【Brazil2014】アルゼンチンとドイツが大苦戦!メッシは勝利のミドル、クローゼが敗戦回避の同点弾!
コスタリカのホセ・ルイス・ピント監督と、元名古屋グランパス監督で、プレミアリーグではサー・アレックス・ファーガソンのアシスタントを務めたイランのケイロス監督は、いずれもリアリストです。点を獲るサッカー、自分たちらしいサッカーではなく、「どうすれば負けないか、失点しないか」を考え、堅守速攻に徹する「弱者の戦い方」で世界のトップクラスに対抗しています。アルゼンチン戦のイランは、イタリアに勝ったコスタリカ同様、組織として統制がとれた見事なディフェンスを披露。アルゼンチン相手にドローに持ち込み、最終戦でボスニア・ヘルツェゴビナから1点奪って勝てば、決勝トーナメントに進めるという腹づもりでしょう。
アルゼンチンは、ケイロス監督の注文に完全にはまりました。前半は、メッシ、イグアイン、ディ・マリア、アグエロが次々とシュートを放ち、いつ先制してもおかしくない状況が続きました。とりわけ惜しかったのは、13分にイグアインがペナルティエリア右に抜け出し、GKハギギと1対1になったシーンと、36分のメッシのFKからのクロス。イグアインはハギギの股下を狙うも、ぎりぎりでブロックされてしまい、メッシの最高のボールをフリーでヘディングしたガライは、シュートを浮かせてしまいます。もし、このゲームがドローに終わったら、日本代表の大久保嘉人がそうだったように、ガライもシュートの瞬間の微妙なズレを悔やんでいたことでしょう。
前半は0-0。しかし、アルゼンチンの選手たちの表情に曇りはなく、残り45分あれば先制できるという自信が漂っています。迎えた後半、先に好機を創ったのはイラン。53分、モンタゼリのクロスをダイビングヘッドで叩いたグーチャンネジャードの一発は、1点モノの素晴らしいシュートでした。これをGKロメロが体を投げ出して止めていなかったら、今頃世界は極上のジャイアントキリングに湧いていたかもしれません。しかし、ここはロメロの勝ち。スコアは動かず、この後は前半同様、アルゼンチンの攻撃をイランの整備された最終ラインがはね返す時間が続きます。
59分、メッシの左足インサイドが左ポストすれすれで外れると、後半のアルゼンチンは、ラストパスが決まらず、時折放つシュートも枠にいかず、時間だけが過ぎていきます。85分、イランに2度めのジャイアントキリングのチャンス。カウンターからグーチャンネジャードがロメロと1対1になるという、アルゼンチンサポーターが目をつぶるシーンもロメロのビッグセーブで先制はなりません。ゲームを観戦していたディエゴ・マラドーナが席を立ち、追加タイムに入っても、スコアは0-0。あと数分、今までどおりに淡々と守れば、イランに望外の勝ち点1が入るところでした。
ところが46分、ついにイランはそれまでのがんばりを無にされてしまいます。彼らに特段、ミスがあったわけではありません。ペナルティエリアの外、やや右からメッシがコースを狙って打ったミドルシュートは、これ以上ない絶妙な軌道を描いてゴール左隅を襲い、好守のGKハギギはあきらめるしかありません。惜しかった、イラン!決められた直後、歓喜に沸くアルゼンチンサポーターの声を背に、GKハギギはタオルを手にしてうつむき、しかしその顔は薄く笑っています。「やることはやった。でもこれは、どうしようもなかった」。イランの守護神は、そんな気分だったのではないでしょうか。アルゼンチンは、エースの一発で1-0の勝利をもぎ取り、グループリーグ突破を決めました。
日本代表は肩を落とすことはありません。アルゼンチンでさえ、きっちり引いてゴール前を固めたイランにこれだけ苦労するのです。さらに高さと強さがあるギリシャから点を奪えなかったぐらいのことは、ときどき起こります。幸運に恵まれなかっただけと気持ちを切り替え、コロンビア戦に自信を持って挑んでいただければと思います。
アルゼンチンより危なかったのは、51分にトマス・ミュラーの絶品クロスをゲッツェが押し込んで先制したドイツでした。ガーナ、アメリカ、ポルトガルと、ベスト8に入る力がある国が揃う「もうひとつの死のグループ」は、プレミアリーグやブンデスリーガの主力を並べたドイツでも楽に勝てないということをガーナが教えてくれました。1-0となった3分後、アッフルの右からのクロスをアイェウがきれいに頭で合わせて同点。さらに63分には、ムンタリのスルーパスにFWギャンが抜け出し、飛び出したノイアーの指先を抜く強烈なシュートで逆転。メルテザッカーは、プレミアリーグのなかではいいCBですが、世界で勝つにはスピードのなさと、SBやセンターMFとの連携不足が気になります。
1-2、勢いはガーナ。絶体絶命と思われたドイツを救ったのは、ワールドカップ歴代最多の15点めをCKからのスライディングシュートで決めた、ミロスラフ・クローゼでした。ニアでCKを競ったヘヴェデスが、ヘッドで右ポストのほうに流したとき、落下点にいち早く入るあたりが一流のストライカーの瞬発力です。ゴールを決めた後のバック転でコケた姿に36歳という年齢を感じましたが、いやいや、素晴らしい。2002年ワールドカップ得点王のロナウドに並ぶ偉大な記録を、リアルタイムで目撃できたのは幸せなことだと思います。
結局この後は、ドイツの猛攻は実らず、2-2のドローで終わりました。ガーナもまた、惜しかったですね。前回ベスト8の彼らが、グループリーグを突破できないかもしれないという状況に、死のグループの過酷さを感じます。こうなると、F組はドイツとアメリカでしょう。ワールドクラスのアタッカーのなかでも数少ないノーゴールのクリスティアーノ・ロナウドは、明日の試合に出られたとしても、ケガを抱えたキレのない状態で、ゴールを奪えず肩を落としている姿が目に浮かびます。今のアメリカには、ポルトガルは勝てないとみていますが、どうでしょうか。
やはり、ワールドカップは何が起こるかわかりません。大穴のオッズを抑えめに設定したブックメーカーは、既に大儲けをしているはずです。グループリーグは、もうひとつふたつ、事件が起こりそうですね。ユーロ準優勝国の敗退とか、アジアのチームが奇跡を起こすとか…。(ミロスラフ・クローゼ 写真著作者/Michael Kranewitter)
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まぁ、波乱を起こすチームは組織力が代表レベルではないほどの高さでした。ゴール前、バイタルのスペースを消しつつハードワークをいとわない真面目なチームが生き残っていますね。たとえ、中堅国でも。
退屈だと批判もあるようですが、私はイングランドやイタリア、ポルトガル、スペインのグダグダな攻撃と締まらない守備を見るよりかは、完成度の高い組織力を見ている方が楽しいので、なによりです。
リバサポさん>
パスワークで勝負しようとするチームは、ピッチに苦しんでいる感もありますね。アルジェリア、ガーナ、クロアチア、コスタリカ、アメリカ、ボスニア・ヘルツェゴビナのサッカーは見ていておもしろかったです。ほんとうの死のグループは、ドイツのグループですね。