偏愛的プレミアリーグ見聞録

サラー、マネ、南野、ワイナルドゥム、ヘンダーソン、カーティス・ジョーンズ。世界一を争う左右のサイドバックとアリソンを休ませたものの、クロップ監督の前線のチョイスには、勝ちにいくぞというメッセージが込められています。FAカップ3回戦、アストン・ヴィラVSリヴァプール。プレミアリーグ4節で7-2という信じられない大敗を喫した相手に、同じような負け方を繰り返すわけにはいきません。今度こそ…と、ヴィラのメンバーを見ると、知らない名前で埋め尽くされています。

なるほど、そうでした。アストン・ヴィラは、コロナウイルスのクラスター発生が報じられていたチームでした。グリーリッシュやエル・ガジが不在のリストを見て、勝負どころか試合の開催自体が危ぶまれていたのをようやく思い出しました。となると、この試合のリヴァプールのテーマは、しばらく忘れていたゴールラッシュの感触を取り戻すということになります。開始4分、カーティス・ジョーンズのアーリークロスをマネが頭で合わせて0-1。レッズサポーターなら、8点ゲットして勝ってくれとテンションが上がる立ち上がりです。

なおも攻め続けるレッズ。そりゃ、そうですよね…。10分に右からのクロスでワイナルドゥムがフリー。右足のボレーは枠に収めればいいだけでしたが、窮屈な体勢になってしまい、クロスバーの上に浮いてしまいました。21分に左からカットインして放ったワイナルドゥムのミドルは、DFの足に当たってCK。23分にファビーニョのシュートをGKオノディが左に弾くと、こぼれ球をダイレクトで叩いたマネの一撃はニアポストに阻まれます。35分にドリブルで仕掛けたサラーがニアを狙うと、コースが甘く、GKが左に反応してセーブ。追加点を決められずにいた昨季プレミアリーグ王者は、41分にまさかの失点を喫してしまいます。

スルーパスで左から抜け出したのは、17歳のルーイ・バリー。ケレハーと1対1になった若きストライカーは冷静に右隅に流し込み、絶対に忘れないデビュー戦ゴールを記録しました。猛攻を続けたレッズはことごとくGKとDFに跳ね返され、前半は1-1で終了。48分にサラーのパスを中央で受けた南野は、振り向きざまの左足シュートをブロックされてしまいました。無名の若手だらけのチームにレッズが負けたら、事件です。

ボトルに詰まったケチャップが流れ出したのは、60分。ボックス右のサラーのイメージは、南野からリターンをもらってフィニッシュだったはずですが、DFを背負ってパスをもらった日本代表FWは、空いていたワイナルドゥムに落としました。右足のダイレクトショットが右隅に吸い込まれ、1-2。ひとたび出れば、ボトルを振るだけでドボドボと出続けるのがケチャップとゴールです。61分に南野に代わって入ったシャキリが、2分後に左足でゴール前に浮かすと、マネのヘッドが右のサイドネットに届いて1-3。さらに2分後、シャキリの縦パスを受けたサラーが反転してブリッジをかわし、左足のシュートをニアポストぎりぎりに決めました。

ヘンダーソンとチアゴ・アルカンタラは45分ずつの出場。フィルミーノとシャキリは30分、チェンバレンとオリギは15分と、すべて決めていたのでしょう。南野を左、マネをセンターにおいて首尾よく先制したのですが、引いた相手を崩すには変化が必要と考えた指揮官は、後半に2人を入れ替えました。つなぎ役として機能し始めた南野がワイナルドゥムのゴールをお膳立てした後、左から中央に入るのがうまいマネが決めており、ポジションチェンジと交代策がうまくはまったゲームでもあったと思います。

いやー、1-1となってからの20分は緊張しました。ヴィラの前線と中盤は、リヴァプールのスターたちとユニフォーム交換をしたがっていたティーンエイジャーばかりで、負けたらメディアが大盛り上がりでアップセットを囃す見出しを立てていたでしょう。主力にゴールの感触を思い出してもらいつつ、チアゴ、ミルナー、シャキリ、オリギ、南野のコンディショニングができたのが収穫です。この勢いを、マンチェスター・ユナイテッド戦の次のバーンリー戦から活かして、しっかり2位をキープしていただければ！と思います。