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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

アーセナルのセットピースを劇的に変えた天才コーチ「ニコラス・ジョヴァー」の仕事。

カラバオカップのリーズ戦。カラム・チャンバースが放った至近距離からのシュートがラインを越えたと確認したアンドレ・マリナー主審が笛を吹き、センタースポットを指差した瞬間、DFはダグアウトに向かって走っていった」

「アレクサンドル・ラカゼットとアーロン・ラムズデールが真っ先に彼のもとに辿り着いた。ミケル・アルテタもセレブレーションに加わった。しかし、チャンバースが探していたのは、アーセナルのセットピースコーチ、ニコラス・ジョヴァーだった」

「その少し前、チャンバースがベン・ホワイトと交代する準備をしていたとき、ジョヴァーは”ファーストタッチでゴールを決めよう”といっていた。チャンバースは笑みを浮かべながら”だから彼のところにいったんだ。いい瞬間だったね”と振り返っている」

「チャンバースのの投入からわずか23秒後。エミール・スミス・ロウのCKに合わせて決めたゴールは、今シーズンのアーセナルがセットピースからゲットした7つのうちのひとつである」(「スカイスポーツ」11月17日付「Nicolas Jover: Arsenal’s set-piece ‘genius’ is transforming their threat from dead-ball situations」より引用・翻訳)

ニコラス・ジョヴァーさん、ご存じでしょうか。「アーセナルがセットピースのエキスパートを引き入れた」という話までは押さえていたのですが、「スカイスポーツ」が配信したニック・ライト記者のレポートを読むまで、お名前は存じ上げませんでした。アナリストとしてモンペリエのリーグアン制覇に貢献し、クロアチア代表、ブレントフォード、マン・シティで活躍したコーチは、40歳という若さでトップクラスの評価を得ているそうです。

今季プレミアリーグで、アーセナルはCKとFKから6ゴールをゲットし、レッズと並んでTOPに君臨しています。昨季はシーズンを通じて6ゴールで、総得点55の11%。たった11試合で前シーズンに並んでしまった2021-22シーズンは、トータル13発の46%を占めています。マンチェスター・シティでミケル・アルテタと一緒に仕事をしていたニコラス・ジョヴァーさんは、ペップのチームでも結果を出しています。

2019-20シーズンのプレミアリーグでは、全ゴールの17%にあたる17ゴール。2020-21シーズンも、16%に相当する13ゴールという数字が残っています。ドイツ代表でセットピースの専門家として活躍するマッツ・ブットゲライトさんは、ガナーズの勉強会仲間を絶賛。「ニコラスは考え方もプランづくりも天才的だ。すべてに正確な考えがある」と手放しでリスペクトしています。

5月までアーセナルのセットピースを指導していたゲオルグソンさんは、守備のスペシャリストで、プレミアリーグ最少の5失点でシーズンを終えています。攻撃力が課題と考えていたアルテタ監督は、アプローチを抜本的に変えるべく、ジョヴァーさんを招聘。インスイングとアウトスイングの使い分け、偽装のランニング、おとりの動き、リバウンドやこぼれ球を拾うためのポジショニングは、すべてロジカルに設計されているそうです。

「アーセナルがアストン・ヴィラに3-1で勝利したとき、スミス・ロウのCKをトーマス・パーテイーがヘッドで決めている。パーティーはフリックオンのチャンスを最大限に活かすために、ベン・ホワイトと一緒にニアポストに走っていた。一方、冨安健洋とガブリエル・マガリャンイスはペナルティスポット付近でDFを縛り、アレクサンドル・ラカゼットとピエール=エメリク・オーバメヤンは6ヤードボックス内に陣取っていた」

ポジショニングやアクションを指示しているのも、スミス・ロウのキックの精度を高めているのもジョヴァーさんだそうです。「一般的に、ゴールの35%はセットピースから決まるもの。私がちゃんと仕事していれば、それ以上の結果を得られるはず」と語る天才コーチは、3~4年後にはどのチームも自分のような存在を置くようになるといっています。

なるほど。大変、勉強になりました。冨安、ベン・ホワイト、ヌーノ・タヴァレスという6フィート以上の長身トリオの補強には、セットピース強化という視点もあったのかもしれません。それにしても、アツいですね。「アーセナルのセットピース」というニッチなテーマで9000字とは…!お時間のある方は、ニック・ライト記者の力作に目を通してみてください。リヴァプール戦のCKを見る目が変わるのではないでしょうか。


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