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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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苦しかった10年、輝いた2年。29歳で代表デビューのエミリアーノ・マルティネスが世界制覇!

メッシ、ディ・マリア、ムバッペ、ムバッペ、メッシ、ムバッペ。ゴールシーンはPK3発、カウンター3発。ワールドカップカタール大会ファイナル、アルゼンチンとフランスのバトルは、ポゼッションサッカーの終焉を宣言するような壮絶な殴り合いとなりました。

死闘は120分で決着せず、勝負はPK戦に委ねられました。両チームとも最初のキッカーにエースをもってきたのは、失敗の連鎖で敗れ去った国を見てきたからでしょう。キリアン・ムバッペが23歳にして連覇を達成するのか。35歳のリオネル・メッシがラストチャンスをものにするのか。GKとして歴代最多の20試合めを戦うウーゴ・ロリスも、これが最後の大舞台となるかもしれません。

PK戦の先攻はフランス。アルゼンチンのシャツが詰めかけたスタンドに向かってロリスが歩き出すと、待ち構えていたエミリアーノ・マルティネスが右手を差し出し、お互いの健闘を誓い合っています。アルゼンチン代表GKの赤いアームバンドを見ながら、彼が世界チャンピオンになるという結末も、味わい深いことだと気づきました。

インディペンディエンテのユースチームから、アーセナルに移籍したのは2010年。エミリアーノ・マルティネスは、18歳になる直前でした。ファーストチームに昇格したのは、2012年。当時のエースGKはヴォイチェフ・シュチェスニーで、ファビアンスキに次ぐ3番手というポジションでした。

プレミアリーグデビューは、シュチェスニーの負傷でチャンスがまわってきた2014-15シーズン。4試合を無難にこなしつつ、ダヴィド・オスピナのケガで得たCLのゴールマウスでも、完璧なパフォーマンスを披露しました。

2015年からの3シーズンはペトル・チェフがエースで、2018年からはベルント・レノのバックアッパー。2019年までの9シーズンは、オックスフォード、シェフィールド・ウェンズデー、ロザラム、ウルヴス、ヘタフェ、レディングに貸し出された流浪の季節でもありました。27歳になっていたGKは、フリンジプレーヤーとしてキャリアを終えようとしていました。

風向きが変わったのは、レノが負傷した2020年6月。コロナウイルスの蔓延で変則スケジュールとなっていたプレミアリーグで、最後の9試合を8失点に抑えました。FAカップも、6試合で3失点のみ。2-1で勝ったチェルシーとのファイナルでは、素晴らしいセービングを披露しています。優勝の立役者となり、涙を流す彼の姿を覚えている人もいるでしょう。

2020年9月、アストン・ヴィラに移籍して、初めてのレギュラー。堅実なキャッチングとショットストップが評価され、2021年6月にワールドカップ予選のチリ戦で代表デビューを果たしました。直後、コパ・アメリカで6試合に出場し、トロフィーを獲得。準決勝のコロンビア戦のPK3発ストップは圧巻でした。

アルゼンチンのゴールマウスに初めて立ってから、カタールのファイナルまで、わずか18ヵ月。ムバッペのキックに触り、コマンも左に蹴ってくると見切って止めたとき、彼はロリスに勝つと確信しました。3人めのチュアメニは、蹴る瞬間に左と読まれたことを察したのでしょう。ボールはポストの外を抜け、30歳になった守護神は世界王者の座に上り詰めました。

おめでとう、エミリアーノ・マルティネス。「サッカーは何が起こるかわからない」とよくいわれますが、彼が過ごしたロンドンの10年とバーミンガムの2年4ヵ月を振り返ると、「人生は何が起こるか…」と読み替えたくなります。

ヒーローになった守護神は、控えGKとしてチームを支えたアルマーニとルジの気持ちがわかるのでしょう。優勝が決まった直後、グリーンのシャツを着た3人が抱き合っている姿が印象的でした。(エミリアーノ・マルティネス 写真著作者/Chensiyua)


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“苦しかった10年、輝いた2年。29歳で代表デビューのエミリアーノ・マルティネスが世界制覇!” への2件のフィードバック

  1. グーナーです より:

    グーナーです。
    彼がアーセナルを去った経緯も知っていますので、浮かれた気分で「アーセナルの元GKが優勝した!やったー!」と言う権利はないのだろうと思います。

    それでもやはり、本当におめでとうと祝福したいです。
    アーセナルにタイトルをもたらしてくれてありがとう。
    アルゼンチンを、メッシを頂点に導いた功績におめでとう。

  2. 村上太 より:

    表彰式、その後のパフォーマンスで彼がビッグクラブで成功しなかった理由は
    世界中が目にしたのではないのですかねw

    一昔前と違い、世界中で情報がオープンになった現在
    存在価値の高いクラブの選手には、一定以上の社会性や道徳心が求められるのは当然でしょう。

    何かと窮屈に感じる事もありますが、眼に写ってしまうと拒否されるのも致し方無いですね…

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