代えられたGKは、その後のPKストップで苦手意識はなくなっているようです。プレミアリーグ制覇をめざすレッズは、弱点強化にどこまで投資するでしょうか。近年の新戦力獲得において、スピード決着が目立つクラブも、このポジションだけは時間がかかりそうです。

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