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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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空回りしたターンオーバー。惨敗直後のコスタリカに希望を与えた森保采配の失敗。

日本代表がコスタリカに0-1で敗れた翌朝。「Number」の記事を読んで、森保監督が大会前からターンオーバーを視野に入れていたことを知りました。負傷した酒井の代役だった山根はともかく、上田、相馬、守田、堂安の先発起用は、いくつかのシミュレーションのひとつだったということになります。

「選手たちは普段から厳しい環境の中で、インテンシティの高い試合を経験しているが、ドイツ戦では、W杯初戦のプレッシャーや相手との力関係で、おそらく想像以上に大きなエネルギーを使うことになる。中3日では心身ともに回復できないくらいの戦いをしなければ、勝つことは難しい」(2022年11月25日「ドイツ戦出番なしの谷口彰悟と守田英正に渦巻く本音『俺を出せと思えなければ…』早くも問われる総力戦」飯尾篤史氏の記事より引用)

ターンオーバー自体は、はなから否定されるプランではありません。ましてや今回の日本は、ドイツ戦で起用した前田と久保が機能せず、早い時間に交代となっていました。2戦めで違う選手を入れたことについては、多くのサポーターが賛同したのではないでしょうか。

問題は、人選とフォーメーションです。ドイツ戦で「想像以上に大きなエネルギーを使う」ことがターンオーバーの理由なら、フルタイム出場した選手のうち、伊東だけを外すのは不可解です。15分しか出ていない南野、33分の浅野と三笘は、むしろコンディションが上がっていた可能性もあったのに、森保監督は大会初出場を4人も投入してキックオフを迎えました。

システムは、初戦の前半で空回りした4-2-3-1。10分過ぎまでは攻めていたチームは、自らのミスパスとファールで徐々にペースを失います。鎌田はミスパスが目立ち、上田は楔のボールを足元に収められず。遠藤の選択肢は大半が横で、前線にぶつけてマークをずらそうと腐心しているのは板倉ぐらいでした。

スペインに0-7で大敗したコスタリカが、守備を重視した戦い方をするのは読めていたはずです。日本がボールをまわしている間は5-3-2、サイドにボールが入ると全員が自陣にこもるチームは、相馬と堂安が中央に絞るたびに、ゴール前に密集しました。ただでさえ崩しにくい5バックに対して、SBが効果的なオーバーラップができなければ、決定機を創れないのは当然でしょう。

後ろを締めておけば攻めにいけると確信したコスタリカは、前半の半ばから攻撃の機会を増やしてきました。ただし彼らのアタックは、カウンターを警戒して少人数。日本の中盤はボールを奪取しても、カウンターを仕掛けられずに後ろに戻しています。30分を過ぎてから、森保監督が3バックを指示したのを見落としていたのですが、小柄な長友を左のCBに置かなければならないほど、危機感が高まっていたのでしょう。

左の長友はクロスゼロ、右の山根は2本のみ。相馬と長友、堂安と山根に約束ごとがなかったのは明らかです。ハーフタイムの2枚代えは、指揮官が失敗を自白したも同然でしょう。伊藤と浅野が入った後半のチームを見て、森保監督にとって冨安健洋が万全でないことがいかに激痛だったかを思い知りました。

上田が強みを発揮できなかったように、伊藤も戸惑いながらプレイしているように見えました。ドイツ戦で活躍した冨安が健在なら、左右いずれかのSBで先発したのではないでしょうか。最終ラインならどこでもできるアーセナルのDFがいれば、3バックにシフトするためにハーフタイムに切ったカードを1枚減らせます。4枚持っていれば、三笘や伊東の投入は遅れず、不振の鎌田を代えるという決断もあったのではないかと思います。

中央への無難なパスが目立つ伊藤と、いい形でもらえない三笘。左サイドを活性化させられないなかで、70分のチャンスは日本が創りたかった形でした。守田の縦パスを浅野が背後に流し、カルボを抜いた伊東が単独で中央突破。2人のDFがカバーに入ったため、腕をつかんだカルボは決定機阻止と見做されなかったのですが、ファールがなければ先制は日本だったかもしれません。

失点シーンは、ドローをよしとしないコスタリカが、上がり始めていた時間帯の痛恨の判断ミス。このとき既に、ピッチサイドに南野が出ており、指揮官は「リスクを取って攻める」意志を明確にしていました。チームにセーフティファーストという意識が浸透していれば、吉田は前に蹴っていたでしょう。0-0で我慢して最後に勝負というコスタリカの狙いに、見事にはまってしまった瞬間でした。

後半のシュート数11対1が示すように、3-4-2-1の日本と5-4-1のコスタリカなら、こちらが強者です。90分を優位で過ごせれば、負ける確率は低かったと思われますが、最初の45分を無為に使い、残り20分で0-0となれば、紛れが起こる可能性が高まります。押し込めた相手に対して、ドイツ戦と同じ弱者の勝ち方を選んでしまったことが、最大の誤りだったのではないでしょうか。

4日前に強豪を圧倒した3バック(ただし、人選は攻守のバランス重視)でスタートし、先に2点を取って相手の希望を断ち切る…私が期待していたのは、そんな戦い方でした。3チームが2勝1敗で並ぶ可能性がある状況で、0-7で負けたばかりのチームに対して最初にめざすべきは、得失点差でアドバンテージを得ることでした。先制されても取り返しにいける立ち上がりこそが、リスクを取って攻めたい時間帯だったのではないかと今も思います。

ドイツに勝っただけに余計に悔しい敗戦でしたが、「2試合を終えて1勝1敗で2位」という立ち位置は、あらゆるシミュレーションのなかでもポジティブなほうに入るでしょう。スペインとの一戦は、悔いのない90分にしていただければと願っています。本田圭佑さんに倣って、願望メンバーを添えてみましょう。

GK権田、3バックに板倉、吉田、冨安、WBは酒井と長友、センターは鎌田と守田、三笘と伊東の前に南野。前半は5-4-1でOKです。代表・クラブレベルを問わず、国際大会の経験値と気持ちの強さを重視して選んでみました。プレミアリーグびいきと叱られるでしょうか?最後になるかもしれない決戦を、存分に楽しみたいと思います(森保一 写真著作者/Hadi Abyar)。


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“空回りしたターンオーバー。惨敗直後のコスタリカに希望を与えた森保采配の失敗。” への2件のフィードバック

  1. アイク より:

    ありがとうございます。
    力を出し切れずに負けた後の特有のモヤモヤがありますが、昨日今日その正体を解き明かしていただいて少しスッキリしました。

    私は吉田のミスからの失点よりも、彼の展開力の無さに深刻な問題を感じました。元同僚ファンダイクなら、中を通したり、対角へのロングフィードでビッグチャンスになったであろうシーンで度々相手に守る時間を与え、攻撃陣から攻める時間を奪っていました。
    スペインに押し込まれたら、ロシアでモドリッチと並び称された?柴崎の飛び道具に賭けましょうか。

  2. ぎぐ爺 より:

    選手、ベンチ共にゲームマネージメントが出来ないところは
    いつまで経っても変わらずですね。

    鎌田あたりは、その辺がもう少し出来るかと思ったけど
    さっぱりだし。

    それが出来ないと、いつまで経っても決勝T一回戦止まりでしょうね。
    もちろん、今回はそれすらも無理でしょうが。

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