偏愛的プレミアリーグ見聞録

「記録的な大盤振る舞い」。プレミアリーグ2022-23シーズンのトランスファーマーケットにおけるディールの総額は、既に史上最高額を更新しています。「スカイスポーツ」のアダム・ベイト記者によると、これまでのレコードは2017-18シーズンの14億9000万ポンド（約2410億円）。今季はデッドラインデーまで1週間を残しながら、16億7000万ポンド（約2700億円）というとてつもない額が動いています。

2019-20シーズンに再度14億ポンドを超えた後、コロナウイルス感染拡大の影響で、財政難のクラブが補強を控える季節が2年続きました。「今後数年間のプレミアリーグでは、トップレベルの選手の契約は上がり続けるが、チームプレーヤーについては、より賢明な判断をするようになるだろう」。ガリー・ネビルさんの予想は、コロナ禍以前の日常に戻ると宣言したイギリス政府とクラブオーナーによって、あっさり打ち砕かれました。

大盤振る舞いランキングのTOPに立っているのは、1億9310万ポンド（約312億円）を費やしたチェルシーです。ククレジャ、スターリング、クリバリ、チュクエメカ、チェーザレ・カサデイ。2020-21シーズンに自らが打ち立てた歴代最高額まで、残り3300万ポンドに迫っているトッド・ベイリーのクラブは、オーバメヤンとCBを獲ってあっさり超えてくるでしょう。

2位の名前を聞いたら、プレミアリーグファンの多くが絶句するのではないでしょうか。総勢16人を獲得したノッティンガム・フォレスト！エマニュエル・デニス、クヤテ、モルガン・ギブス＝ホワイト、マンガラ、アウォニイ、リンガード、ネコ・ウィリアムズ、ディーン・ヘンダーソン…。フリーあり、ローンありの賑やかな補強は、もう1チーム創ろうとしているかのような勢いです。1億4350万ポンド…残留前提のプランに見えますが、大丈夫でしょうか？

3位は、リサンドロ・マルティネス、カゼミーロ、タイレル・マルシアに1億4100ポンドを投資したマンチェスター・ユナイテッド。フリーエージェントだったエリクセン以外は、相場より高めだったのではないでしょうか。4位は、イヴ・ビスマ、リシャルリソン、ジェド・スペンス、ウドギエに1億3000万ポンドのトッテナムです。

1億2790万ポンドで5位のウェストハムは、スカマッカ、アレオラ、コルネ、フリン・ダウンズ、エメルソン・パルミエリで弱点補強。彼らは間違いなく強くなると期待しているのですが、プレミアリーグ開幕から3戦連続ノーゴールで最下位に沈んでいます。ガブリエウ・ジェズス、ジンチョンコ、ファビオ・ヴィエイラらを1億2100万ポンドで押さえたアーセナルが、中小クラブに負けているのが今年のマーケットの怖ろしいところです。

アーリング・ブラウト・ハーランドとカルヴァン・フィリップスをゲットしたマンチェスター・シティは7位。ダルウィン・ヌニェスに8500万ポンドをかけたリヴァプールは、ウルヴスに次ぐ9位です。10位から19位は、6000万ポンドから2400万ポンドの間に収まっており、通常運転。最下位は…カーディフのGKスミシーズをフリーで獲っただけのレスター（ゼロポンド！）です。

ペップのチームは、スターリング、ジェズス、ジンチェンコらの売却益1億6200万ポンドが光っており、1億500万ポンドのリーズと9800万ポンドのブライトンを大きく引き離しています。収支プラスは、レスター、エヴァートン、リーズ、マン・シティ、ブライトンの5クラブ。最も赤字が大きいのは、やはりウェストロンドンです。

今年のマーケットは、ビッグネームが動きまくったわけでなく、中盤とDFの値段が高騰してしまった感があります。カゼミーロがサディオ・マネの2倍は違和感があり、6300万ポンドのククレジャ、5670万ポンドのリサンドロ・マルティネス、4250万ポンドのモルガン・ギブス＝ホワイトも、これまでならもっと安かったはずです。

コストパフォーマンスが最もいいクラブは、どこでしょうか。1億6000万ポンドも儲けて、プレミアリーグ3連覇を達成したら決まりですが…。もとい、トランスファーマーケットは、まだ終わったわけではありません。1週間後の最終レポートが怖ろしい…いや、楽しみですね。