偏愛的プレミアリーグ見聞録

「トッテナムが新戦力獲得で合意に到達」と聞いて、ラドゥ・ドラグシンの契約が早々にまとまったのかと思ったのですが、決まったのはノーマークだったティモ・ヴェルナーでした。チェルシーでは振るわなかったライプツィヒのストライカーは、ポステコグルーの下でかつてのゴールゲッターに戻れるのでしょうか。

2018-19シーズンはブンデスリーガ30試合16ゴール9アシスト、2019-20シーズンは34試合28ゴール8アシスト。2019年11月23日には、ブンデスリーガ史上最年少の23歳で200試合出場を果たしています。ドイツの年代別のユースチームで常に主力だったエリートは、ライプツィヒで公式戦159試合95ゴールという素晴らしいスタッツを残し、満を持してプレミアリーグに参入しました。

チェルシーが支払った移籍金は4750万ポンド。今どき主要リーグで20発ゲットのストライカーが5000万ポンド以下と聞いたら、売ったクラブはクレイジーといわれそうですが、4年前もこのバイアウト条項は格安でした。青いシャツで前線に君臨した24歳のヴェルナーは、プレミアリーグ開幕から8戦4発、チャンピオンズリーグでも3戦3発と順調にスタートしました。

その後、ゴールを決められなくなったのは、ビッグチャンスを何度も逃して悩んでしまったからでしょう。1月にフランク・ランパードが解任となると、状況は一変しました。トゥヘルの戦術にはまらず、初年度はプレミアリーグ35試合6ゴールでフィニッシュ。巻き返しを期す2年めの不振について、本人は「ルカクと一緒にプレイするのは難しかった」と振り返っています。

公式戦トータルで12ゴールをゲットし、アシストも2ケタに乗せたのに、1億ポンドのストライカーが加わったのをアンフェアと感じたとのこと。負傷とコロナウイルス感染にも見舞われ、出番が減った2年めは、プレミアリーグ21試合4ゴール1アシストという凡庸な数字に終わりました。CLでは2シーズン通算で17試合8ゴール4アシストと結果を出していたのですが…。

2年でライプツィヒに復帰となったヴェルナーの移籍金は、2530万ポンド。「使った分だけ減らしておきました」というようなお値段です。出戻りが往々にしてうまくいかないのは、そのときのチームにフィットするかどうかより、過去の実績重視の獲得となるからでしょう。香川真司、ポール・ポグバと同様に、ヴェルナーも王様だった頃とは別人のようでした。

2022-23シーズンのブンデスリーガは、27試合9ゴール4アシスト。DFBポカールでは5戦5発と活躍したのですが、チェルシーにいた頃と変わらず「好不調の波があるストライカー」でした。今季は公式戦14試合で先発が4試合しかなく、2ゴール1アシスト。トッテナムはローンで獲得するようですが、現地メディアはギャンブルといっています。

ソン・フンミンがアジアカップで欠場、アレホ・ベリスは長期離脱で、プレミアリーグの経験がある選手をレンタルという判断自体は妥当です。問題は、不振のストライカーが蘇生するかどうか。ドイツの「スカイ」は、1550万ポンドの買い取りオプションが付くと報じています。格安のお値段は、ライプツィヒが「復活しない」にベットしていることを表現しています。

最大の希望は、ポステコグルー監督が彼をほしがっていたという事実です。本日、ロンドンを訪れるヴェルナーが手続きを無事に終えれば、すぐに正式なアナウンスがあるでしょう。「スカイスポーツ」のアダム・スミス記者は、「ドイツで活躍していた頃と、チェルシー時代の違いは決定率のみ」と分析しています。リベンジは成功するのか？まずは続報を待ちましょう。