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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

天才といわれた10代、孤独だった8年半。放出候補となったマルシアルに足りなかったこと。

「始まりは背番号の話だった。ホリデーの間に、彼は僕にメッセージを送ってきた。レジェンドのライアン・ギグスが着けていた11番はどうか。素晴らしい番号だと説得された。ギグスを最大限にリスペクトするけど、9番のままがいいと彼に伝えた。クラブに戻ると、背番号11のジャージが目に入った。ストーリーはうまく始まらなかったんだ。そして彼は、僕を侮辱した」

「彼はメディアを通じて僕のことを話す。そういうゲームが好きなんだ。僕が20歳だとわかっててやるんだ。何かいえば、リスペクトを欠いた若者になってしまうことを知っている。だから何もいわなかった。いってもムダだから」

アントニー・マルシアルが、「フランス・フットボール」の取材に応じてジョゼ・モウリーニョを非難したのは、2022年9月のことでした。ズラタン・イブラヒモヴィッチに9番を持っていかれる格好となった20歳の新鋭は、メディアを通じて「未熟」「運動量が足りない」「守備の規律を守れない」といわれ、憂鬱な日々を過ごしていました。

モウリーニョの下で、プレミアリーグ67試合20ゴールという不本意な数字しか残せなかったストライカーは、スールシャールには別な不満を感じていました。2019-20シーズンに、キャリアハイとなるプレミアリーグ32試合17ゴール7アシストを記録した後は、足の痛みに耐えながら戦っていたといいます。

「みんなは知らないだろう。僕はCovidのシーズン後の4ヵ月間、スピードを上げられなかったんだ。でも監督に、君が必要だといわれてプレイした。でも、僕のプレイは、スピードがなければとても難しくなる。僕は炎上した。でも監督は、メディアに状況を伝えてくれなかった。それから僕は、ずっとケガに悩まされ、戻ってきたらプレイする機会はなくなっていた」

「チームのために自分を犠牲にすることを求められ、裏では不当な扱いを受ける。僕にいわせれば、裏切り行為に近い。そういうことがすべて嫌だった。非難されるのは仕方ないけど、フェイクなどといわれたくない」

ユース時代に接した指導者たちが天才と絶賛し、将来を嘱望されたテクニシャンは、マンチェスター・ユナイテッドで不満を溜め込み、9年めの冬を迎えています。ラングニックの評価は放出候補。テン・ハフは、ホイルンドが空回りしたときの代役と位置づけているようです。直近の3年半は、プレミアリーグ64試合12ゴール。この冬もまた、去就が取り沙汰されています。

モウリーニョと彼の言い分は、どちらが妥当なのか。スールシャールのマネジメントは適切だったのか。テン・ハフは彼の強みを理解しているのか。これらの問いは、もはや答えを必要としていないでしょう。ひとついえるのは、彼は出会えなかったということです。サラーを最適なポジションで活かしたクロップや、アンリの得点力を引き出したヴェンゲルのような理解者に。

「スカイスポーツ」のダルメシュ・シェス記者によると、今季公式戦で7戦2発のマルシアルには、サウジアラビアのクラブとフェネルバフチェが興味を示しているとのこと。マンチェスター・ユナイテッドは1年の延長オプションを発動させず、オファーがあれば前向きに検討する意向だそうです。残留となっても、フリーになる夏の退団は必至でしょう。

2015年9月、10代の選手として史上最高額の3600万ポンドでオールド・トラフォードに降臨したストライカーは、ライアン・ギグスのプロフェッショナリティもクリスティアーノ・ロナウドのハングリーさも持ちえず、28歳になりました。キャリアトータルで114ゴール、フランス代表では30試合2ゴール。次のクラブが、自らの力を世界にアピールする最後の場となるはずです。

クラブにやってきた指揮官たちと思いを共有できず、孤独に苛まれていたマルシアルが、良き理解者に巡り合えることを願ってやみません。そう、あの人がマンチェスターに残っていれば、歩いた道のりは変わったのでしょうか。希望を抱いた海を渡った若かりし頃の彼が、唯一心を開くことができたルイス・ファン・ハールが。

「僕は学ぶことが大好きだ。彼のようなジェントルマンがわざわざ時間を割いて、オフィスで試合のビデオを見せながら説明してくれるのは最高の時間だった。2ゴールを決めたとき、彼は僕を燃え立たせるためにビデオを見せた」

「僕はいった。2ゴールなのに何が問題なのか、と。彼は、走る角度や動くゾーンについて話したがっていた。よくわかったと伝えた。キャラクターのすべてを好きでいてくれているとわかっているということも」


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