偏愛的プレミアリーグ見聞録

スティーブ・ニコルさんをご存じでしょうか。プレミアリーグがフットボールリーグと呼ばれていた1980～90年代、最強リヴァプールの守備を支えた名DFなのですが、OBと呼ばれる方々はいいときほど勝手なことをいうもので、クロップレッズの補強について明るく注文をつけてくださっています。

「ヴィダはノーだね。私なら、アトレティコ・マドリードのゴディンを獲りにいく」「フェキルを気に入っている。素晴らしい才能があり、ゴールを決められる」

ゴディンにとってはステップダウンでは？といわれると、これまでのチャンピオンズリーグの優勝回数と昨季の戦績を挙げ、リヴァプールのほうが格上と主張。プレミアリーグ創設以来の国内制覇はゼロで、最後の欧州戴冠は13年前ではあるものの、ビッグイヤーを手にしていないゴディンのチームに対して胸を張れる実績があるのは事実です。

こんな話がメディアに載ったのは、守護神アリソン獲得で打ち止めムードもあったレッズに、新たな補強の噂が勃発したからです。ニコルさんの話に出ていた「ヴィダ」とは、ワールドカップロシア大会のクロアチア代表にて、最後方で体を張っていたポニーテールの選手です。トルコメディア「アスポール」は、ベシクタシュのドマゴイ・ヴィダとプレミアリーグのクラブが合意に至ったと報道。ポンド換算で2200万（約32億円）といわれる移籍金は交渉中で、29歳のハードマーカーは2年プラスオプションの契約を結ぶ見通しと伝えています。

インターナショナルチャンピオンズカップのドルトムント戦で負傷したマティプは、プレミアリーグの序盤戦には戻って来られないということなのでしょうか。ジョー・ゴメス、デヤン・ロブレン、ファン・ダイク、クラヴァンと頭数は揃っていたポジションだけに、格安なCBを6人めとして加えるという話には期待よりも心配が先に立ちます。

6680万ポンド（約98億円）のアリソン・ベッカーを筆頭に、ファビーニョ、ナビ・ケイタ、シャキリと豪勢なメンバーを引き入れたレッズは、そろそろ売却のほうも考えなければならないでしょう。サラー、マネ、フィルミーノにシャキリ、ソランケとララナも使える最前線は、噂のフェキルを獲らずとも、スタリッジ、マルコヴィッチ、オリギ、ダニー・イングスから2～3人はあぶれそうです。グルイッチは、今季もローンで修業に出されるのでしょう。

いや、「売らなくていいのか」などというぜいたくな心配はひとまず脇に置いて、ヴィダの動向に注目しましょう。ロシアで見せたアグレッシブなプレイはプレミアリーグ向きではありますが、判断が遅れてぎりぎりの守備になるシーンが目立ったのが気になります。コーチングに長けたファン・ダイクによってストロングポイントを活かすことができるのか、ワールドカップでコンビを組んだデヤン・ロブレンのように当初は戸惑いの時間を過ごすことになるのか。しばし続報を待ちましょう。（ドマゴイ・ヴィダ　写真著作者/ Анна Нэсси）