偏愛的プレミアリーグ見聞録

「クリスティアーノ・ロナウドは、今週土曜日のプレミアリーグ、チェルシー戦のスカッドに入らない。ほかのメンバーは、試合の準備に完全に集中している」

マンチェスター・ユナイテッドの経営ボードは、クラブならびにテン・ハフ監督の姿勢を明確に打ち出すべきと考えたのでしょう。公式サイトが配信した短いステートメントの行間には、冷たい怒りが滲んでいるように感じられました。

プレミアリーグ12節、トッテナムを圧倒した最高の夜。87分にエリクセンとエランガが送り出されるのを見たストライカーは、チームメイトが戦っているピッチに背を向け、トンネルへと歩を進めました。若手の手本となるべき37歳は、ラージョと1-1で引き分けた8月のプレシーズンマッチでも、試合が終わる前に帰路に着いたと騒がれています。

足早にロッカーに消えたオレンジのビブスを見たメディアと評論家は、一斉に非難。「マッチ・オブ・ザ・デイ」のガリー・リネカーは「許せない。とてもお粗末」とコメントし、スウォンジーとウェールズ代表で活躍したアシュリー・ウィリアムズは、チームにとって残念という見方を示しています。

「マンチェスター・ユナイテッドにとって素晴らしい夜だったのに、ここにいるわれわれは、またしてもクリスティアーノ・ロナウドの話をしているね。彼はプレイしなかったのに」

元イングランド代表のマイカ・リチャーズは、「BBCラジオ4」で「クラブは放出を考えるべき」と主張。「1月に合意して、手離す必要がある。彼は監督を貶めている。放出するのがベストだ」といい切りました。

「BBCラジオ5ライブ」に出演したクラブのレジェンド、ピーター・シュマイケルは「ロナウドは、自らの行動が見出しになるとわかっている」と切り出し、こう続けています。「彼に失望したのは初めてだ。普段は応援しているし、状況も理解している」。サー・アレックス・ファーガソンとともに戦ったOBが、こういう話で選手の肩を持つわけがありません。

今季プレミアリーグの出場は8試合340分、ゴールはわずか1本。決定機の創出に関与できず、プレスの強度を上げられないクリスティアーノ・ロナウドを、ここぞという時のカードにするという指揮官の意向は理解できます。ましてや昨夜は、今季のプレミアリーグ全体で最多のシュート28本。早いタイミングで交代カードを切る理由は見当たりません。

一方、ロナウドとしては、セーフティリードのゲームでラスト数分の出場という扱いに耐えられなかったのでしょう。「デイリー・メール」のクリス ウィーラー記者とサイモン ジョーンズ記者は、「トンネルに向かう直前に、サブとして出場するのを拒否した」と報じています。事実であれば、チェルシー戦の後も…。

思ったより早く、お別れの季節がやってきたのかもしれません。

「ユナイテッドがこれほど高いレベルのパフォーマンスを見せれば、彼の不満は根拠を失う」。厳しい言葉で事件を伝える「スカイスポーツ」のジャーナリスト、ジャック・ウィルキンソンさんは、「不機嫌な彼の退場が、エリック・テン・ハフと選手たちの心強い歩みを損なうことはない」といっています。今はただ、「そうあってほしい」としかいえません。

最後に「BBC」の名物記者の見立てを紹介して、この稿を締めたいと思います。「この夏、『BBCスポーツ』は、ロナウドが継続的な問題を引き起こす可能性があると報じたが、それが証明されたようだ」と語ったサイモン・ストーンさんは、今回の件を終わりの始まりと捉えているようです。

「ロナウドが、自分が軽蔑されていると感じているのは明らかだ。その一方で、彼がテン・ハフの好むスタイルに合わないのも明らかである。ロナウドの契約は巨大なので、6ヵ月早く終わらせる方法を見出すのは簡単ではないだろう。しかし、今はそうすることが必要なのだ。みんなのために。ロナウドがカタールに出発するまでの3週間半、彼らは平和を守れればいいのだ」